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初期見積の最低ランク問題

結婚式の初期見積が最低ランクで組まれるために、8割の新郎新婦の支払額が見積より上がる構造と、婚礼施設側の直し方を整理した記事のアイキャッチ画像

この記事の概要|読了目安:約8分

リクルートの「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」によれば、支払額が見積りより上がった人は全国推計で79.6%、変わらなかった人が12.9%、下がった人が6.5%でした。上がった金額は平均97.2万円です。 同じ調査の総額の平均が343.9万円ですから、上がった分は総額のおよそ28%にあたります。

ただし、上がった理由の内訳を見ると、上位は料理と衣裳で、人数が増えたからという回答は最も低くなっています。この記事では、調査の内訳と、新郎新婦が実際に投稿している相談を読んだうえで、初期見積のどこに問題があるのかを整理します。

■ この記事でわかること

  • 見積りより上がった人の割合と金額、変わらなかった人と下がった人の割合
  • 上がった理由の上位2つが、人数ではなく料理と衣裳であること
  • 要望で上げた分と、選びようがなくて上げた分は調査で区別されていないこと
  • 初期見積の水準を、契約の時点で知らされていなかったという投稿
  • 食い違いが発覚するのが、会場を変えられない時期であること
  • 初期見積を、実際に選ばれている構成で組み直すという考え方

上がるのは例外ではない

見積りより上がった人は8割リクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」より作成全国(推計値)79.6%が見積りより上がった上がった金額の平均 97.2万円首都圏の推移69.3%2021年77.4%2022年80.9%2023年82.3%2024年上がる割合は首都圏で3年間に13.0ポイント増えています※ 全国は推計値、首都圏は各年の調査値です。2021年調査と2024年調査では回答者が異なります
図1 見積りより上がった人は8割

全国推計値では、上がった人が79.6%、変わらなかった人が12.9%、下がった人が6.5%でした。上がった金額は平均97.2万円です。

首都圏の推移も出ています。2021年調査では69.3%でしたが、2022年に77.4%、2023年に80.9%、2024年には82.3%まで増えています。3年間で13.0ポイントの増加です。各年の回答者は別の人ですから単純な追跡ではありませんが、上がる人の割合が減る方向には動いていません。

✔ ここがポイント

  • 見積りより上がった人は全国推計で79.6%、上がった金額は平均97.2万円です
  • 首都圏では、上がる人の割合が3年間で13.0ポイント増えています

上がった理由の上位2つ

同じ調査は、上がった人に理由も聞いています。

上がった理由は、人数ではなくランクアップリクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」全国推計値より作成(複数回答)料理を追加またはランクアップ66.6%衣裳を追加またはランクアップ66.3%写真・ビデオを追加またはランクアップ47.5%装花など会場装飾をランクアップ44.2%飲み物を追加またはランクアップ32.5%演出を追加またはランクアップ25.6%引出物を追加またはランクアップ22.7%列席者の人数が予定より増えた22.4%上位2つは、初期見積で最低ランクに置かれていることが多い項目です。人数が増えたからという回答は22.4パーセントで、8項目のうち最も低くなっています。
図2 上がった理由は、人数ではなくランクアップ

全国推計値では、料理の追加またはランクアップが66.6%、衣裳の追加またはランクアップが66.3%で、この2つが突出しています。以下、写真・ビデオが47.5%、装花など会場装飾が44.2%、飲み物が32.5%、演出が25.6%、引出物が22.7%と続きます。

そして、列席者の人数が予定より増えたからという回答は22.4%で、8項目のうち最も低くなっています。 人数が読めないから見積が動く、という説明は、少なくとも主因ではありません。

ただし、この数字の読み方には注意が要ります。料理や衣裳を上げた理由には、もっと良いものにしたいという要望で上げた分と、初期見積の構成では選びようがなく上げざるを得なかった分の両方が含まれているからです。調査はこの2つを区別していません。

前者は問題ではありません。新郎新婦が納得して選んだ結果であり、満足につながる支出だからです。同じランクアップでも、選んで上げたのか、選べなくて上げたのかは別のことです。 本記事が扱うのは後者です。

後者がどれくらいの割合を占めるのかは、調査からは分かりません。設問が区別して聞いていないからです。分かるのは、後者が実際に起きていることだけです。それを示すのが、新郎新婦が投稿している相談です。

