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読解・ブライダル市場①〜マーケティング

 

この記事の概要|読了目安:約10分

本ブログは、弊社代表・高橋がかつて婚礼施設で実施したセミナーの内容を、最新データに置き換えて書き直したものです。婚礼施設の責任者と現場のプランナーに向けた全7回の連載「ブライダル市場を読み解く」の第1回として、「マーケティングとは何か」という問いから出発し、ブライダル市場で日々接しているお客様や数字の背後にある構造的な事実を整理します。

読み終えると、自社が立っている市場の輪郭、挙式・披露宴の費用相場の最新値、ブライダル特有の5つの特性、そして婚姻数を動かしている4つの要因が一本の線でつながって見えるようになります。日々の判断の土台となる「マーケットを読む目」を養っていただくことが、本記事のねらいです。

本シリーズの全7回構成
第1回|ブライダル市場の現在地(マーケティングとは何か)
第2回|来館前に勝負はついている(会場決定の動向と必要条件・十分条件)
第3回|会場カテゴリーと挙式スタイル
第4回|会場の利益構造とプラン設計
第5回|ブライダルフェアの設計と新規接客の流れ
第6回|主体商品と付帯商品の知識
第7回|ヒューマンスキル

マーケティングとは何か

マーケティングとは、なんでしょうか。

ブライダル業界で日々お客様と向き合うとき、私たちは「マーケティング」という言葉を当たり前のように使います。しかし、その中身を一言で答えられる人は、意外と少ないのではないでしょうか。

マーケティングという言葉は、本来は「市場(マーケット)に向けて働きかける一連の活動」を指しますが、その定義は論者によって少しずつ異なります。本記事では、ブライダル市場を理解するための入口として、

  • マーケティングとは「事実を追うこと」であり
  • 同時に「お客様の求めているもの」を捉えることである

という2つの定義から始めます。

この2つは別々のものではなく、ひとつのことを別の角度から言い表しています。事実を追うとは、お客様がいま何を求めているかという事実を追うことであり、お客様の求めているものを捉えるためには、事実を見つめなければならないからです。

では、その「事実」とは具体的にどこで見つけるのでしょうか。

事実は、市場調査(市場の規模や構造を把握する調査)、競合調査(同業他社の動向を把握する調査)、そして自社と他社の比較や違いを知ること、これらを通じて把握されます。すなわち、事実を追うこととは、数字の分析にほかなりません

ここからは、ブライダル市場における「事実」を、公的統計と業界調査の数字をもとに、ひとつずつ確認していきます。最初に見るのは、自分たちがいま立っている場所、つまり「市場」そのものの輪郭です。

あなたはどの市場にいて、どの市場にいたいか

「ブライダル市場」と一口に言っても、その中身はひとつではありません。お客様の人生のタイムラインに沿って、4つに分けて捉えることができます。

ブライダル市場の4つの市場
  • プレウエディング市場
    →婚約から挙式準備までの市場。婚約指輪、結納、前撮りなど
  • 挙式・披露宴市場
    →結婚式当日に関わる市場。会場、料理、衣裳、装花など
  • アフターウエディング市場
    →結婚式後の市場。フォトブック、記念日プランなど
  • 新生活準備市場
    →新居、家具、家電、ハネムーンなど

多くの婚礼施設は「挙式・披露宴市場」を本業の中心に据えています。しかし、お客様の動きは結婚式当日の前後に広く広がっており、プレウエディングフォトや新生活準備など、隣接する市場にもチャンスは存在しています。

あなたが「いる」市場はどこですか。
あなたが「いたい」市場はどこですか。

この2つの問いは、形を変えて何度でも自社に問い直すべき問いです。いま立っている場所と、これから立ちたい場所は、必ずしも同じとは限りません。両者にギャップがあるなら、そこにこそ次の一手のヒントがあります。

市場の輪郭が見えたところで、次に見るのは、その市場で実際に動いているお金です。挙式・披露宴の費用は、いまどのくらいの水準にあるのでしょうか。

挙式・披露宴費用の全国平均を知っていますか

挙式と披露宴・ウエディングパーティーをともに実施した人の費用総額は、平均298.6万円です。最も多い価格帯は300〜350万円となっています。

挙式・披露宴費用の全国平均
298.6万円
挙式と披露宴・パーティーを
ともに実施した人の総額平均
300〜350万円
最多の価格帯
(全体の18.6%)
出典:リクルートブライダル総研「結婚マーケット調査2025」概要報告書(2026年1月22日リリース)

