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業務委託契約書と婚礼の「6か月」

生成りの背景の左に「2026.10.01」の日付、「業務委託契約書と婚礼の「6か月」」の題字と「法律が先に決めている範囲」、右のベージュの欄に「このブログでわかること」として「契約書より先に法律が効く」「1か月で7つの禁止行為」「6か月で30日前の予告」の3項目、右下にプラスワン・プランナーのロゴ

このブログの概要|読了目安:約16分

業務委託契約書を渡されたときに最初に確かめるのは、条項の数ではありません。その委託が何か月にわたるのかです。なぜなら、フリーランス・事業者間取引適正化等法(以下、フリーランス法)は、業務委託の期間によって発注者にかかる義務を変えているからです。

婚礼の打合せは、申込から施行まで半年から1年にわたることが珍しくありません。その結果、ウエディングプランナーの業務委託は、法律が区切っている1か月と6か月という二つの基準を、どちらも超えることになります。つまり、契約書に何も書かれていなくても、発注する側にはすでに複数の義務がかかっています。

このブログでは、公正取引委員会が公表しているパンフレットと条文をもとに、法律が先に決めている範囲を確かめます。そのうえで、法律が何も決めておらず、業務委託契約書に書かなければ決まらない範囲がどこかを確かめます。

■ このブログでわかること

  • フリーランス法は、業務委託の期間(1か月・6か月)によって発注者にかかる義務を変えている
  • ウエディングプランナーの業務委託は打合せの期間が長く、1か月と6か月の基準をどちらも超えやすい
  • 7つの禁止行為は、合意していても違反になる。契約書に書いてあることが常に有効とは限らない
  • 中止・延期、交通費、秘密保持などは法律に定めがなく、契約書に書かなければ決まらない
  • 契約書を受け取ったら、まずその委託が何か月にわたるかを確かめる

婚礼委託の長い期間

フリーランス法における業務委託の期間は、契約書の表紙に書かれた「契約期間」とは別の考え方で数えます。公正取引委員会のパンフレット26ページは、単一の業務委託の場合、始期を「業務委託をした日」、終期を「給付受領予定日」と「業務委託に係る契約の終了日」のうち最も遅い日と定めています。

この数え方を婚礼に当てはめると、期間はかなり長くなります。たとえば施行の10か月前に担当を引き受けた場合、役務の提供が終わるのは施行日ですので、期間は10か月と考えられます。契約書に「本契約は1施行を対象とする」と書かれていても、期間が短くなるわけではありません。

基本契約を結んでいる場合の数え方は、さらに長くなります。同じ26ページは、基本契約があるときは個別契約ではなく基本契約をもとに期間を判断すると定めているからです。つまり、会場と年間の基本契約を結んで、そのつど個別に施行を受けている形であれば、期間は基本契約の期間そのものになります。

契約が切れ目なく続いている場合も通算されます。パンフレット27ページは、次の条件を満たせば、契約の更新として扱うと定めています。

  • 契約の当事者が同一
  • 役務の内容に一定程度の同一性がある
  • 前後の業務委託の空白期間が1か月未満

したがって、同じ会場から数か月おきに施行を受け続けている関係は、一つの長い業務委託として数えられる可能性があります。

単一の業務委託施行の10か月前に引き受けた例期間=10か月業務委託をした日施行日(役務の提供が終わる日)基本契約がある場合会場と年間の基本契約を結ぶ形基本契約個別の施行個別の施行個別の施行個別の施行期間=基本契約の期間そのもの(個別契約ではなく基本契約で判断)切れ目なく続く場合当事者が同一・役務に一定の同一性前の業務委託次の業務委託空白1か月未満契約の更新として、一つの業務委託に通算される公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット」26・27ページより作成
単一の業務委託施行の10か月前に引き受けた例期間=10か月業務委託をした日施行日(役務の提供が終わる日)基本契約がある場合会場と年間の基本契約を結ぶ形基本契約個別の施行個別の施行個別の施行個別の施行期間=基本契約の期間そのもの(個別契約ではなく基本契約で判断)切れ目なく続く場合当事者が同一・役務に一定の同一性前の業務委託次の業務委託空白1か月未満契約の更新として、一つの業務委託に通算される公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット」26・27ページより作成
図1 業務委託の期間の数え方(単一の委託・基本契約・切れ目のない継続)

