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読解・ブライダル市場⑤〜ブライダルフェアの設計

この記事の概要|読了目安:約15分

本ブログは、弊社代表・高橋がかつて婚礼施設で実施したセミナーの内容を書き直したものです。婚礼施設の責任者とウエディングプランナーに向けた全7回の連載「ブライダル市場を読み解く」の第5回として、ブライダルフェアをどう企画するのか、そして新規接客と打合せがどのような流れで進むのかを整理します。

読み終えると、フェアを企画する手順と、新規接客のどこに時間をかけるべきかが、順序立てて見えるようになります。

本シリーズの全7回構成

  • 第1回|ブライダル市場の現在地(マーケティングとは何か)
  • 第2回|来館前に勝負はついている(会場決定の動向と必要条件・十分条件)
  • 第3回|会場カテゴリーと挙式スタイル
  • 第4回|会場の利益構造とプラン設計
  • 第5回|ブライダルフェアの設計と新規接客の流れ
  • 第6回|主体商品と付帯商品の知識
  • 第7回|ヒューマンスキル

プランをつくったあとに必要なもの

第4回では、会場の利益構造とパッケージプランの組み立てを見てきました。最後に、いいプランをつくっても認知されなければ意味がない、という話をしました。

今回はその続きです。つくったプランをお客様に届ける入口がブライダルフェアであり、来ていただいたあとに待っているのが新規接客になります。

ブライダルフェアとは何でしょうか

ブライダルフェアは、重要な販売促進の機会です。

そしてフェアには2種類あります。新規見学者向けと成約者向けです。この2つは目的が異なります。前者は選んでいただくためのもの、後者はすでに決めていただいたお客様に対するものです。同じフェアという言葉でくくらず、分けて設計する必要があります。

ブライダルフェアを企画する6つのステップ

企画は次の順序で進めます。

順序 すること
1 顧客のニーズ変化を把握する
2 来て欲しいターゲットを明確にする
3 1件目に来てもらう新郎新婦目線の内容にする
4 そのためにフェア内容を推敲する
5 集客数の目標を立てる
6 複数の宣伝広告を行う(メディアミックス)

そして6のあとは、PDCAを繰り返します。

ここで注目していただきたいのは、3番です。1件目に来てもらうという言葉が入っています。

第2回で、新郎新婦が会場を決めるのは1件目か2件目で67.3%だという数字を見ました。だから1件目に選ばれる必要がある、という話です。フェアの企画は、そのための手段として位置づけられています。内容を推敲するのも、宣伝広告を複数打つのも、1件目に来ていただくためです。

順序にも意味があります。ニーズの把握が1番で、ターゲットの明確化が2番。つまり自社が売りたいものから始めていません。第1回でお伝えした、マーケティングとは事実を追うことであり、お客様の求めているものを捉えることである、という話がここにも通っています。

ブライダルフェアの内容

フェアで実施する内容には、次のようなものがあります。

  • 模擬挙式
  • 模擬披露宴
  • 衣裳試着
  • 試食会
  • 会場見学

実際にどのような内容で組まれているかは、ゼクシィなどの媒体を見れば各社の企画が並んでいます。自社のフェアと見比べてみてください。第2回でお伝えした違いを知ることが、ここでも出発点になります。

新郎新婦の満足が、会場の利益になります

フェアの設計と新規接客の話に入る前に、前提となる考え方を置いておきます。

求められるプランを作成する。それによって顧客満足が向上する。その先に会場の利益も創出される。

この双方利益の考え方が大切になります。

第4回で見た利益構造は、どこから利益が生まれるかという話でした。しかしその手前には、お客様に満足していただくことがあります。順序が逆になると、利益を取りにいく接客になり、結果として選ばれなくなります。

新規接客の基本の流れ

ここからは、来ていただいたあとの話です。新規接客は次の順序で進み、全体でおよそ3時間かかります。

時間 流れ
1時間30分 来館15分前のお出迎え → サロンへのご案内 → アンケートのご案内 → ヒアリング開始 → ショールーム開始
30分 試食
1時間 見積と日程相談 → クロージング → 成約または非成約

