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新規接客のヒアリング〜聴けていない本音

生成りの背景の左下に淡いローズの三角形、左に「新規接客のヒアリング 聴けていない本音」の題字と「来館の前提を聴く質問文」、右に「本音が出ない理由」「前提を聴く質問の型」「聴いた本音の扱い方」の3項目、右下にプラスワン・プランナーのロゴ

このブログの概要|読了目安:約13分

式場見学を終えた新郎新婦がYahoo!知恵袋や口コミサイト、自分のnoteやブログに書いた声を読むと、担当のプランナーには伝わっていなかった事情が、別々の投稿に繰り返し出てきます。主に次のような事情です。

  • 今日は契約するつもりがなかったこと
  • ほかの会場とも比べていること
  • 最終的な金額が読めずに不安なこと
  • そもそも結婚式を挙げるかどうかを迷っていること

どれも、新規接客のヒアリングで聴けていれば、その日の提案や進め方が変わったはずの情報です。

弊社は2026年1月19日のブログ「フワッとした新規接客〜問題解決と課題解決〜」で、要望がまだ固まっていない新郎新婦には、理想を一緒に固める問題解決のアプローチが必要だと書きました。しかし、理想を一緒に固める前に、新郎新婦が口にしないまま持っている前提があります。

その前提を知らないまま理想を固めても、費用や親の意向といった別の事情で、あとから決定が覆ります。だから、このブログでは、その手前にある段階を扱います。新郎新婦が「言うと不利になる」「言うと失礼になる」と感じて口にしない前提を、どのような質問文で聴けばよいのかを、具体的な言い回しまで示します。

■ このブログでわかること

  • 新郎新婦が見学のあとに投稿している、見学の場では伝わっていなかった事情
  • 本音が出ないのは、言うと損をすると感じているからであること
  • 理想を固める前に、来館の前提を確かめるという順番
  • 来館目的・比較・費用・親の意向・2人の温度差を聴く質問文
  • 聴いた本音を、即決の圧力に使ってはいけない理由

言えなかった本音

Yahoo!知恵袋に投稿された相談のうち、直近5年以内のもので、式場見学や契約の前後の事情が書かれたものを拾うと、次の表のようになります。ここに挙げた投稿は個人の相談であり、全体の割合を示す統計ではありません。それでも参考になるのは、同じ種類の事情が、別々の人の投稿に何度も現れているからです。

投稿日 相談の状況 投稿に書かれていた事情
2026年1月5日
投稿を見る
入籍済み。費用が不安で結婚式は挙げないつもりだったが、親と話してフェアに参加した 結婚式を挙げること自体への迷い、見積からの変動への不安、安い別会場との比較
2025年10月14日
投稿を見る
初めてのフェアで、1軒目の会場をその日に契約した 他会場と比べていない不安、最終的な金額が読めない不安
2025年9月26日
投稿を見る
見学でその日の契約を断ったところ、担当者の態度が変わった その日は決めるつもりがなかったこと
2025年4月10日
投稿を見る
見学だけのつもりがフェアを勧められ、4時間の案内を受けた 契約の意思はなく、結婚式の基礎知識を得たかったこと
2025年2月24日
投稿を見る
2つの相談カウンターから、計7会場を紹介された 別のカウンターでも紹介を受けていることを明かしてよいかの迷い
2023年8月24日
投稿を見る
期限つきの特典を示されて焦り、1軒目で内金を払った もう1軒のほうが2人らしいと感じていたこと、見積額へのためらい
2022年10月24日
投稿を見る
式場見学をきっかけに、2人の喧嘩が増えた 費用に対する2人の感覚の差、両家の援助の差

Yahoo!知恵袋のほかにも、同じ種類の声は見つかります。口コミサイトの相談欄や、新郎新婦が自分で書いたnote・ブログにも、見学の場では言えなかった事情が書かれています。