✔ ここがポイント

  • 期間は「業務委託をした日」から数え始め、婚礼では施行日までを含めて考えられる
  • 基本契約があるときは、個別契約ではなく基本契約をもとに期間を判断する
  • 前後の空白が1か月未満などの条件を満たせば、契約の更新として通算される

法律が先に決める範囲

フリーランス法の義務は、契約書に書いたかどうかとは関係なく発生します。パンフレット14ページは、7つの禁止行為について、次の場合でも違反になると明記しています。

  • フリーランスの了解を得ていても
  • 合意していても
  • 発注事業者に違法性の意識がなくても

業務委託契約書を読むときも、この一文が前提になります。契約書に書いてあることが、常に有効とは限らないからです。

どの義務がいつかかるのかは、期間で決まります。

業務委託の期間期間を問わない取引条件の明示第3条期日における報酬支払第4条募集情報の的確表示第12条ハラスメント対策の体制整備第14条1か月以上取引の適正化に関する部分7つの禁止行為第5条6か月以上就業環境の整備に関する部分育児介護等との両立への配慮第13条中途解除等の事前予告・理由開示第16条フリープランナーへの委託は1か月と6か月をどちらも超えやすく、ほとんどの義務がかかる公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット」6・26ページより作成
業務委託の期間期間を問わない取引条件の明示第3条期日における報酬支払第4条募集情報の的確表示第12条ハラスメント対策の体制整備第14条1か月以上取引の適正化に関する部分7つの禁止行為第5条6か月以上就業環境の整備に関する部分育児介護等との両立への配慮第13条中途解除等の事前予告・理由開示第16条フリープランナーへの委託は1か月と6か月をどちらも超えやすく、ほとんどの義務がかかる公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット」6・26ページより作成
図2 業務委託の期間と、発注者にかかる義務

パンフレット26ページは、この「一定期間」について、取引の適正化に関する部分は1か月、就業環境の整備に関する部分は6か月と説明しています。前の節で見たとおり婚礼の委託は長期になりやすいため、図の「6か月以上」の二つを含めて、ほとんどの義務がかかる状態になります。

なお、第3条の明示義務だけは、発注する側がフリーランスであっても課されます。パンフレット6ページがそう定めているからです。フリープランナーが別のフリープランナーに応援を頼む場合も、この義務から外れません。

取適法との違い

2026年1月1日に下請法が改正され、名称が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、通称を取適法と改めました。名前が似ているため混同されやすいのですが、ウエディングプランナーの業務委託に関係するのはフリーランス法のほうです。

理由は対象となる取引の範囲にあります。公正取引委員会のリーフレット「2026年1月から『下請法』は『取適法』へ!」は、取適法の対象となる役務提供委託を、次のものに限ると示しています。

  • プログラム作成
  • 運送
  • 物品の倉庫における保管
  • 情報処理

婚礼の打合せや当日の運営は、この列挙に含まれません。

フリーランス法には、この種の限定がありません。パンフレット5ページは、本法の適用対象には業種・業界の限定がなく、取適法では対象外となる「発注事業者が自ら用いる役務」の委託も対象になると述べています。婚礼施設が自社の施行のためにフリープランナーへ委託する形も、ここに収まります。

! 合意があっても違反になる

  • 7つの禁止行為は、フリーランスの了解や合意があっても、違法性の意識がなくても違反になる
  • 婚礼の委託は長期になりやすく、図のほとんどの義務がかかる状態になる
  • ウエディングプランナーの業務委託に関係するのは、取適法ではなくフリーランス法のほう
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明示が必要な8項目

