フォトグラファーへのリクエストは違法!?

はじめに
最近、結婚式で結婚式場が手配するフォトグラファーに対して、新郎新婦が「このシーンを撮ってほしい」と希望を伝えることが、偽装請負にあたるという投稿が、SNS上であったようです。
しかし、これは本当でしょうか??
念の為、複数の都道府県の労働局にも確認しましたが、結論から先に伝えるとこれは、明確に誤りといえそうです。
そこで今回のブログでは、フォトグラファーと結婚式場、新郎新婦それぞれの立場と契約関係、そして「業務委託契約に含まれる契約類型の違い」まで含めて、正しく整理していきます!
論点整理
業務委託契約とは? その中にある3つの契約形態
まずそもそも業務委託契約とは、広い意味で「業務の実施を他者に委ねる契約」の総称であり、以下のいずれかに分類されます。
| 契約類型 | 主な特徴 | 成果物の有無 | 指揮命令関係 | 適する業務例 |
|---|---|---|---|---|
| 請負契約 | 完成された成果物を納品する契約 | あり | 原則なし | 建築工事、システム開発など |
| 準委任契約 | 業務遂行そのものが目的 | なし | 原則なし | フリープランナー、コンサル業務、清掃業務など |
| 委任契約 | 法律行為の代理(民法上) | なし | 原則なし | 弁護士業務、登記手続きなど |
委任契約と準委任契約の違い!
民法における「委任契約」は法律行為を委ねるもので、それ以外の事務処理的業務や専門性・判断を伴う非法律行為は「準委任契約」として整理されます。
結婚式場とフォトグラファーの関係
3つの業務委託契約のなかで、多くの結婚式場において、フォトグラファーとの契約は、請負契約または準委任契約となります。
とりわけ写真という成果物の納品があるため、請負契約であることが多いですが、撮影という業務提供自体が目的であれば、準委任契約として整理されることもあります。
いずれの場合でも、フォトグラファーは式場の業務委託先であり、結婚式場が発注者(元請といいます)となります。
新郎新婦は契約関係にない顧客
この前提をもとにすれば、新郎新婦は結婚式場とは契約関係にあるものの、フォトグラファーとは直接契約していないことがわかります。そのため、フォトグラファーに対して要望を伝えることは業務指揮命令にはあたらず、偽装請負の問題には該当しません。
「偽装請負」とは?
形式上は請負契約などを装っていても、実際には発注者(この場合、結婚式場)が受託者(フォトグラファー)に対して、労務的な指示や管理を日常的に行い、実態が労働者派遣と変わらない状態のことを指します
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どんなケースが「偽装請負に」なるの!?
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たとえば、結婚式場がフォトグラファーの次のようなことをこと細かく指示し、現場で直接的に業務命令を出しているような場合には、派遣法違反とされるリスクがあります。
- 勤務時間
- 服装
- 業務内容
しかし、先にも述べたように、新郎新婦とフォトグラファーの間には、契約関係はないため、新郎新婦は契約当事者ではありません。あくまでサービスを受ける顧客です。よって、顧客として希望やリクエストを伝える行為は、法律上の指揮命令には該当せず、偽装請負とはまったく異なる性質のものということになります。
これは、たとえば飲食店で「この料理は塩分控えめで」と頼むのと同じ構造です。
また、Amazonで購入した商品について、配送を担当する佐川急便に「◯時に届けてほしい」と伝えるようなものとも言えます。
利用者がサービス提供者に希望を伝える行為は、日常的に行われており、業務指示とは明確に区別されます。
つまり、要望を伝えることは、業務指揮命令とは異なり、消費者の正当な権利ということです。SNS上での発信は、この前提が大きく誤っていたため、誤った認識に基づく投稿がされていたということになります。
おわりに
ここまで見ていただいておわかりのとおり、「新郎新婦がフォトグラファーに要望を伝えると違法になる」という主張は、契約関係の誤解や無知に基づくものということをご理解いただけたのではないでしょうか。
■ このブログの要点
- 業務委託契約というのは、請負や準委任・委任など、いくつかの契約タイプをまとめた広い言い方です
- 「偽装請負」が問題になるのは、そうした契約を結んでいる当事者同士(今回でいえば、結婚式場とフォトグラファー)のあいだで、誰が誰に仕事の指示を出しているかという関係にあります
- 新郎新婦がカメラマンに伝えるのは「こうしてほしい」という希望やお願いであり、仕事の命令ではありません。つまり、サービスを利用する側としての自然なコミュニケーションであって、違法行為とはまったく別のものということです
☑ 次にすること
- 契約の枠組みと法律の趣旨を正しく理解しておく
誤った認識が浸透し、婚礼の現場で不要な混乱を生まないためにも、契約の枠組みと法律の趣旨を正しく理解しておくことが大切です。ぜひご参考になさってください!
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執筆者
株式会社永光 代表取締役 高橋 龍一
婚礼の現場とフリーのウエディングプランナーを経て、2018年からウエディングプランナーの業務委託サービス「プラスワン・プランナー」を運営しています。
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