調査主体について少し補足します。リクルートブライダル総研は、長年「ゼクシィ結婚トレンド調査」と「結婚総合意識調査」を公表してきました(用語解説は記事末尾を参照)。

2025年度からこの両調査が統合再編され、「結婚マーケット調査」となっています。調査対象もゼクシィ会員から市場全体に広げられたため、過去のゼクシィ結婚トレンド調査との数値比較はできません。本記事では2025年版の数字を、現時点で最も市場全体を映し出した最新値として扱います。

費用の全体感がつかめたところで、次に押さえておきたいのは、「なぜブライダル市場ではこの金額が動くのか」を理解するための前提です。ブライダルは、他業種と異なるいくつかの特性を持った商材ということを抑えておく必要があります。

ブライダルという商材の特性

まず数字を読み解くうえで前提となるのが、ブライダルという商材の特性です。他業種と比較したときに、5つの特徴が浮かび上がります。

ブライダルの5つの特性
  • やりなおしができない重要な儀式である
  • 言い伝えや縁起に影響される
  • 短時間に高額の支出をする
  • 女性の好みが強く反映される
  • 流行の変化のスピードがはやい

これらの特性が組み合わさって、ブライダル市場は他業種と異なる独特の動きを見せます。やりなおしができないからこそ、ひとつの判断ミスがそのまま満足度の低下に直結します。短時間に高額の支出をするからこそ、その意思決定には強い慎重さが伴います。流行の変化が速いからこそ、ブライダル従事者は常に情報感度を高く保つ必要があります。

ここまでで、市場の輪郭、費用の水準、そして商材としての特性を見てきました。それでは、その市場でお客様は実際にどのような選択をしているのでしょうか。とくに近年話題となっている「結婚式を挙げない」という選択について、次に考えていきます。

なぜ結婚式を行うのか、なぜ「なし婚」を選ぶ人がいるのか

なぜ結婚式を行うのでしょうか。
なぜ披露宴も行うのでしょうか。

この問いに、絶対の正解はありません。答えは人それぞれです。だからこそ、結婚式を行わないという選択、いわゆる「なし婚」(結婚はするが結婚式や披露宴を実施しないこと)も選択肢として確かに存在しています。

ここで、ブライダル従事者が考えるべき問いがあります。それは、なぜ結婚式を行わないのか、という問いです。なし婚にも、その人なりの理由があります。そして、なし婚を選ぶ人が増えていること、それ自体が「事実」であり、すなわちマーケットの動きにほかなりません。

この点、「結婚式は素晴らしいもの」という前提だけで業界に立っていると、なし婚を選ぶ人の理由が見えなくなります。事実を追うとは、自分にとって心地よい数字だけを見ることではありません。むしろ、自分にとって都合の悪い数字こそが、マーケットの本当の姿を教えてくれます

では、結婚式を行うか行わないかという個別の選択の前に、そもそも「結婚する人」自体がどう推移しているのでしょうか。挙式・披露宴市場のパイそのものを決めるのは、婚姻件数だからです。次に、その婚姻件数を動かしている構造的な要因を見ていきます。

婚姻数に影響を与える4つの要因

挙式・披露宴市場のパイそのものは、婚姻件数(その年に婚姻届が受理された組数)に直接影響されます。婚姻数を変動させる要因として、少子化、晩婚化、非婚化、景気動向の4つが挙げられます。順に見ていきましょう。

婚姻件数の最新値

厚生労働省の人口動態統計(出生・死亡・婚姻・離婚などを把握する国の基幹統計)によると、2024年の婚姻件数は48万5092組でした。前年の47万4741組より1万351組増加し、婚姻率(人口千人あたり何組が婚姻したかを示す指標)は4.0で、前年の3.9より上昇しています。

婚姻件数の最新値(2024年)
48.5万組
2024年の婚姻件数
(前年比+1万351組)
4.0
婚姻率
(人口千対)
出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」