最低ランクは選べる水準か

最低ランクで組むこと自体は、どの施設も行っています。問題は、その水準が実際に選べるものになっているかどうかです。

みんなのウエディングに2023年3月に投稿された相談では、100万円の値上がりが報告されています。投稿者は、料理プランが最低ランクであったこと、具体的には寿司と天ぷらの構成であったことを、契約の時点で明示されていなかったと書いています。演出代とムービー代も初期見積に入っていませんでした。この相談には複数の回答が付き、同じ経験はしばしば聞く話だという反応が並んでいます。

ウエディングパークに2022年8月に投稿された相談では、投稿者は担当プランナーから料理・飲み物・装花について一番高いプランで見積に入れておくと説明を受けていました。ところが式の2か月前、実際に料理と装花を選ぶ段階になって、見積に入っていたのは最低ランクだったと分かります。その時点で、説明した担当者は退社していました。

2件とも、投稿者が初期見積の水準を知ったのは、実際に選ぶ段階でした。初期見積に入っていたのが最低ランクだという情報は、契約の時点では伝わっていませんでした。

初期見積に入っていない費用が後から出てくる例もあります。2024年9月のヤフー知恵袋の投稿では、ドレスを購入して持ち込む場合、靴とグローブも別に買う必要があると指摘されています。

! 最低ランクは、選ばれる前提の水準になっているか

  • 料理の最低ランクが、実際に新郎新婦が選ぶ構成になっているかを確認します
  • 衣裳の見積額で、提携先の在庫から実際に選べるかを確認します
  • 初期見積に入れていない費用を、契約前に一覧で渡しているかを確認します

発覚する時期

食い違いそのものより重いのが、それが分かる時期です。

食い違いが分かるのは、会場を変えられない時期契約最低ランクの見積で合意打合せ開始実際に選ぶ段階で金額が判明式の2か月前料理と装花の打合せで発覚式の後記載漏れの追加請求発覚が遅いほど、新郎新婦は受け入れる以外の選択肢を失います※ 各段階の内容は、2022年から2024年に投稿された相談の記述によります
図3 食い違いが分かるのは、会場を変えられない時期

先ほどのウエディングパークの相談では、発覚したのは式の2か月前でした。みんなのウエディングに2022年3月に投稿された相談では、式が終わったあとに約20万円の追加請求を受けています。前撮りの差額が最終見積から漏れていたという内容で、投稿者は、それ以前にもカタログギフトのシステム料の記載漏れがあったこと、そして式の前と後とで対応が違うことを書いています。

2024年9月にウエディングパークへ投稿された相談では、担当者が替わったあとの最終段階で、一度断られた席の形式が改めて提案され、投稿者が不快感を示しています。

3件とも、新郎新婦が会場を変えられなくなってから話が動いています。 招待状を出し、日程を押さえ、ゲストに伝えた後では、受け入れる以外の選択肢がありません。選択肢がない状態で金額が動けば、受け入れるしかありません。

✔ ここがポイント

  • 問題は差額の大きさよりも、それが判明する時期にあります
  • 選べる段階を過ぎてから示された金額は、受け入れる以外にありません
  • 担当者の交代があると、説明の経緯そのものが失われます

「嘘だ」と感じる線

弊社は2025年1月の記事で、見積の上昇そのものが問題になるのではなく、新郎新婦が「嘘だ」と感じたときにクレームになると書きました。事前に案内された内容と実際が大きく異なったときが、その分かれ目だという整理です。

今回読んだ相談は、その線がどこに引かれるのかを具体的に示しています。金額が上がったこと自体を怒っている投稿は、ほとんどありません。怒りが向いているのは、一番高いプランで入れておくと言われたのに最低ランクだったこと、最低ランクであることを言われていなかったこと、記載漏れの請求が式の後に来たことです。

新郎新婦が嘘だと感じるのは金額ではなく、聞いていた内容と目の前の事実が食い違ったときです。 97.2万円という平均額は、それ自体が問題なのではありません。その97.2万円のうち、実際には選べない構成で出したことによって生じた分が問われています。

実績で組む初期見積

選びようがなくて上がった分について、直すべきは伝え方ではありません。初期見積に載せる構成そのものです。

弊社は2025年1月の記事で、見積をめぐる大前提として「嘘がなく誠実であること」がもっとも重要だと書きました。実際にはほとんど選ばれていない構成で金額を出す方法は、この原則と両立しません。

では何を基準に組むのかというと、自社の施行実績です。料理のコース、衣裳の価格帯、写真・ビデオの範囲、装花の分量について、過去に実際に選ばれた構成を集計すれば、自社の相場が出ます。その相場で初期見積を組みます。