媒体と日付 書かれていた事情
みんなのウェディングの相談(2022年7月11日)
読む
本人は結婚式を挙げたいが、彼と双方の家族は乗り気でなく、彼は費用の負担にも同意していない。そのなかで、プランナーからは早く決めるよう迫られている
新郎のnote(2023年6月18日)
読む
1件目で決めかけたが、その場の勢いで決めるのは危険だと考えて2件目も見学した。両親の「落ち着いた結婚式を」という要望を受けて、1件目を候補から外した
新婦のnote(2024年7月1日)
読む
50名・最低限の内容で約400万円の見積だった。最終額はさらに上がると聞いていた。会場は自分より彼のほうが気に入っていた
卒花のnote(2025年10月13日)
読む
予算の話は避けがちだと振り返り、見学の前に両家の両親の意向を確かめておくよう勧めている
リベシティの公開記事(2025年5月28日)
読む
1件目で当日の割引を示されて即決したが、数日悩んだ末に他の会場を見て、予約金を払ってキャンセルした
個人のブログ(2023年8月23日)
読む
ほかの会場と迷っていると伝えたところ、割引が出たという経験を書いている
現代ビジネス(2025年2月2日・元プランナーによる事例紹介)
読む
見学後の商談で、支配人とプランナーの2人がかりで即決を迫られ、怖かったという新郎新婦の声

知恵袋の7件とこれらの声を並べると、事情は大きく2つに分かれます。

グループ事情どんな情報か
1つ目「今日は決めない」「ほかも見ている」「金額が不安だ」言うと自分たちが不利になると感じやすい情報
2つ目親の意向、2人の考えの違い、結婚式を挙げるかどうかの迷い2人や家族の間の事情

どちらの事情も、プランナーが聴かなければ、新郎新婦の側から言い出すことはほとんどありません。なぜなら、前者は言えば損をすると感じており、後者はまだ2人の間でも言葉になっていないからです。

✔ ここがポイント

  • 見学の前後の投稿には、担当者に伝わっていなかった事情が繰り返し出てきます
  • 事情は「言うと不利になる情報」と「2人や家族の間の事情」に分かれます
  • どちらも、聴かなければ新郎新婦の側からは出てきません

本音が出ない理由

前の節で挙げた事情のうち、1つ目のグループについては、投稿そのものが言いにくさの理由を示しています。2025年9月26日の投稿では、その日の契約を断ったところ担当者の態度が変わり、投稿者はその不満をアプリの口コミに書いています。

2025年4月10日の投稿者は、見学だけのつもりで予約したこと自体が失礼だったのではないかと悩んでいます。また、2025年2月24日の投稿者は、別の相談カウンターで紹介を受けたと明かしてよいのかを尋ねています。

投稿に書かれていた事情と、見学の場で言いにくい理由担当者に言いにくい事情言いにくさの中身書かれていた場所今日は決めるつもりがない断ると扱いが変わると感じる知恵袋・現代ビジネスリベシティ・みんなのウェディングほかの会場とも比べている明かすと失礼にあたると感じる知恵袋・はてなブログnote(新郎の式場選び)最終的な金額が読めず不安聴いても軽く扱われると感じる知恵袋・note見積ギャップレポ・エニマリ調査親の意向や援助の差がある2人の間でもまだ整理できていない知恵袋・noteゼクシィ結婚トレンド調査結婚式を挙げるか迷っている来館した以上は言い出しにくい知恵袋みんなのウェディング上の3つは「言うと不利になる」情報、下の2つは2人や家族の間の事情ですYahoo!知恵袋、みんなのウェディング、note、ブログ、Web記事、各社の調査(2022〜2026年)から作成 個人の体験は全体の割合を示すものではありません
投稿に書かれていた事情と、見学の場で言いにくい理由担当者に言いにくい事情言いにくさの中身書かれていた場所今日は決めるつもりがない断ると扱いが変わると感じる知恵袋・現代ビジネスリベシティ・みんなのウェディングほかの会場とも比べている明かすと失礼にあたると感じる知恵袋・はてなブログnote(新郎の式場選び)最終的な金額が読めず不安聴いても軽く扱われると感じる知恵袋・note見積ギャップレポ・エニマリ調査親の意向や援助の差がある2人の間でもまだ整理できていない知恵袋・noteゼクシィ結婚トレンド調査結婚式を挙げるか迷っている来館した以上は言い出しにくい知恵袋みんなのウェディング上の3つは「言うと不利になる」情報、下の2つは2人や家族の間の事情ですYahoo!知恵袋、みんなのウェディング、note、ブログ、Web記事、各社の調査(2022〜2026年)から作成 個人の体験は全体の割合を示すものではありません
図1 投稿に書かれていた事情と、見学の場で言いにくい理由