1つ目の要因である少子化は、結婚適齢期の人口そのものを減らす要因です。短期的な前年比の増減はあっても、長期的には婚姻件数の減少基調が続く構造的な背景となっています。2024年は2年ぶりに増加に転じましたが、これは長期トレンドの転換ではなく、前年の落ち込みからの揺り戻しと見るのが妥当です。

晩婚化

2つ目の要因は、晩婚化です。2024年の平均初婚年齢(その年に初めて結婚した人の年齢の平均)は、夫が31.1歳、妻が29.8歳です。妻は前年の29.7歳から0.1歳上昇しています。

平均初婚年齢(2024年)
31.1
夫の平均初婚年齢
29.8
妻の平均初婚年齢
出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」

晩婚化は、結婚するタイミングが後ろ倒しになる現象です。同じ世代でも、結婚する人が同じ年に集まらず、長い期間に分散して結婚するようになるため、ある時点で見たときの婚姻件数を押し下げる要因となります。婚礼施設の現場感覚としても、20代後半が中心だった時代に比べ、30代前半のお客様の比率が高まっていることを実感されている方は多いのではないでしょうか。

非婚化

3つ目の要因は、非婚化です。50歳時の未婚割合(45〜49歳と50〜54歳の未婚率の平均値で算出される指標。かつて生涯未婚率と呼ばれていました)は、男性が28.3%、女性が17.8%です。1920年以降の国勢調査史上、最高の水準となっています。

50歳時の未婚割合
28.3
男性
17.8
女性
出典:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」2020年国勢調査ベース(不詳補完値)。45〜49歳と50〜54歳の未婚率の平均値。

非婚化は、晩婚化とは別の構造です。タイミングが遅れているのではなく、結婚そのものを選ばない人の割合が増えているという動きです。先ほど触れた「なし婚」と並んで、ブライダル市場の構造に直接影響を与える事実です。

景気動向と「失われた30年」、そして「失われた40年」へ

4つ目の要因は景気動向です。日本経済はバブル崩壊後の1990年代初頭から長期の停滞に入りました。当初は「失われた10年」と呼ばれ、それが「失われた20年」になり、いまでは「失われた30年」と呼ばれる時代を超え、現在進行形で「失われた40年」になろうとしています

この30年あまりのあいだ、日本経済は2つの局面を経験してきました。前半は長く続いたデフレ(物価が継続的に下落する現象)の時代です。物価が上がらないため企業の売上も伸びにくく、給与も上がりにくい構造でした。その結果、収入は低下傾向となり、消費全体が冷え込みました。

後半、とりわけ近年は、円安や原材料価格の高騰を背景にインフレ(物価が継続的に上昇する現象)局面に転じました。ところが、ここで起きているインフレは、必ずしも経済にとって良いインフレではありません。

良いインフレと悪いインフレの違い

インフレには大きく2種類あります。需要が増えて起こる「良いインフレ」(ディマンドプル型)と、コストが上がって起こる「悪いインフレ」(コストプッシュ型)です。同じ「物価が上がる」という現象でも、起点も結果も大きく異なります。

良いインフレと悪いインフレの違い
良いインフレ
ディマンドプル型
起点|需要の拡大
物価|上がる
給与|上がる
企業収益|増える
生活実感|豊かになる
悪いインフレ
コストプッシュ型
起点|コスト上昇(原材料・エネルギー・輸入物価)
物価|上がる
給与|追いつかない
企業収益|圧迫される
生活実感|苦しくなる

現在の日本で起きているのは、後者の悪いインフレ、すなわちコストプッシュインフレです。物価は上がっているのに、給与の伸びがそれに追いつきません。名目の数字は動いていても、生活実感としてはむしろ苦しくなるという現象が、いま家計のなかで起きています。これらが景気の悪化と経済格差の拡大につながり、結婚を取り巻く経済環境を厳しくしてきました。

なぜ、こうしたことが起こっているのでしょうか。

この問いに対する答えは、本記事の範囲を超えるため、ここでは割愛させていただきます。ただ、婚姻数に影響を与える4つの要因として、少子化、晩婚化、非婚化、景気動向が複合的に作用しているという事実は、ブライダル従事者として常に意識しておきたいところです。

