「結婚式場経営」を最適化する

はじめに
近年、結婚式場の倒産が相次いでいます。これは、次の3つが複合的に影響していると考えられます。
- 社会・経済の変化(マクロ視点)
- 結婚式に対する価値観の多様化(ミドル視点)
- 業界構造の問題(ミクロ視点)
以下に、これらの要因を具体的な数値を交えて分析し、今後の方向性について考察します。
結婚式場の倒産・休廃業の件数の推移と、主な倒産事例は、2026年9月17日のブログ「結婚式場の倒産と休・廃業 2026〜推移と主な事例」で追っています。
社会・経済の変化〜マクロ視点
低成長経済と増税の影響
日本は1990年代以降、いわゆる「失われた30年」と呼ばれる低成長経済の時代を迎えています。実質賃金の伸び悩みやGDP成長率の低迷が続いており、家計の可処分所得に影響を及ぼしています。さらに、消費税率は次のように引き上げられました。
- 1989年:3%導入
- 1997年:5%
- 2014年:8%
- 2019年:10%
これらの増税は、消費者の購買意欲を抑制し、結婚式への支出にも影響を与えています。
出典:財務省「消費税の変遷」
少子高齢化と婚姻件数の減少
日本の総人口は2008年をピークに減少傾向にあり、少子高齢化が進行しています。婚姻件数も減少傾向にあり、1970年には約100万組だった婚姻件数が、2020年には約53万組と半減しています。これにより、結婚式の需要も減少しています。
出典:厚生労働省「人口動態統計」
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結婚式の価値観の変化〜ミドル視点
「なし婚」の増加
近年、結婚式を挙げない「なし婚」を選択するカップルが増加しています。リクルートの「ゼクシィ結婚トレンド調査2023」によれば、結婚式や披露宴を実施しなかったカップルの割合は21.4%となっています。これは、経済的な理由や結婚式に対する価値観の多様化が影響しています。
出典:リクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2023」
結婚式の形式の多様化
従来の大規模な披露宴から、家族や親しい友人だけを招く小規模な結婚式、さらにはフォトウェディングなど、多様な形式が選ばれるようになっています。同調査によれば、披露宴・ウエディングパーティーの招待客人数の平均は52.0人で、コロナ禍前後で若干の増減はありますが、全体傾向として現象傾向にあります。
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出典:リクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」
業界構造の問題〜ミクロ視点
装置産業としての限界
従来の結婚式場は、自社でプランナーなどの雇用スタッフを抱える「装置産業」型のビジネスモデルを採用してきました。しかし、このモデルは固定費が高く、稼働率が低下すると経営を圧迫します。経済産業省の「ブライダル産業の構造転換に向けた調査・分析 報告書」によれば、コロナ禍において、ブライダル事業以外の新規事業展開を行う企業も見られ、従来のビジネスモデルの限界が指摘されています。
出典:経済産業省「ブライダル産業の構造転換に向けた調査・分析 報告書」
コロナ融資の返済開始による影響
また、新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの結婚式場が融資を受けましたが、その返済が始まり、経営にさらなる負担をかけています。これにより、倒産リスクが高まっています。
出典:東京商工リサーチ「倒産動向」
おわりに
結婚式場の倒産が相次ぐ背景には、次の3つが複合的に影響しています。
- 社会・経済の変化
- 結婚式に対する価値観の多様化
- 業界構造の問題
これらの変化は不可逆的であり、単なる景気変動や一時的な市場低迷ではなく、ブライダル業界の根本的なビジネスモデルが問われている状況だと言えます。
特に、ミクロ(業界構造の問題)に関しては、事業者レベルでの対策が可能であり、これに真剣に向き合う必要があります。
弊社の持論として、以下の2つの方向性が業界の解決策となると考えます。
「装置産業」から「箱貸しビジネス」への移行
従来の結婚式場は、人的リソースを全て抱える「装置産業」型のビジネスモデルを採用してきました。
このモデルでは、常に固定費が発生し、閑散期や需要減少時に経営を圧迫します。
現在のように、婚姻件数の減少や「なし婚」の増加が進む中で、この固定費を維持し続けること自体が、事業リスクを高める要因となっています。
そのため、結婚式場は、「すべてのリソースを抱える」形から、「必要なときに、必要な人材や設備を利用できる」形への移行が求められます。
いわば、「箱貸しビジネス」への転換です。
これにより、設備や会場を活用しながら、人的リソースを最適化し、変動費化を進めることが可能となります。
フリープランナーの活用による業務分業
従来の結婚式場では、社員のウエディングプランナーが次の業務までを一貫して担うケースが一般的でした。
- 新規接客
- 打ち合わせ
- 当日の運営
しかし、これでは繁忙期に業務が集中し、閑散期には人材を持て余すという経営課題が生じます。
今後の結婚式場運営においては、社員の役割を明確化し、
- 社員は「箱の価値最大化」を担う(会場の魅力向上・運営の最適化)
- 新規接客やプランニング業務はフリープランナーにアウトソーシングする
このように、フレキシブルな人員配置が可能な体制へ移行することが不可欠です。
これにより、閑散期と繁忙期の需要変動に対応し、業務効率と収益性を同時に向上させることが可能になります。
今後のブライダル業界の生き残り戦略
上記のような変革を進めることなく、従来のビジネスモデルに固執する場合、結婚式場の倒産は今後も続くでしょう。
なぜなら、業界全体が直面している課題は、「景気が回復すれば解決する」類のものではなく、社会全体の構造変化に起因しているからです。
これまでの「装置産業を基盤とした箱型ビジネス」ではなく、
- ウエディングプランナーやベンダーを自由に選択できるウエディングの提案
- 固定費を抑え、利益を生みやすい経営モデルへの移行
- フリープランナーへのアウトソーシングをベースに採用を考える
こうした取り組みを実践できる企業のみが、今後の市場で生き残ることができるでしょう。
是非ご参考になさってください!
まとめ
結婚式場の倒産が相次ぐ背景には、次の3つが複合的に影響しています。
- 社会・経済の変化
- 結婚式に対する価値観の多様化
- 業界構造の問題
■ このブログの要点
- マクロ視点:低成長経済と増税、少子高齢化と婚姻件数の減少(1970年の約100万組から2020年には約53万組)
- ミドル視点:「なし婚」の増加(実施しなかったカップルの割合は21.4%)と、結婚式の形式の多様化
- ミクロ視点:固定費の高い「装置産業」型のビジネスモデルと、コロナ融資の返済開始
- ミクロ(業界構造の問題)は、事業者レベルでの対策が可能
☑ 次にすること
- 「装置産業」から「箱貸しビジネス」への移行を進め、人的リソースを最適化し変動費化する
- 社員は「箱の価値最大化」を担い、新規接客やプランニング業務はフリープランナーにアウトソーシングする
これらの変化は不可逆的であり、ブライダル業界の根本的なビジネスモデルが問われている状況だと言えます。
出典一覧
- 経済産業省「ブライダル産業の構造転換に向けた調査・分析 報告書」
- 財務省「消費税の変遷」
- 内閣府「国民経済計算」
- 厚生労働省「人口動態統計」
- リクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2023・2024」
- ブライダル総研「ウェディング白書」
- 帝国データバンク「業界レポート」
- 東京商工リサーチ「倒産動向」
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執筆者
株式会社永光 代表取締役 高橋 龍一
婚礼の現場とフリーのウエディングプランナーを経て、2018年からウエディングプランナーの業務委託サービス「プラスワン・プランナー」を運営しています。
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