つまり、新郎新婦は「今日は決めない」「ほかも見ている」と口にすると、扱いが変わるか、失礼にあたると考えています。そのため、プランナーが「何でもおっしゃってください」と声をかけても、それだけでは本音は出てきません。質問の仕方そのもので、「そう言っても不利にはなりません」と伝える必要があります。

一方で、2つ目のグループの事情は、言いにくいというよりも、まだ整理されていない状態にあります。2026年1月5日の投稿者は、費用が不安で結婚式は挙げないつもりでしたが、親と話し合ったうえでフェアに参加しています。

このような新郎新婦にとっては、来館したこと自体が2人だけの判断ではありません。そのため、プランナーが「どんな結婚式にしたいですか」と聴いても、新郎新婦には、結婚式を挙げるかどうかの迷いが先にあり、すぐには答えられません。

! 「何でも聴いてください」では足りません

  • 新郎新婦は、本音を言うと扱いが変わる、失礼にあたると感じています
  • 声かけではなく、質問の形で「言っても大丈夫」を示します
  • 2人や家族の間の事情は、本人たちもまだ整理できていないことがあります
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新規接客のヒアリングの順番

本音が出ない理由が分かると、新規接客のヒアリングで何を先に聴くべきかも見えてきます。2026年1月19日のブログ「フワッとした新規接客〜問題解決と課題解決〜」では、次の3つのステップを示しました。

  1. 対比の質問で価値観の枠組みを固める
  2. 深掘りと理由づけで判断基準をつくる
  3. 叶えたいことと叶わないことのギャップを示して会場の優位性につなげる

このブログでは、その前に「前提を聴く」段階を置きます。

新規接客のヒアリングの順番0前提を聴く目的・比較・費用・親・2人1価値観の枠組み対比の質問で軸を固める2深掘りと理由づけ極端な例で判断基準をつくる3ギャップと優位性叶えたいことと会場をつなぐ「フワッとした新規接客」で示した3つのステップこのブログで足す段階前提を知らないまま枠組みを固めると、枠の外にある費用や親の意向で決定が覆ります
新規接客のヒアリングの順番0前提を聴く目的・比較・費用・親・2人このブログで足す段階1価値観の枠組み対比の質問で軸を固める2深掘りと理由づけ極端な例で判断基準をつくる3ギャップと優位性叶えたいことと会場をつなぐ「フワッとした新規接客」で示した3つのステップ前提を知らないまま枠組みを固めると、枠の外にある費用や親の意向で決定が覆ります
図2 前提を聴いてから、価値観の枠組みを固めます

前提を先に聴く理由は、前提を知らないまま価値観の枠組みを固めても、費用や親の意向といった別の事情で、あとから決定が覆るからです。2026年1月5日の投稿者は、雰囲気とアクセスでは1つ目の会場を気に入っていましたが、料金の面では別の会場に気持ちが傾いていました。この場合、雰囲気やアクセスという価値観の軸をどれほど丁寧に固めても、費用の不安という前提が残っている限り、決め手にはなりません。

前提として確かめたいのは、次の5つです。以下の節では、それぞれを聴く質問文を示します。

  • 来館の目的
  • ほかの会場との比較
  • 費用の不安
  • 親の意向
  • 2人の温度差

なお、次のような基本の技法は、2025年7月14日のブログ「新規接客に活かす5つのコーチングスキル」で解説しています。

  • 傾聴
  • 承認
  • オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンの使い分け

このブログでは、それらの技法を前提として、何をどの言い回しで聴くかに絞ります。

来館目的を聴く

5つの前提のうち、最初に聴きたいのは来館の目的です。なぜなら、新郎新婦が今日どこまで進めたいのかによって、案内の長さも、話の深さも変わるからです。

ただし、「今日はご契約まで考えていらっしゃいますか」と直接聴くと、新郎新婦は「いいえ」と答えにくくなります。この聴き方では、「いいえ」が担当者の期待を裏切る答えに聞こえるからです。そこで、2026年1月19日のブログ「フワッとした新規接客〜問題解決と課題解決〜」で示した対比の質問と同じように、プランナーの側から先に選択肢を並べます。