お出迎えからショールームまでで1時間30分、試食で30分、見積からクロージングまでで1時間という配分です。

1番に目を留めてください。来館15分前のお出迎えです。お約束の時間ではありません。15分前です。第2回で、会場の雰囲気とはスタッフがつくりあげるものだとお伝えしましたが、それはこの瞬間から始まっています。

そして配分を見てください。ヒアリングとショールームを含む前半に1時間30分を割いています。見積とクロージングは1時間です。掴む時間のほうが、提案する時間より長く取られています。

聴くが8割です

接客の流れを、別の切り口で見ます。

導入ヒアリング分析プランニングプレゼンテーション8割2割

提案そのものは、全体の2割にすぎません。

導入からプランニングまでの4段階で8割を使います。つまり、話す時間よりも聴いて考える時間のほうが圧倒的に長い。ここが逆転している接客は、お客様の求めていることを掴まないまま提案していることになります。

第4回で計算した値引きの上限も、この順序があってはじめて意味を持ちます。何を求めているかを掴む前に金額の話に入れば、値引きだけが判断材料になってしまいます。

ヒアリングの目的

ヒアリングの目的は、顧客の求めていることを把握することです。そのために用いる手法が4つあります。

  • アイスブレイク
  • オープンクエスチョン
  • クローズドクエスチョン
  • サンプルクエスチョン

これらを用いて要望を把握し、それを3点にまとめることが大事です。

3点にまとめたうえで、会場特性とマッチングさせ、会場案内へとつなげます。

要望をすべて並べたままでは案内に使えません。3点に絞るから、この会場のどこを見ていただくべきかが決まります。ヒアリングと会場案内は、別々の工程ではなくつながっています。

他の式場は何をしているのでしょうか

他の式場が取り組んでいる例を挙げます。

  • 15分前のご来館
  • マネージャーによる引きの接客
  • ウェルカムカード
  • お客様情報を全スタッフが把握し、お名前でお呼びする
  • 挙式体験や入場体験の演出
  • 試食や試着
  • 他式場との違いのビジュアル化
  • 会場のビューポイントをトークスクリプト化して案内

並べてみると、大きな設備投資を必要とするものがほとんどありません。第2回でお伝えした内部対策、すなわち改装ではなく改革でできることばかりです。

違いをビジュアル化するとは

他式場との違いのビジュアル化とは、自社の強みを言葉で説明するのではなく、比べられる形にして見せることです。

たとえば、1日に何組を受けるかという運営方針は、お客様の体験に直結します。ここを軸に置くと、次のように整理できます。

項目 1日1組で受ける 1日に複数組を受ける
日程 組数が限られ、希望日が埋まりやすい 枠が複数あり、希望日を取りやすい
時間 前後の組がなく、開始と終了を動かせる 前後の組があり、決められた枠で進める
写真 館内のどこでも、時間を気にせず撮れる 撮影の場所と時間に制約がある
スタッフ 当日のスタッフが1組に集中する 複数組を担当し、対応に区切りが要る
装飾 空間全体を使え、持ち込みの自由度が高い 共用部分があり、装飾の範囲に制限がある

どちらが優れているという話ではありません。日程を取りやすいことを重視するお客様もいれば、時間の自由度を重視するお客様もいます。比較できる形にしておけば、お客様が自分で判断できます。

第2回で、お客様はこちらが思っている以上に違いを感じ取っているとお伝えしました。その違いを、案内する側が言葉と形にしておくということです。

とくに最後の2つは、仕組みの話です。違いをビジュアル化しておけば、誰が案内しても同じ強みが伝わります。ビューポイントをトークスクリプトにしておけば、案内の質が個人の力量に左右されにくくなります。

打合せの流れ

成約後の打合せにも流れがあります。ご契約から挙式当日まで、複数回にわたって決めていくことになります。

回数や呼び方は会場によって異なりますが、進み方には共通した構造があります。どの項目も、案内、検討、決定、最終確認という4つの段階を踏むということです。

4つの段階

段階 会場 お客様
案内 選択肢と価格、期限を伝える 全体像を把握する
検討 資料や見本を渡す 候補を絞り込む
決定 内容と金額を確定し記録する 選択を確定する
最終確認 確定内容を一覧で示す 相違がないか確かめる

