業務委託の「振込額」と「手取り」の違い

この記事の概要|読了目安:約9分
副業でフリープランナーを始めた方から、最初の1年で困ったという話を聞くことがあります。振り込まれた報酬をそのまま生活費に使ってしまい、翌年になって納税額を知って慌てた、という内容です。
こうしたことが起きる理由は、会社員としての給与と、業務委託の報酬とで、口座に入るまでの経路がまったく違うからです。同じ「振込」という言葉を使っていても、その意味するところは別物です。
この記事では、業務委託の報酬が給与と何がどう違うのかを、国税庁が公表している内容に沿って確認していきます。
給与と業務委託、お金の流れ
まず、会社員の給与明細を思い出してください。額面の金額から所得税と住民税、そして社会保険料が引かれ、残った金額が口座に振り込まれます。これがいわゆる手取りです。
この「引く」という作業は、勤務先の会社が行っています。会社が従業員に代わって税金を差し引き、国に納めているからです。この仕組みを源泉徴収といいます。
一方、業務委託の報酬には、この工程がありません。そのため、契約した金額がそのまま振り込まれます。
これだけを見ると、得をしたように感じるかもしれません。しかし、そうではありません。なぜなら、引かれていないだけであって、税金を払う義務そのものが無くなったわけではないからです。差し引かれなかった分は、翌年に自分で計算して納めることになります。
つまり、10万円の報酬が入ったからといって、10万円をそのまま使えるわけではありません。この感覚のまま1年を過ごしてしまうと、翌年の納税の段階でつまずきます。
源泉徴収の対象になる仕事
ここで、「業務委託の報酬からは10.21パーセントが引かれるはずだ」と聞いたことがある方もいらっしゃると思います。実際に、そうなる仕事も存在します。そのため、話が食い違うことがあります。
この違いは、仕事の種類によって生まれます。国税庁は、源泉徴収の対象となる報酬や料金を、次の8つに区分して示しています。
| 区分 | |
|---|---|
| 1 | 原稿料や講演料など |
| 2 | 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定資格者への報酬・料金 |
| 3 | 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構が支払う診療報酬 |
| 4 | プロ野球選手、プロサッカー選手、プロテニス選手、モデル、外交員への報酬・料金 |
| 5 | 映画、演劇、芸能、テレビ出演等の報酬・料金 |
| 6 | バンケットホステス、コンパニオン、ホステス等への報酬・料金 |
| 7 | 契約金(プロ野球選手の契約金など) |
| 8 | 広告宣伝用賞金や競馬の賞金 |
ウエディングプランナーとしての業務委託は、この8つのいずれにも当てはまりません。そのため、原則として源泉徴収は行われず、契約した金額がそのまま振り込まれることになります。
ただし、ここで注意していただきたいことがあります。同じ人が受ける仕事であっても、その中身によって扱いが変わるという点です。たとえば、施設からセミナー講師として招かれた場合の謝礼は、1番の「講演料」に当たります。原稿を書く仕事を請けた場合も、同じく1番に当たります。
したがって、契約を結ぶ前に「この報酬は源泉徴収の対象になりますか」と確認しておくことをおすすめします。そうしておけば、入金額の見込みが後からずれることはありません。
20万円という基準
報酬の受け取り方を理解したところで、次に申告の話に進みます。副業として働いている方からよく聞くのが、「20万円までは申告しなくてよい」という説明です。しかし、この言い方は正確ではありません。
国税庁のページには、確定申告が必要な人の条件として、次のように書かれています。
各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人
ここで注意していただきたいのは、「所得」という言葉の意味です。所得とは、受け取った報酬の額そのものではありません。報酬から必要経費を差し引いた後の金額を指します。
具体的な例で考えてみます。受け取った報酬が30万円であっても、交通費や資料代などの必要経費が12万円かかっていれば、所得は18万円になります。この場合、20万円を超えていません。
逆の場合もあります。経費がほとんどかからない仕事を25万円分受けたとすれば、所得はほぼ25万円のまま残りますので、20万円を超えることになります。
このように、判定に使うのは受け取った額ではなく、経費を差し引いた後の額です。ここを取り違えてしまうと、本来必要だった申告をしそびれることになります。
もう一つの条件
さらに、同じページには次の定めも記載されています。
給与の収入金額の合計額から、所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額の合計額が20万円以下の人は、申告は不要です。