「見学に来られる方には、まだ何も決めずに情報を集めている段階の方もいれば、日程が近くて今日ある程度まで絞りたい方もいらっしゃいます。どちらが良いということはありませんので、お二人が今どのあたりにいらっしゃるか、教えていただけますか。」

この聴き方では、「情報を集めているだけ」という答えを、プランナーの側が先に普通の選択肢として示しています。そのため、新郎新婦は、そう答えても失礼にあたらないと分かります。あわせて、時間の都合も確かめておきます。

「今日は何時ごろまでお時間をいただけそうでしょうか。それに合わせてご案内の順番を考えます。」

2025年4月10日の投稿者は、契約の意思がないまま4時間の案内を受け、その長さを負担に感じていました。来館の目的と時間を先に聴いていれば、情報収集の段階にある新郎新婦には、短い時間で比較の観点を渡す案内に切り替えられます。

✔ ここがポイント

  • 「今日決めますか」と聴くと、「いいえ」と答えにくくなります
  • 先に「情報収集の段階の方もいます」と選択肢を示してから聴きます
  • 目的と時間に合わせて、その日の案内の長さを変えます

比較と断りの本音

来館の目的が分かったら、次はほかの会場との比較を聴きます。2025年2月24日の投稿のように、新郎新婦は複数の相談カウンターから紹介を受け、いくつもの会場を同時に見ていることがあります。それにもかかわらず、比較していることを担当者に明かすのは失礼だと感じています。

比べることは、新郎新婦にとって特別なことではありません。TAIANの調査(2022年5月、800人)では、次のような結果が出ています。

  • 約半数が最初に来館した式場で成約している
  • 一方、複数の会場を比べて見送った理由として「料金・予算」(20.6%)や「プランナーとの相性」(9.1%)が挙がっている

比べている新郎新婦にとっては、担当者とのやりとりそのものも判断の材料です。

「ほかに見学を予定されている会場や、すでに見られた会場があれば、差し支えない範囲で教えていただけますか。比べていただいたほうが、お二人に合うかどうかがはっきりしますので、遠慮なくおっしゃってください。」

この質問は、比べることを前提として受け止める姿勢を先に示しています。そのうえで、ほかの会場の名前よりも、そこで何が良いと感じたかを聴くことが大切です。

「その会場で、いいなと思われたのはどんなところでしたか。」

他会場で良いと感じた点は、そのまま新郎新婦の価値観の手がかりになります。なぜなら、ほかの会場で良いと感じた点には、2人が何を大事にしているかが表れているからです。この答えは、次の段階である価値観の枠組みづくりの材料になります。

ただし、ここで他会場の良かった点を否定してはいけません。新郎新婦にとって、他会場を良いと感じたのは自分たちの判断です。

そのため、他会場を否定すると、新郎新婦は自分たちの判断を否定されたと受け取ります。比較の答えは、自分の会場を売り込むための材料ではなく、2人が何を大事にしているかを知るための材料として扱います。

費用の不安を聴く

比較と並んで言い出しにくいのが、費用の不安です。2025年10月14日の投稿者は、1軒目の見積に余裕を感じて契約したものの、オプションを足したあとの最終的な金額が読めずに不安を抱えていました。また、2026年1月5日の投稿者は、見積からの変動幅を担当者に問い合わせた際に、軽く扱われたと感じています。

この2件に共通しているのは、不安の中身が「予算の上限」ではなく「最終的にいくらになるのか分からないこと」にある点です。そのため、「ご予算はおいくらですか」と上限だけを聴いても、新郎新婦が本当に不安に思っていることは分かりません。

