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「中国兵法」と「リーンキャンバス」

はじめに

2025年のブライダル業界においては、婚姻組数の減少による結婚式実施率の低下やナシ婚の増加といった不可逆的な構造変化が以前にも増して進んでいます。

このような中、結婚式場の倒産が相次いでいるのは、単なる景気要因ではなく、既存の構造と顧客ニーズとのズレに対応しきれていないことが本質的な原因だといえます。

では、このような変化の中で、婚礼施設が時代に見合った永続的な運営をしていくためには、いったいどうすればよいのでしょうか。その思考のヒントとして、本ブログでは、「中国兵法」と「リーンキャンバス」という、有名な2つのフレームワークを紹介します!

中国兵法──よりよく勝つための構造設計フレーム

「中国兵法」は、有名な「孫氏の兵法」に代表されるように、戦いに先立って自軍・環境・相手を徹底的に分析し、よりよく勝つために構造を整えるという思想に基づく戦略フレームです。そのフレームワークをまとめると、以下のように成り立っています。

  • 国是→実現したいことや達成したいこと
  • 兵略→勝つための知恵
       政略・謀略・将略・戦略から成り立つ
  • 兵術→勝つための具体策
       天文・地理・人事から成り立つ
  • 兵制→支援システム
    • ①構造の最適化
    • ②編成の最適化
    • ③軍法の最適化
    • ④軍需の最適化
    • ⑤兵源の最適化
    • ⑥兵種の最適化
  • 兵器→支援ツール
    • ①活用
    • ②代用
    • ③導入
    • ④開発
  • 兵家→コンピテンシー
  • 兵誌→ケーススタディ

これを今後の婚礼施設の経営に置き換えると、以下のように整理することができるのではないでしょうか。

国是(ミッション)

変化する市場環境の中で、倒産せずに、持続的に存続・発展する。

兵略=勝つための知恵(勝ちやすい状況をつくる)

● 謀略(情報収集と分析)

  • 顧客層(コスパ・タイパ重視層)の価値観と行動の変化を把握
  • 式実施率の低下理由を深掘りし、戦うべき相手(課題)を明確化
  • 自社の稼働率・固定費構造・競合の変化をデータで可視化

● 政略(構造上の設計)

  • 装置産業から変動費型の「箱貸しビジネス」への転換
  • 持ち込み制限の緩和による、選択の自由度の高い運営スタイルへの再構築
  • 固定費圧縮に向けたフリープランナーや外部パートナーとの分業体制

● 戦略(戦い方の選択)

  • 箱貸し婚需要など、従来の式場が対応していない層の積極的獲得
  • 顧客の「ちょうどよさ」に応える価格設計とサービス構成

● 将(リーダーのあり方)

  • 従来型のフルサービスを提供するマインドからの脱却
  • 組織をコントロールするのではなく、顧客に選ばせる構造を設計するマインドへの転換

兵術=勝つための具体策(戦術レベルの実行手段)

● 天(タイミング)

  • 箱貸し婚を導入するグッドタイミングを見極める

● 地(地の利を得る)

  • 地域特性や自社のポジショニングを見定める

● 人(人的資源)

  • フリープランナーとの連携を強化する
  • 社員にしかできない役割を見定め、後方支援する

兵器=支援ツール(運営を支える道具)

  • 顧客がベンダーを自由に選択できるツールを作成する
  • 業務を円滑に進めるためのシステムの導入
  • 業務の標準化を目的とした内部マニュアルの整備

兵制=支援体制(勝ちやすくする構造)

  • 社員数の最適化と変動費化による固定費圧縮
  • 結婚式ごとに人材とコストを最適配分する体制
  • フリープランナーや外注スタッフとの役割明確化と教育設計
  • 属人性を排除した、再現性ある運用オペレーションの構築

兵誌=知識蓄積(勝ちを再現する知見の蓄積)

  • 箱貸し婚などのデータを成功事例として蓄積させる
  • 箱貸し婚の実施率・顧客単価・粗利などを指標化し、モデル化・改善に活用

結果=勝利

変化する市場・価値観に応じ、顧客から自然に選ばれる式場へと転換。構造・運営・価値のすべてが現代ニーズに適応し、再現性のある事業モデルが構築されている。

目まぐるしく変化する市場環境の中で、倒産せずに持続的に存続・発展すること。

まとめ

このように、「中国兵法」のフレームワークを活用することで、中長期的なミッションを決め、それを具体的に落とし込み、長期的に勝てる構造をつくるための思考フレームをつくることができます。

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リーンキャンバス──今あるリソースで仮説を立て、動きながら変える実践思考

一方、「リーンキャンバス」というのは、仮説と検証を前提とした軽量フレームです。主にスタートアップなどに用いられるフレームワークで、「完璧な計画書をつくる」のではなく、「柔軟性とスピードを重視し、仮説を検証し、成長段階などに応じて軌道修正をはかっていく」ことを目的としたものです。