項目 初期見積に置く水準
料理 過去の施行で実際に選ばれているコース
衣裳 提携先で実際に選ばれている価格帯
写真・ビデオ 実際に申し込まれている範囲
装花 実際に選ばれている分量

初期見積の金額は上がります。ただし、上がるのは最初に示す金額であって、支払う総額が変わるわけではありません。要望で上がる分は残りますが、選びようがなくて上がる分は減ります。相場で組めば、最初に示す金額が実態に近づくからです。

直すのは説明の工夫ではなく、初期見積の作り方そのものです。水準を決めているのは式場の側ですから、変えられるのも式場の側です。

なお、差額の説明がつかずに値引きで収めると、粗利率から逆算して決まる値引きの原資を使うことになります。初期見積の水準を決めるときは、この原資をどれだけ残すかもあわせて見ておくほうが安全です。

✔ ここがポイント

  • 直すのは伝え方ではなく、初期見積に載せる構成そのものです
  • 自社の施行実績から、実際に選ばれている構成を集計して相場を出します
  • 相場で組めば初期見積は上がりますが、最終請求との差は縮みます

相場を出すために確かめる5点

自社の相場を出す作業は、新しい調査ではありません。すでに手元にある施行実績を集計するだけです。

☑ 過去1年の施行実績から集計する

  • 料理のコース別に、実際に選ばれた割合
  • 衣裳の価格帯別に、提携先で実際に選ばれた割合
  • 写真・ビデオで、実際に申し込まれている範囲
  • 装花で、実際に選ばれている分量
  • 初期見積に入れていない項目の一覧

集計すれば、料理や衣裳で最低ランクがどれだけ選ばれているかが数字で出ます。選ばれている割合が低ければ、その構成を初期見積に載せている理由を説明できません。

まとめ

本記事は、支払額が見積りより上がる現象を、調査データと新郎新婦の相談投稿から確認しました。上がった人は全国推計で79.6%、金額は平均97.2万円です。変わらなかった人は12.9%、下がった人は6.5%でした。首都圏では上がる人の割合が3年間で13.0ポイント増えています。上がった理由の上位は料理と衣裳で、人数が増えたからという回答は8項目のうち最も低いものでした。

このうち、新郎新婦の要望で上げた分と、初期見積の構成では選びようがなく上げた分が、それぞれどれくらいなのかは調査では分かりません。設問が区別して聞いていないからです。分かっているのは、後者が実際に起きていることだけです。一番高いプランで入れておくと言われたのに最低ランクだったという投稿や、料理が最低ランクであることを契約時に知らされていなかったという投稿が、2022年から2023年にかけて出ています。

これらの投稿で怒りが向いているのは、金額ではありませんでした。聞いていた内容と目の前の事実が食い違ったことに向いています。しかも判明するのは、式の2か月前や式の後のように、会場を変えられなくなってからでした。

弊社は2025年1月の記事で、見積をめぐる大前提として「嘘がなく誠実であること」がもっとも重要だと書きました。要望で上がる分は、この原則とぶつかりません。ぶつかるのは、実際には選ばれない構成で金額を示し、選ぶ段階になって初めて差が出る場合です。初期見積を、自社の施行実績で実際に選ばれている構成で組めば、この部分はなくせます。 初期見積をどの水準で出すかを決めているのは式場の側ですから、直せるのも式場の側です。

明日から確かめられるのは、過去1年の施行で、料理のコースと衣裳の価格帯が実際にどこへ集まっているかです。初期見積の水準がその分布から離れているほど、選ぶ段階で出てくる差は大きくなります。

用語解説

用語 意味
初期見積 ブライダルフェアや会場見学の際に、最初に提示する見積のことです
最終見積 施行前に内容を確定させ、請求額を確定させる見積のことです
最低ランク 各項目で設定されている価格帯のうち、最も低い構成のことです
ランクアップ 選択した商品を、より上の価格帯の構成に変えることです
持ち込み料 提携先以外から商品やサービスを持ち込む際に、施設が受け取る料金のことです
推計値 調査した地域ごとの結果をもとに、全国の値として算出した数値のことです
複数回答 1人が当てはまる選択肢をいくつでも選べる設問の形式のことです

出典一覧

※ 本記事は2026年10月6日時点で公表されている内容に基づいています。調査結果は全国または首都圏の平均であり、個々の会場の水準を示すものではありません。相談投稿は個別の事例であり、業界全体の実態を代表するものではありません。

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