見積が上がる不安は、数字でも裏づけられます。

調査分かったこと
みんなのウェディングの「見積ギャップレポ」(2024年10月発表、費用明細10万件超)初期見積の平均約238万円に対して最終見積は約277万円で、平均約40万円(16.6%)上がっています
エニマリ/みんなのウェディングの調査(2023年12月、151人)割引や特典を契約時に使った人が約8割で、そのうち約5割が50万円以上の費用の増加を経験していました
初期見積と最終見積の平均(万円) 238万円 初期見積 277万円 最終見積 みんなのウェディング「見積ギャップレポ」(2024年10月発表)より。平均約40万円(16.6%)上昇
初期見積と最終見積の平均(万円)初期見積238万円最終見積277万円みんなのウェディング「見積ギャップレポ」(2024年10月発表)より。平均約40万円(16.6%)上昇
図3 初期見積から最終見積までの上がり幅

「費用について、いま一番気になっていらっしゃるのはどこでしょうか。総額の上限なのか、見積からどのくらい上がるのかなのか、お支払いの時期なのかによって、ご説明する順番を変えたいと思っています。」

この質問は、不安の種類を選択肢で示しているため、新郎新婦は金額そのものを言わなくても答えられます。そして、プランナーは、どの説明から始めればよいかが分かります。

見積から上がることへの不安に対しては、正面から答えることそのものが信頼につながります。弊社は2026年10月6日のブログ「初期見積の最低ランク問題」で、ゼクシィの調査をもとに、支払額が見積より上がることは例外ではないと示しました。

つまり、見積より支払額が上がることは、どの新郎新婦にも起こりうることです。だから、上がる可能性がある項目を先に示しておけば、新郎新婦は契約したあとで裏切られたと感じずに済みます。

✔ ここがポイント

  • 費用の不安の中心は、上限よりも「最終額が読めないこと」にあります
  • 上限・上がり幅・支払時期のどれが気になるかを、選択肢で聴きます
  • 上がる可能性のある項目は、契約の前に先に示します

親の意向を聴く

費用の話を聴くと、多くの場合、親の存在が見えてきます。リクルートの「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」によれば、挙式・披露宴の費用面で親・親族からの援助が「あった」人は74.2%でした。また、援助額のうち挙式・披露宴に使った金額の平均は168.6万円です。

つまり、4組に3組の結婚式では、費用の一部に親や親族のお金が入っています。援助があるということは、その費用について、2人以外の人の考えが関わる余地があるということです。2026年1月5日の投稿者のように、親との話し合いがきっかけで来館する新郎新婦もいます。

そこで、親の意向は、援助の有無とあわせて聴きます。そのうえで、決める前にご両親に相談する予定があるかも確かめます。

「ご両親からのご援助はありますか。」

「会場を決める前に、ご両親に見ていただいたり、ご相談されたりするご予定はありますか。」

「ご両親から、結婚式について何か言われていることはありますか。こういう結婚式にしてほしいということでも、費用のことでも構いません。」

親が決定に関わると分かれば、プランナーにできることが変わります。たとえば、次のような手が打てます。

  • 次の来館に親を誘う
  • 親に見せられる資料を渡す
  • 親が気にしそうな点を先に説明しておく

反対に、親の意向を知らないまま2人だけで話を進めると、2人が気に入った会場でも、家に帰ってから話が覆ることがあります。

2人の温度差

親の意向と同じく、外から見えにくいのが2人の間の温度差です。2022年10月24日の投稿者は、式場見学をきっかけに喧嘩が増えたと書いています。

争点は費用で、投稿者はお金を重視しすぎない考えなのに対し、相手は費用の話ばかりするという差がありました。さらに、新婦側は親の援助が多く、新郎側は自己負担という事情もありました。

この投稿から分かるのは、2人の意見が最初から1つにまとまっているとは限らないということです。プランナーが「お二人はどうですか」と聴くと、多くの場合、話しやすいほうの1人が答えます。そのため、もう1人の考えは表に出ないまま進みます。

「新婦様は、今日ご覧いただいた中で、どこが一番印象に残りましたか。新郎様はいかがでしたか。」

「ここまでで、お二人の間で意見が分かれたところはありましたか。分かれていても、まったく珍しいことではありません。」

1つ目の質問は、2人に別々に答えてもらう形にしています。2つ目の質問は、意見が分かれるのは珍しくないと先に伝えることで、分かれていることを言いやすくしています。

そして、意見が分かれた点は、2026年1月19日のブログ「フワッとした新規接客〜問題解決と課題解決〜」でいうギャップを見つける材料になります。なぜなら、2人のどちらの希望も叶えられる会場であることを示せれば、それがそのまま会場の優位性になるからです。