発注者は、業務委託をした場合、直ちに取引の条件を書面または電磁的方法で明示しなければなりません。パンフレット6ページが挙げる明示事項は、次の8項目です。契約書がまだできていない段階でも、この8項目はメールやチャットで示す必要があります。

明示事項 婚礼の委託で埋まる中身
発注者とフリーランスの名称 会場の運営会社名と本人の氏名または屋号
業務委託をした日 担当を引き受けることを合意した日
給付の内容 打合せ、見積作成、当日立会のどこまでか
役務の提供を受ける期日 各打合せの日と施行日
役務の提供を受ける場所 会場、オンライン、その他の場所
検査を完了する期日 検査を行う取引の場合のみ必要
報酬の額および支払期日 金額または算定方法と、具体的な支払日
金銭以外で報酬を払う方法 該当する取引の場合のみ必要

婚礼の委託で特に確かめておきたいのは、3番目の給付の内容です。「1施行あたりいくら」という金額だけが決まっていて、その1施行に何が含まれるのかが決まっていないと、困ることになるからです。

次のような作業のうち、どこまでを引き受けたのかが書かれていなければ、後から加わった作業を断る根拠がありません。

  • 打合せの回数
  • 当日の入り時間と退出時間
  • 見積の作成
  • 装花や衣裳の手配
  • 親族への連絡

給付の内容は、報酬が妥当かどうかの判断にも直結します。弊社は2026年9月18日のブログ「フリープランナーの単価と実質時給」で、提示された金額を拘束時間で割り直す手順を示しました。

つまり、その割り算の分母になるのが、ここで明示される役務の内容と日数です。そのため、分母が決まっていなければ、実質時給も計算できません。

支払期日の起算日

支払期日は、給付を受領した日から起算して60日以内の、できる限り短い期間内で定めなければなりません。婚礼の委託でこの条文を読むときに難しいのは、起算日がいつなのかという点です。

パンフレット10ページは、役務の提供委託における起算日を、個々の役務の提供を受けた日とし、役務の提供に日数を要する場合には一連の役務の提供が終了した日としています。ウエディングプランナーの業務は、打合せから施行まで日数を要する役務にあたりますので、起算日は施行日になると考えられます。

そのうえで同じ10ページは、支払期日を定めなかったときは給付を実際に受領した日が支払期日になり、60日を超えて定めたときは受領した日から60日を経過する日になると定めています。つまり、契約書に支払期日の定めがなくても、支払わなくてよいことにはなりません。

書き方にも決まりがあります。パンフレット11ページは、「●月●日まで」や「●●日以内」という記載では、いつが支払期日なのかを具体的に特定できないため、支払期日を定めているとは認められないとしています。

一方で、毎月●日締切・翌月●日支払という月単位の締切制度は認められます。たとえば「施行月の翌月末払い」は、この形にあたります。

なお、期日に振り込まれた金額がそのまま手元に残るわけではない理由は、2026年9月17日のブログ「業務委託の「振込額」と「手取り」の違い」で扱いました。

集金後払いの扱い

契約書や覚書に「新郎新婦からの入金確認後に支払う」と書かれている場合には、注意が必要です。施行の数か月後に残金を受け取る運用であれば、施行日から60日を超えてしまう可能性があるからです。

打合せから施行まで(日数を要する役務)60日以内のできる限り短い期間業務委託をした日施行日=起算日60日時間の流れ支払期日を定めなかった受領した日(施行日)が支払期日60日を超えて定めた60日を経過する日が支払期日新郎新婦からの入金確認後に支払う施行日から60日を超える可能性公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット」10ページより作成
打合せから施行まで(日数を要する役務)60日以内のできる限り短い期間時間の流れ業務委託をした日施行日=起算日60日支払期日を定めなかった受領した日(施行日)が支払期日60日を超えて定めた60日を経過する日が支払期日新郎新婦からの入金確認後に支払う施行日から60日を超える可能性公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット」10ページより作成
図3 施行日を起算日とした支払期日と、集金後払いの位置