9つの項目から成り、1枚にまとめることで俯瞰がしやすく、且つ項目ごとの調整や変化をしやすいことが特徴です。項目には、次のようなものがあります。

  • 課題
  • 顧客層
  • 価値提案
  • ソリューション
  • チャネル
  • 収益構造 など

以下のようにまとめることができます。

● 弊社の考える婚礼施設のリーンキャンバス

リーンキャンバスの観点から、今後の結婚式場の運営モデルを考えてみましょう。

Problem(課題)

  • 結婚式実施率が低下
  • 人的リソースを式場が抱える装置産業構造
  • これによる重い固定費
    • →特にコスパ・タイパ重視層への対応が困難で、競争力を喪失しつつある

Customer Segments(顧客層)

  • コスパ重視層:必要なものだけを選び、価格に柔軟性を求める
  • タイパ重視層:準備に時間や労力をかけたくない層(授かり婚・再婚など)

Unique Value Proposition(提供価値)

  • 「箱」として会場を提供
  • 必要なベンダーやアイテムを自由に選べる柔軟な環境を実現

Solution(ソリューション)

  • 会場は自社運営
  • ウエディングプランナーはフリー活用により人件費を変動費化
  • 結婚式ごとに内容や構成を最適化

Channels(チャネル)

  • 著名フリープランナーとの連携
  • 自社SNS
  • ウェブ広告

Revenue Streams(収益)

  • 会場使用料(従来の提携ベンダー手数料をここに吸収)
  • セレクトした外部サービスの紹介料
  • フリープランナーへの紹介手数料

Cost Structure(コスト)

  • 固定人件費の削減
  • 外部パートナーとの変動費契約が基本
  • 地代家賃および光熱費等

Key Metrics(指標)

  • 会場稼働率
  • 粗利益
  • 外部稼働率
  • 箱貸し婚の構成比と件数推移

Unfair Advantage(圧倒的な優位性)

  • 結婚式ごとにコストと内容を最適構成できる構成
  • 「箱」自体がもつハードの強みとオペレーション

ザッと、課題に対するそれぞれのアクションプランを当てはめてみましたが、重要なことは「これが絶対」や「これこそが正解」という断定や思い込みを廃し、絶えず仮説の検証を繰り返し、必要に応じて各項目を調整していくことです。

そうした意味でも、このフレームの強みは、以下の点にあります。

  • 仮説ベースで今すぐ動けること
  • 検証の過程で整合性を後から調整できる柔軟性
  • 事業の成長段階に応じて、チャネルや指標などを見直していけること

こうした点から、変化に対応しやすいフレームワークともいえます。

2つのフレームの違いと活用の仕方

今回は、「今後の結婚式場の運営モデル」という限定的なテーマでのフレームワークであったため、両方の中身は類似的になりましたが、本来は双方の役割は異なり、相互補完的に使っていくことが望ましいでしょう。

特徴をまとめると以下のとおりです。

視点中国兵法(孫子の兵法)リーンキャンバス
アプローチよりよく勝つために構造を整える動きながら仮説を検証・修正する
適したフェーズ中長期の戦略・再構築変化対応・短期実行の改善
主眼外部・内部構造の設計顧客課題と提供価値の整理
修正の考え方一度整えて安定運用成長と共に調整を繰り返す

おわりに

現在のブライダル市場において、従来の構造のままではいままでと同じような運営をしていくことは難しくなっています。

■ このブログの要点

  • 「中国兵法」は、よりよく勝つために構造を整える、中長期の戦略・再構築に適したフレームです
  • 「リーンキャンバス」は、動きながら仮説を検証・修正する、変化対応・短期実行の改善に適したフレームです
  • 双方の役割は異なり、相互補完的に使っていくことが望ましいでしょう
  • 婚礼施設には、構造そのものを見直す“戦略思考”と、実際に手を動かしながら調整する“実行思考”の両輪が求められます

☑ 次にすること

  • 中国兵法のフレームで、中長期的なミッションを決め、それを具体的に落とし込む
  • リーンキャンバスで、絶えず仮説の検証を繰り返し、必要に応じて各項目を調整していく

今回は、「孫子の兵法」に代表される「中国兵法」と「リーンキャンバス」。この2つの思考フレームを用い、婚礼施設の時代に見合った運営モデルを考えてまいりました。

今後の環境に適応し、婚礼施設ごとの価値を再構築するための指針となるはずです。今後の運営において、ぜひ参考にしてください!

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株式会社永光 代表取締役 高橋龍一

執筆者

株式会社永光 代表取締役 高橋 龍一

婚礼の現場とフリーのウエディングプランナーを経て、2018年からウエディングプランナーの業務委託サービス「プラスワン・プランナー」を運営しています。

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