ただし、プランナーはどちらか一方の側に立ってはいけません。片方に肩入れすると、もう片方にとってその会場は「自分の意見が通らない会場」になるからです。

! 片方の味方にならない

  • 2人の意見は、最初から1つとは限りません
  • 2人に別々に答えてもらい、分かれた点を言いやすくします
  • 分かれた点は、どちらにも肩入れせず、両方が叶う形を探す材料にします

聴いた本音の扱い

ここまでの質問で本音を聴けたとしても、その扱いを誤ると、聴いたこと自体が逆効果になります。とくに注意したいのは、聴いた本音を即決の圧力に使うことです。

ただし、即決そのものは悪いことではありません。前提を聴き、2人が大事にしたいことがこの会場で叶うと納得できれば、その日に決める新郎新婦は少なくありません。

それは、2人にとっても会場にとっても質の良い即決です。避けたいのは、本音を聴いたうえで、期限つきの特典や担当者の態度で決断を迫る、即決の目的化です。

「今日は決めません」と聴いたあとの分かれ道本音を聴けた即決の圧力に使う期限つきの特典で決断を迫る断られると態度が変わる→ 次からは本音を言われない→ 口コミや即決後の迷いに残る提案の材料に使う今日の案内の長さを合わせる比べるときの観点を渡す→ 他会場の見学が確かめる場になる→ 次の来館の理由が残る左側の例は、Yahoo!知恵袋、リベシティ、現代ビジネスの記事などに書かれていた出来事です
「今日は決めません」と聴いたあとの分かれ道本音を聴けた即決の圧力に使う期限つきの特典で決断を迫る断られると態度が変わる→ 次からは本音を言われない→ 口コミや即決後の迷いに残る提案の材料に使う今日の案内の長さを合わせる比べるときの観点を渡す→ 他会場の見学が確かめる場になる→ 次の来館の理由が残る左側の例は、Yahoo!知恵袋、リベシティ、現代ビジネスの記事などに書かれていた出来事です
図4 聴いた本音は、即決の圧力ではなく提案の材料に使います

Yahoo!知恵袋の2025年9月26日の投稿者は、その日の契約を断ったことで担当者の態度が変わったと感じ、その不満を口コミに書いています。また、2023年8月24日の投稿者は、期限つきの特典を示されて焦り、1軒目で内金を払ったあとに、もう1軒のほうが2人らしかったのではないかと迷っています。

同じ出来事は、知恵袋の外にも書かれています。

  • 現代ビジネス(FRaU)の記事(2025年2月2日)では、元プランナーの筆者が、見学後の商談で支配人とプランナーの2人がかりで即決を迫られ、怖かったと話したカップルの例を紹介しています。
  • リベシティの公開記事(2025年5月28日)の筆者は、1軒目で当日割引を示されてその場で決めたものの、数日悩んだ末にほかの会場を見て、予約金5万円を払ったままキャンセルしています。
  • みんなのウェディングの相談(2022年7月11日)では、彼も家族も乗り気でないなかで、プランナーから早く決めるよう迫られていると書かれています。

媒体も立場も違いますが、どの例でも、新郎新婦にとっての「今日は決めたくない」「まだ決められない」という気持ちは、受け止められないまま終わっています。

「今日は決めません」という本音を聴いたあとに決断を迫れば、新郎新婦は次から本音を言わなくなります。 それだけでなく、その経験は口コミや、契約したあとの迷いとして残ります。

反対に、聴いた本音を提案の材料に使えば、前提が整っている新郎新婦は納得してその日に決めることができ、まだ決められない新郎新婦とも次の来館につながります。2026年1月19日のブログ「フワッとした新規接客〜問題解決と課題解決〜」では、価値観の枠組みを固めておけば、他会場の見学に行く目的が「自分たちの理想が本当に叶うかを確かめること」に変わると書きました。