再委託の場合には支払期日の例外がありますが、この場面では使えないと考えられます。パンフレット12ページの例外は、発注事業者が元委託者から受けた業務をフリーランスに再委託した場合に、元委託支払期日から起算して30日以内で支払期日を定められるという仕組みです。

そして同じパンフレット4ページは、消費者との取引は本法の対象外と定めています。新郎新婦は消費者ですので、会場にとっての元委託者にはあたりません。

したがって、集金の時期に支払を合わせる条件を見つけたときは、施行日から60日以内に収まるかどうかを計算してから受けることになります。

! 支払期日の書き方と集金後払い

  • 「●月●日まで」「●●日以内」という記載では、支払期日を定めているとは認められない
  • 「新郎新婦からの入金確認後に支払う」条件は、施行日から60日を超える可能性がある
  • 新郎新婦は消費者のため、再委託の場合の支払期日の例外は使えないと考えられる

1か月で効く禁止行為

1か月以上の業務委託には、7つの禁止行為が適用されます。前に見たとおり婚礼の委託はこの期間を超えやすいため、多くの場合に適用されると考えられます。

パンフレット14ページから15ページが挙げているのは、次の7つです。

  • 受領拒否
  • 報酬の減額
  • 返品
  • 買いたたき
  • 購入・利用強制
  • 不当な経済上の利益の提供要請
  • 不当な給付内容の変更・やり直し

条文が示す違反例は他業種のものですので、婚礼の現場に置き換えると、次のような形が考えられます。

禁止行為 婚礼の委託で起こりうる形
受領拒否 会場都合で立会を取りやめ、予定した役務を受けない
報酬の減額 合意した後に、施行の規模を理由に金額を引き下げる
買いたたき 通常支払われる対価に比べ著しく低い額を定める
購入・利用強制 指定した制服や備品の購入を条件にする
不当な利益の提供要請 無償での撮影同行やSNS投稿を求める
不当な変更・やり直し 会場側の都合で提案書の作り直しを繰り返させる

表の右側は、条文の考え方を婚礼に当てはめた想定です。実際に違反にあたるかどうかは、責めに帰すべき事由があるかどうかを含めて個別に判断されます。

ここで契約書の読み方に戻ります。パンフレット14ページが、合意していても違反になると述べている以上、契約書に「会場の判断で報酬を調整できる」と書かれていても、その条項があるから減額してよいことにはなりません。こうした条項を見つけたときは、署名する前に、その一文の意味を発注者に確認しておくと安心です。

6か月と担当交代

6か月以上の期間で行う業務委託について、発注者が契約の解除または不更新をしようとする場合には、解除日または契約満了日から30日前までに予告しなければなりません。パンフレット24ページが第16条の内容としてそう定めています。予告を受けたフリーランスが理由の開示を請求したときは、発注者は遅滞なく開示する義務も負います。

婚礼の現場でこの条文が効くのは、担当の交代が起きる場面です。同じ24ページは、ここでいう契約の解除を、発注事業者からの一方的な契約の解除と説明しています。

フリーランス側からの解除は含まれず、双方の合意に基づく解除も該当しませんが、合意についてはフリーランスの自由な意思に基づくものであることが必要とされています。会場から「次の施行からは自社の社員が担当します」と伝えられる形は、一方的な解除にあたる可能性があります。

契約書の解除条項を読むときに重要なのは、その先の一文です。パンフレット24ページは、発注事業者とフリーランスの間で「一定の事由がある場合に事前予告なく解除できる」と定めていた場合も、例外事由に該当しない限り直ちに事前予告が不要にはならないと注意しています。契約書に即時解除の条項があっても、それだけで30日前の予告が省けるわけではありません。

予告が不要になる例外は5つあります。

  • 災害などのやむを得ない事由により予告が困難な場合
  • 再委託していて上流の契約解除により直ちに解除せざるを得ない場合
  • 業務委託の期間が30日以下など短期間である場合
  • フリーランスの責めに帰すべき事由がある場合
  • 基本契約があってフリーランスの事情で相当な期間にわたり個別契約が締結されていない場合