マーケットを捉えるとは、社会と経済を捉えること

ここまで見てきた4つの要因は、いずれもブライダル業界の内側だけを見ていては理解できないものでした。少子化は人口構造の問題であり、晩婚化と非婚化は価値観やライフスタイルの変化を映しており、景気動向は経済全体の構造的問題そのものです。

つまり、マーケットを捉えるとは、自社の業界だけを見ることではなく、社会全体や経済全体の動きを捉えることにほかなりません。新郎新婦は、ブライダル業界の都合のなかではなく、日本社会と日本経済のなかで生きています。彼ら彼女らがいま結婚するかどうか、結婚式を挙げるかどうかを判断する背景には、私たちが普段ニュースで目にする社会経済の動きがそのまま反映されているのです。

ブライダル業界に身を置いているからこそ、業界の外側にあるこうした事実から目を逸らさずにいたい。私たちの仕事は、社会と経済の動きと無縁ではいられないからです。

事実を追うことから始まる

マーケティングとは、事実を追うことであり、お客様の求めているものを捉えることである、と冒頭で述べました。ここまでに見てきた数字は、すべてその「事実」の一部です。

婚姻件数48万5092組、平均初婚年齢は夫31.1歳・妻29.8歳、50歳時未婚割合は男性28.3%・女性17.8%、挙式・披露宴費用は平均298.6万円。これらの数字は、新郎新婦という顧客が、いまどんな環境のなかで結婚式を選択しているかを示しています。

そしてブライダル市場全体としては、4つの要因によって構造的な変化が進行しています。この事実を踏まえずに、過去の成功体験だけで現場の判断をすることは、もはや不可能な段階にあると言えます

次回予告

本ブログでは、ブライダル市場全体の輪郭と、婚姻数を動かしている構造的な要因を見てきました。次回は、その市場のなかで実際に新郎新婦がどう動いているかに視点を移します。

新郎新婦は、いつから会場検討を始め、何件くらいの会場を見学し、何件目で会場を決めているのでしょうか。来館前に勝負はついている、というテーマで、必要条件と十分条件、そして会場の内部対策の話までを一気にお届けします。


用語解説

人口動態統計:厚生労働省が毎年公表している、出生・死亡・婚姻・離婚・死産の全国データ。市区町村に届け出られた戸籍情報をもとに集計されます。「概数」(速報値)と「確定数」(最終確定値)があり、確定数は調査年の翌年9月に公表されます。本記事では確定数または概数を出典として明記しています。
婚姻率(人口千対):その年に届けられた婚姻件数を、人口1,000人あたりに換算した数値。たとえば「4.0」とは、人口1,000人につき年間4組が婚姻したという意味です。人口規模の異なる年や国を比較する際に用いられます。
不詳補完値:国勢調査などで配偶関係などが「不詳」(回答がない)だった人を、統計的に補完して算出した値。2020年国勢調査の50歳時未婚割合では、不詳補完値が公式値として採用されています。
結婚マーケット調査:リクルートブライダル総研が2025年から実施している、結婚や結婚式の実態を把握する調査。2024年までの「ゼクシィ結婚トレンド調査」(ゼクシィ会員が対象)と「結婚総合意識調査」を統合再編したもので、対象を市場全体に拡大しています。前年同条件での比較ができないため、本記事では2025年版の数字を独立した最新値として扱っています。
コストプッシュインフレ(悪いインフレ):原材料費、エネルギー価格、輸入物価など、コスト側の要因によって物価が押し上げられるインフレのこと。給与の伸びが物価上昇に追いつかず、生活実感としては苦しくなる傾向があります。
ディマンドプルインフレ(良いインフレ):需要の増加によって物価が押し上げられるインフレのこと。経済が活発化することで企業収益と給与が同時に増えるため、生活実感としても豊かになりやすい構造を持ちます。

出典一覧

・厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」(2025年9月16日公表)
・厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
・国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」2020年国勢調査ベース(不詳補完値)
・リクルートブライダル総研「結婚マーケット調査2025」概要報告書(2026年1月22日リリース)

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