このように、条件は一つではありません。給与がいくらあるのか、扶養している家族がいるのか、医療費控除や住宅ローン控除を使うのかによっても、結論は変わってきます。
そのため、ご自身がどの条件に当てはまるのかは、国税庁のページを読むか、お住まいの地域を管轄する税務署に確認してください。誰かから「20万円以下なら大丈夫」と言われた、というだけでは根拠になりません。
なお、所得税の確定申告と住民税は、別々の制度です。所得税の申告が不要な場合に住民税をどう扱うかについては、自治体によって案内が異なりますので、こちらも各自治体にご確認ください。
経費という考え方
前の章で「必要経費」という言葉が出てきましたので、ここで詳しく説明します。
給与をもらって働いていたときは、仕事で使った交通費は会社が負担してくれていました。備品も会社のものを使っていたはずです。そのため、自分で費用を管理する必要がありませんでした。
ところが業務委託では、これらを自分で用意することになります。そして、自分で負担した費用は経費として計上できます。経費が増えれば、その分だけ所得が減りますので、納める税額も変わってきます。
経費になり得るものとしては、打合せに向かうための交通費や、資料の印刷代、業務用に契約している通信費の一部、仕事のために購入した書籍などが挙げられます。
ここで問題になるのが、記録を残していないという状況です。始めてから半年ほど経った頃に、領収書を捨ててしまっていたと気づく方が少なくありません。
そうならないために、最初の1件を受けた時点で、レシートをまとめて入れておく封筒を1つ用意しておいてください。スマートフォンで撮影して保存しておくだけでも十分です。手間はほとんどかかりませんが、後から1年分をさかのぼって復元しようとすると、はるかに大変な作業になります。
なお、何が経費として認められるかは、その支出が仕事とどう関係しているかを説明できるかどうかで決まります。判断に迷うものについては、税務署か税理士に確認するのが確実です。
婚礼施設側が最初に示すべき4点
ここまではプランナー側の立場で書いてきましたが、発注する施設の側にとっても無関係ではありません。
業務委託で人に来てもらうということは、その方が自分で経費を負担し、自分で納税する立場で働くということを意味します。したがって、給与を支払って雇用する場合とは、お金の流れそのものが異なります。
契約の際に金額だけを伝え、源泉徴収の有無や交通費の扱いを曖昧にしたまま進めてしまうと、後になって認識の食い違いが表面化します。しかも、こうした金銭面の確認は、受注する側からは切り出しにくいものです。
そのため、施設の側から先に示しておくことをおすすめします。示しておくべきなのは、報酬の金額と、支払日と、交通費が別途支給なのか報酬に含まれるのかという点、そして源泉徴収を行うかどうかの4点です。これらを最初に書面で伝えておけば、金銭面での行き違いはほとんど起こりません。
最初にやること
ここまで税金や経費の話をしてきましたが、始めたばかりの段階でやるべきことは、それほど多くありません。次の4つで足ります。
- 契約を結ぶときに、源泉徴収の有無を確認しておきます
- レシートを1か所にまとめる習慣をつけます
- 報酬が振り込まれたら、一部は使わずに残しておきます
- 年末が近づいたら、その年の報酬と経費を集計し、自分が申告の対象になるかを確認します
4番の段階で判断がつかない場合は、税務署に問い合わせれば教えてもらえます。相談に費用はかかりません。
振り込まれた額は、そのまま使える手取りではありません。この一点さえ意識しておけば、翌年になって慌てることはなくなります。
用語解説
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 源泉徴収 | 報酬や給与を支払う側が、あらかじめ所得税を差し引いて国に納める仕組みです |
| 所得 | 受け取った収入から、必要経費を差し引いた後の金額です |
| 必要経費 | その収入を得るために直接かかった費用です |
| 確定申告 | 1年間の所得と税額を自分で計算し、税務署に申告する手続きです |
| 所得控除 | 扶養や医療費など個人の事情に応じて、所得から差し引ける金額です |
| 業務委託 | 雇用契約ではなく、仕事の成果や遂行に対して報酬を受け取る契約形態です |
出典一覧
- 国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
本記事は2026年9月17日時点で公表されている内容に基づいています。制度は改正されることがありますので、実際に判断される際には、最新の情報とあわせて、個別の事情に応じた専門家への確認をお願いいたします。
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