3つ目の例外があるため、当日のヘルプだけを単発で受ける形は、この義務の対象から外れることが多いと考えられます。

6か月以上の業務委託で発注者からの一方的な解除・不更新この義務にあたらない解除・フリーランス側からの解除・双方の合意に基づく解除予告が不要になる5つの例外に該当するかはい予告は不要(5つの例外)・災害などのやむを得ない事由・再委託で上流の契約が解除された・期間が30日以下など短期間・フリーランスの責めに帰すべき事由・基本契約で相当期間個別契約がないいいえ解除日・契約満了日の30日前までに予告理由の開示を請求されたら遅滞なく理由を開示する契約書に「事前予告なく解除できる」とあっても、例外に該当しない限り予告は省けない公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット」24ページより作成
6か月以上の業務委託で発注者からの一方的な解除・不更新この義務にあたらない解除・フリーランス側からの解除・双方の合意に基づく解除予告が不要になる5つの例外に該当するか予告は不要(5つの例外)・災害などのやむを得ない事由・再委託で上流の契約が解除された・期間が30日以下など短期間・フリーランスの責めに帰すべき事由・基本契約で相当期間個別契約がないはいいいえ解除日・契約満了日の30日前までに予告理由の開示を請求されたら遅滞なく理由を開示する契約書に「事前予告なく解除できる」とあっても、例外に該当しない限り予告は省けない公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット」24ページより作成
図4 6か月以上の委託を発注者が解除・不更新するときの流れ

! 即時解除の条項があっても

  • 6か月以上の委託を発注者が解除・不更新するときは、30日前までの予告が必要
  • 契約書に「事前予告なく解除できる」とあっても、例外事由に該当しない限り予告は省けない
  • 会場から一方的に担当交代を伝えられる形は、一方的な解除にあたる可能性がある

業務委託契約書で決める範囲

ここまでは、契約書に書かなくても決まっている部分でした。裏を返せば、法律が触れていない論点は、業務委託契約書に書かなければ決まりません。婚礼に特有の中止・延期の扱いも、この契約書で決める範囲に入ります。

論点 法律の定め 契約書で決めること
報酬の額 買いたたきの禁止のみ 金額または算定方法
中止・延期時の扱い 定めなし 報酬の有無と割合
交通費・実費 定めなし 負担する側と上限
再委託 定めなし 応援を頼めるかどうか
秘密保持 定めなし 対象の範囲と期間
損害賠償 定めなし 上限を設けるかどうか
競業避止 定めなし 範囲と期間

法律は取引の枠組みを決めていますが、いくら払うか、中止のときにどうするかまでは決めていません。買いたたきの禁止は、著しく低い額を不当に定めることを禁じる規定であって、適正な金額を示してくれるものではないからです。

キャンセルと延期

婚礼に固有の論点は、施行そのものが動くことです。中止になる場合もあれば、日取りが先に延びる場合もあります。

問題になるのは二つです。すでに行った打合せの分の報酬をどう扱うのかと、延期先の日程で引き続き担当するのかどうかです。どちらも法律には定めがありませんので、契約書に条項がなければ、そのつど交渉することになります。

延期は業務委託の期間にも影響します。前に見たとおり、期間の終期は給付受領予定日や契約の終了日で判断されますので、施行日が先に延びれば期間も延びます。半年後の施行として引き受けた委託が、延期によって6か月を超えることもあります。

✔ ここがポイント

  • 報酬の額、中止・延期時の扱い、交通費、再委託、秘密保持、損害賠償、競業避止は、契約書で決める範囲
  • 契約書に条項がなければ、中止・延期のたびに交渉することになる
  • 施行日が延びれば、業務委託の期間も延びる