なぜなら、2人が何を大事にしたいかが決まっていれば、他会場を見ても、その基準で比べられるからです。同じように、情報収集の段階にある新郎新婦には、比べるときの観点を渡しておけば、他会場を見たあとに、もう一度来館してもらいやすくなります。

■ この章のまとめ

  • 即決を迫られた経験は、知恵袋・ブログ・Web記事など、様々な場所に書かれています
  • 納得したうえでの即決は質の良い即決です。避けたいのは、本音を即決の圧力に使うことです
  • 本音は、その日の案内や比較の観点を渡す材料に使います
  • 契約に至らなくても、次の来館につなげることができます

明日使う質問文

最後に、ここまでに示した質問文を、前提ごとに並べ直します。どの質問にも共通しているのは、答えにくい答えを、プランナーの側から先に普通の選択肢として示している点です。

☑ チェックリスト

  • 来館目的:情報収集の段階の方もいると先に示してから、今どのあたりかを聴いていますか
  • 時間:今日は何時ごろまでいられるかを、案内の前に聴いていますか
  • 比較:他会場の名前ではなく、そこで良いと感じた点を聴いていますか
  • 費用:上限・上がり幅・支払時期のどれが気になるかを、選択肢で聴いていますか
  • 親の意向:援助の有無と、決める前に親に相談する予定があるかを聴いていますか
  • 2人の温度差:2人に別々に答えてもらい、意見が分かれた点を聴いていますか
  • 聴いたあと:本音を、決断を迫る材料に使っていませんか

これらの質問は、そのまま読み上げるための台本ではありません。言い回しは、会場の雰囲気や新郎新婦の様子に合わせて変えてかまいません。大切なのは、言い回しよりも、「言っても不利にならない」と相手に伝わる聴き方をすることです。

まとめ

このブログでは、式場見学の前後に新郎新婦が書いた声と各社の調査をもとに、新規接客のヒアリングで聴けていない本音を表にまとめ、それぞれの前提を聴く質問文を示しました。

■ このブログの要点

  • 新郎新婦が本音を言わないのは、言うと扱いが変わる、失礼にあたると感じているからで、声かけだけでは本音は出てこない
  • 来館目的、比較、費用の不安、親の意向、2人の温度差という5つの前提を、答えにくい答えを先に選択肢として示す形で聴く
  • 聴いた本音は即決の圧力に使わず、提案の材料に使う。前提が整い、2人が納得できれば、その日に決める質の良い即決につながる

☑ 次にすること

  • 明日の新規接客で、最初の質問を「情報を集めている段階の方もいらっしゃいますが、お二人は今どのあたりですか」に変えてみる
  • 返ってきた答えに合わせて、その日の案内の長さと深さを変えてみる

大切なのは、言い回しよりも、「言っても不利にならない」と相手に伝わる聴き方をすることです。

用語解説

用語 意味
新規接客 式場見学やブライダルフェアに来館した新郎新婦を案内し、会場の契約までを担当する仕事
ヒアリング 新郎新婦の希望や事情を、質問を通じて聴き取ること
問題解決 理想と現実のギャップを明らかにし、それを埋める方法を考えるアプローチ。理想がまだ固まっていない新規接客の段階で使います
課題解決 明確になった目標に対して、どう達成するかを考えるアプローチ。施行打合せの段階で使います
価値観の枠組み 新郎新婦が会場選びで何を大事にするかという判断の軸
対比の質問 2つの選択肢を先に示し、どちらに近いかを答えてもらう質問の形
相談カウンター 新郎新婦に条件に合う会場を紹介し、見学の予約などを仲介する窓口
内金 契約の際に、費用の一部として先に支払うお金

出典一覧

※Yahoo!知恵袋・口コミサイト・note・ブログ・Web記事に書かれた声は個人の体験であり、全体の傾向を示す統計ではありません。投稿の文章は引用せず、争点を要約して示しています。

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株式会社永光 代表取締役 高橋龍一

執筆者

株式会社永光 代表取締役 高橋 龍一

婚礼の現場とフリーのウエディングプランナーを経て、2018年からウエディングプランナーの業務委託サービス「プラスワン・プランナー」を運営しています。

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