CRMの進化とウエディング業界の展望

はじめに
消費行動の変化に伴い、企業は単なる商品やサービスの提供ではなく、顧客とともに社会的価値を創出するマーケティング戦略を求められるようになっています。
ソーシャルマーケティングとは、企業が社会課題の解決を通じて社会全体の幸福を追求しながら、持続的な経済活動を行うマーケティング手法です。 CRM(コーズ・リレーテッド・マーケティング)は、その考え方に基づき、顧客の消費行動を社会的価値の創出と結びつける仕組みとして発展しています。ウエディング業界においても、次のような社会的課題とビジネスの両立が求められています。
- 環境負荷の低減
- 文化継承
- 地域経済の活性化
CRMの進化の4つの方向性
CRMの進化には、ソーシャルマーケティングの理念に基づく4つの方向性が重要とされています。
ソーシャルマーケティング志向
顧客は単なる商品購入ではなく、社会貢献を意識した購買行動を重視するようになっています。企業活動には、顧客が自己実現を達成しながら社会貢献できる仕組みを整えることで、CRMの価値を高めていくといった側面が今後ますます求められていくことになります。
価値共創活動
従来の企業主体のマーケティングではなく、顧客とともに価値を創る仕組みが求められています。特に、サービス・ドミナント・ロジック(R. F. ラッシュ&S. L. バーゴ(2016)『サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用』監訳;井上崇通)の視点においても、企業は一方的に価値を提供するのではなく、顧客と協働することでより強固な関係を築く必要性が説かれています。
エフェクチュエーションによる市場適応
また市場の不確実性が高まる中で、従来のSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)戦略だけでは、急激な市場変化に対応することが難しくなっています。そのため、企業はエフェクチュエーション(不確実性の高い状況で意思決定を行うための思考様式)の考え方を取り入れ、手元の資源を活用しながら柔軟に市場適応を進めることが求められます。
コロナ禍などを通じて、ますますその重要性が認識されてきているともいえます。
デジタル技術の活用
さらに、AIやIoTなどのデジタル技術の発展により、企業と顧客のインタラクションが強化され、双方向の対話を通じた最適なサービス提供が可能になっています。 データ活用によって、顧客ごとのニーズを細かく分析し、よりパーソナライズされたCRM戦略を展開できるようになってきているということであり、これもCRMの成長を加速化する要因となっています。
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歴史的建造物を活用したCRM


ウエディングの事例を鑑みても、歴史的建造物を結婚式場や宿泊施設として活用することで、文化財の保護と地域活性化を同時に実現する取り組みをCRMの好事例としてあげることができます。
例えば、バリューマネジメント社では、歴史的価値のある建物を婚礼施設やレストラン、宿泊施設として運営し、その収益を維持管理に充てることで、文化財の保存と経済活動を両立させています。
新郎新婦は、歴史的建造物での結婚式を通じて、文化財の保存に貢献すると同時に、地域経済の活性化にも寄与できます。このように、結婚式の選択が社会貢献につながる仕組みを構築することが、CRMの考え方と合致しています。
ファッション業界のCRMとの共通点
ファッション業界では、パタゴニアのWorn WearプログラムやZOZOTOWNの買い替え割など、消費行動を通じて社会貢献につなげるCRMが展開されています。
同じようにウエディング業界でも、顧客が環境配慮型の選択をすることで、持続可能な社会に貢献できる仕組みが求められています。
例えば、ZOZOTOWNの「買い替え割」の仕組みを応用し、不要になったブライダルアイテムを下取りに出すことで、新たなアイテムを割引価格で購入できる制度を導入することが考えられます。 これにより、リユース市場が活性化し、顧客は持続可能な消費行動を実践しながらメリットを得られます。
また、パタゴニアのWorn Wearプログラムのように、ウエディングドレスやアクセサリーの修理・メンテナンスサービスを提供し、長期間の利用を促すことで、無駄な廃棄を防ぐ取り組みも、CRMとしての可能性を持っています。このように、消費行動を通じて環境負荷の低減を実現しながら、顧客と企業の関係を強化する施策が求められています。
デジタル技術を活用したCRMの進化
さらに、デジタル技術の発展により、企業は顧客データを詳細に分析し、社会的価値のある消費行動を促すCRM戦略を強化 できるようになっています。ウエディング業界においても、単なる結婚式の提案ではなく、顧客の価値観や社会貢献意識に基づいた最適な選択肢を提供する 仕組みが求められています。
例えば、AIを活用したパーソナライズド提案 により、環境配慮型の会場やリユース可能な装飾品を希望する顧客に適したプランを提示することが可能になります。
また、ブロックチェーン技術を活用することで、結婚式で使用するアイテムやサービスの透明性を向上させ、企業と顧客の信頼関係を強化できるというメリットがあります。ブロックチェーンは、一度記録されたデータを改ざんできない仕組みを持つため、商品の供給元や環境負荷に関する情報を正確に管理し、結婚式の準備などにおけるエシカルな選択をサポートする ことが可能になります。
こうしたデジタル技術の活用により、顧客は社会貢献につながる選択肢を信頼性のある情報をもとに判断できるようになり、一方企業はCRMを通じて、顧客とより強固な関係を築くことが可能になります。
まとめ
CRMの進化により、ウエディング業界では、単に結婚式をプロデュースするというサービスから、社会的価値を生み出すサービスへと変化が求められています。
■ このブログの要点
- 歴史的建造物の利活用、ファッション業界のリユースモデルの応用、デジタル技術を活用した顧客分析など、多様な手法を組み合わせることで、新たな価値を生み出す仕組みが今後求められていくはずです
- CRMの進化には、ソーシャルマーケティングの理念に基づく4つの方向性(ソーシャルマーケティング志向、価値共創活動、エフェクチュエーションによる市場適応、デジタル技術の活用)が重要とされています
- こうした流れのなかで企業はCRMの考え方をさらに発展させ、顧客とともに社会課題の解決に貢献しながら、ビジネスとしての成長を目指すことが重要となってくるでしょう
☑ 次にすること
- 結婚式の選択が社会貢献につながる仕組みを構築する
- 消費行動を通じて環境負荷の低減を実現しながら、顧客と企業の関係を強化する施策を考える
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執筆者
株式会社永光 代表取締役 高橋 龍一
婚礼の現場とフリーのウエディングプランナーを経て、2018年からウエディングプランナーの業務委託サービス「プラスワン・プランナー」を運営しています。
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