中途解除と割合報酬

契約書に中途解除の定めがない場合には、民法の規定が出発点になります。婚礼の打合せ業務は、仕事の完成を約束する請負ではなく、事務の処理を委託する準委任として扱われることが多い業務です。

契約形態の違いについては、2025年3月27日のブログ「フォトグラファーへのリクエストは違法!?」でも扱いました。ただし、どちらにあたるかは個別の契約の内容によります。

準委任には、民法第656条を通じて委任の規定が準用されます。民法第651条第1項は、委任は各当事者がいつでもその解除をすることができると定めています。同条第2項は、相手方に不利な時期に委任を解除したときなどには、やむを得ない事由があった場合を除いて、相手方の損害を賠償しなければならないと定めています。

途中で終わった場合の報酬については、民法第648条第3項が、委任が履行の中途で終了したときは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができると定めています。請負の場合も民法第634条が、仕事の完成前に解除されたときなどについて、注文者が受ける利益の割合に応じた報酬を認めています。

ただし、民法には報酬そのものについて厳しい出発点が置かれています。民法第648条第1項は、受任者は特約がなければ委任者に対して報酬を請求することができないと定めているからです。

準委任として引き受ける以上、報酬の定めは契約書か明示された取引条件の中に必ず必要になります。口頭の約束だけで進めることは避けてください。

! 報酬の定めは書面に残す

  • 民法第648条第1項では、受任者は特約がなければ報酬を請求できない
  • 報酬の定めは、契約書か明示された取引条件の中に置く
  • 途中で終わった場合は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できる

秘密保持と営業秘密

秘密保持は、契約書に書かなければ範囲が定まらない論点の代表です。不正競争防止法第2条第6項は、営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義しています。

この定義から分かるのは、会場の情報が自動的に営業秘密になるわけではないということです。秘密として管理されていることが要件に含まれているからです。

会場の原価表や見積の割引幅が、誰でも見られる状態に置かれていれば、この要件を満たさない可能性があります。だからこそ、発注する側は契約書の秘密保持条項で、何を秘密として扱うのかを特定しておく必要があります。

フリープランナー側が確かめるのは、範囲と期間です。婚礼のフリーランスは複数の会場で仕事をすることが前提ですので、秘密保持の対象が「業務を通じて知り得た一切の情報」とだけ書かれていると、どこまでが制約なのか分からなくなります。期間についても、契約終了後に何年続くのかが書かれているかどうかで、その後の仕事の受け方が変わります。

秘密保持と競業避止は、別の条項です。前者は情報の扱いを制限するもので、後者は同業の仕事を受けること自体を制限するものです。二つが一つの条項にまとめて書かれている契約書もありますので、どちらの制約なのかを分けて読んでください。

発注側が先に示すもの

ここまではフリープランナー側から見てきましたが、同じ条文は発注する婚礼施設の側の手順も決めています。第3条の明示は、業務委託をした場合に直ちに行う義務です。契約書の製本や押印を待つ必要はなく、パンフレット6ページが認めているとおり、電子メールやチャットツールでも構いません。

明示を電磁的方法で行った場合でも、フリーランスから書面の交付を求められたときは、遅滞なく書面を交付しなければならないとされています。ここも同じ6ページに書かれています。

したがって、施設側で用意しておくべきものは、契約書の雛形だけではありません。担当を依頼した日にそのまま送れる、8項目を埋めた発注内容の連絡文が要ります。

明示を先に済ませておくことは、施設側の負担も減らします。給付の内容と役務の提供を受ける期日が最初に共有されていれば、当日になって「そこまで聞いていない」という食い違いが起きにくくなるからです。フリープランナーに任せることと、任せきりにすることの違いについては、2025年10月18日のブログ「業務「委託」と「丸投げ」の違い」で扱いました。

☑ 発注する施設側の準備

  • 担当を依頼した日に送れる、8項目を埋めた発注内容の連絡文を用意している
  • 明示は契約書の製本や押印を待たず、メールやチャットでも行える
  • フリーランスから書面の交付を求められたら、遅滞なく交付できる
  • 給付の内容と役務の提供を受ける期日を、最初に共有している

受注前に確かめる6点

条項を最初から最後まで読み込む時間が取れないときは、順番を決めて確かめると判断が速くなります。期間が決まれば、どの義務がかかるかが決まるからです。

確かめること 契約書で見る場所
この委託は何か月にわたるか 業務委託をした日と施行日、基本契約の期間
給付の内容がどこまでか 業務の範囲を定めた条項
支払期日が具体的な日か 報酬の条項
中止・延期のときに何が支払われるか 解除および変更の条項
解除の予告がどう書かれているか 解除条項と契約期間の条項
秘密保持の範囲と期間 秘密保持条項

最初の一つを確かめるだけで、残りの読み方が変わります。1か月を超えていれば7つの禁止行為が効き、6か月を超えていれば解除に30日前の予告が必要になるからです。そのうえで契約書を読むと、どの条項が法律の確認にすぎず、どの条項がその契約でしか決まらないものなのかを区別できます。

受け取った契約書に不明な点があった場合、署名の前に発注者へ質問することは、失礼にはあたりません。フリーランス法が明示義務を課しているのは、パンフレット6ページが述べるとおり、お互いの認識の相違を減らしてトラブルを未然に防ぐためです。質問は、その目的に沿った行動になります。

✔ ここがポイント

  • 1か月を超えていれば7つの禁止行為が効き、6か月を超えていれば解除に30日前の予告が必要になる
  • 期間を確かめたうえで、法律の確認にすぎない条項と、その契約でしか決まらない条項を分けて読む
  • 不明な点を署名前に質問することは、明示義務の目的に沿った行動

まとめ

このブログでは、フリープランナーが業務委託契約書を受け取ったときにどこから確かめればよいかを、フリーランス法が決めていることと、契約書で決めることに分けて確かめました。なぜなら、法律が先に決めている範囲は、契約書に何が書かれていても変わらないからです。

■ このブログの要点

  • フリーランス法は委託の期間によって発注者の義務を変えており、ウエディングプランナーの業務委託は打合せの期間が長いため、1か月と6か月の基準をどちらも超えやすい
  • 7つの禁止行為のように、合意していても違反になる定めがある
  • 中止・延期、交通費、秘密保持などは法律に定めがなく、契約書に書かなければ決まらない
  • 法律が先に決める範囲と、契約書でしか決まらない範囲を分けて読むことが要点

☑ 次にすること

  • 契約書を受け取ったら、まずその委託が何か月にわたるかを確かめる
  • そのうえで「受注前に確かめる6点」を順に見る
  • 不明な点があれば署名の前に発注者へ質問する

それが、認識の違いによるトラブルを防ぐ近道になります。

用語解説

用語 意味
特定受託事業者 フリーランス法におけるフリーランス。従業員を使用しない個人、または代表者以外に役員がなく従業員を使用しない法人
特定業務委託事業者 フリーランスに業務委託をする事業者のうち、従業員を使用する個人、または2人以上の役員がいるか従業員を使用する法人
給付 委託を受けて提供する物品、情報成果物、役務のこと。ウエディングプランナーの業務委託では役務にあたる
役務提供委託 運送やコンサルタントなど、役務の提供を委託すること。フリーランス法では業種の限定がない
準委任 法律行為ではない事務の処理を委託する契約。民法第656条により委任の規定が準用される
基本契約 業務委託に係る給付に関する基本的な事項についての契約。名称や契約書の形式は問わない
営業秘密 不正競争防止法第2条第6項が定める、秘密として管理され、有用で、公然と知られていない情報
取適法 2026年1月1日に施行された、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の通称

出典一覧

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株式会社永光 代表取締役 高橋龍一

執筆者

株式会社永光 代表取締役 高橋 龍一

婚礼の現場とフリーのウエディングプランナーを経て、2018年からウエディングプランナーの業務委託サービス「プラスワン・プランナー」を運営しています。

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