この4段階を飛ばすと、決めたつもりが決まっていない状態が生まれます。とくに案内を省いて検討から入ると、お客様が全体像を知らないまま個別の選択を迫られることになります。

決定の順序は、逆算で決まります

項目ごとに、いつまでに決めなければならないかが違います。それは、後ろの工程が前の工程の結果を必要とするからです。

時期 項目 理由
最初 招待状の内容と発送 出欠を集める期間が要る
前半 挙式スタイル、衣裳 手配や採寸に期間が要る
中盤 料理、ケーキ、装花、演出 試食や見本を経て決める
出欠確定後 席次、席札、引出物、送迎 人数が決まらないと組めない
直前 進行表、BGM、映像 内容が最後まで動く

招待状がすべての起点になっている点を見てください。招待状を出さなければ出欠が集まらず、出欠が集まらなければ席次も引出物の数も確定しません。

第3回で、13時挙式から逆算して来館時刻を出す話をしました。打合せも同じです。挙式日から遡って、どの項目をいつまでに決めていただく必要があるかを組み立てます。打合せの回数は、その逆算の結果として決まります。

並走するもの

会場との打合せとは別に、お二人ご自身の準備も並走します。新居や引越し、ハネムーンの手配、両家への報告といったものです。

これらは会場の担当範囲ではありませんが、打合せの日程に影響します。ハネムーンの時期が決まらないと当日の進行に入れるかどうかも決まりませんし、引越しの時期が重なれば打合せの時間が取りにくくなります。会場の項目だけを見て日程を組むと、お客様の側で無理が生じます。

フェアから打合せまでは、ひとつづきです

今回は、フェアの企画から新規接客、そして打合せの流れまでを見てきました。

フェアの企画は、1件目に来ていただくためのものでした。新規接客は、聴くことに8割を使って求めていることを掴み、3点にまとめて会場案内につなげるものでした。打合せは、項目ごとに案内から最終確認まで段階を踏むものでした。

そのすべての前提にあるのが、新郎新婦の満足が会場の利益になるという考え方です。ここが入れ替わらないようにしたいところです。

次回予告

本ブログでは、ブライダルフェアの設計と、新規接客および打合せの流れを見てきました。次回は、その打合せで扱う商品そのものに目を向けます。

主体収入商品と付帯収入商品には、それぞれどのような知識が必要なのでしょうか。料理や衣裳、装花や写真といった商品ごとの理解をお届けします。

用語解説

  • ブライダルフェア 婚礼施設が新規見学者や成約者に向けて実施する催しのことです。模擬挙式や試食会などを通じて、会場の雰囲気を体験していただく販売促進の機会にあたります。
  • メディアミックス 複数の媒体を組み合わせて宣伝広告を行うことです。ひとつの媒体に依存せず、それぞれの特性を活かして集客する考え方を指します。
  • PDCA 計画、実行、評価、改善を繰り返す進め方のことです。フェアの集客実績を検証し、次の企画に反映させる際に用いられます。
  • アイスブレイク 本題に入る前に、場の緊張をほぐすためのやりとりのことです。
  • オープンクエスチョン はいやいいえで答えられない、自由に答えていただく問いかけのことです。
  • クローズドクエスチョン はいやいいえ、あるいは選択肢から答えていただく問いかけのことです。
  • サンプルクエスチョン 具体例を示したうえで、それを手がかりに答えていただく問いかけのことです。
  • クロージング 新規接客の最終段階で、ご契約の意思を確認する場面のことです。
  • トークスクリプト 案内や説明の内容を、あらかじめ言葉として整理しておいたもののことです。担当者によって伝わり方が変わらないようにする目的で用いられます。

出典一覧

  • IWPA「ウエディングプランナー資格2級公式テキスト」第6版(2018年4月1日発行)
  • IWPA「ウエディングプランナー資格1級テキスト」第4版(2017年10月1日発行)
  • IWPA「THE BIBLE OF WEDDING」第14版(2017年8月1日発行)
  • 公益社団法人日本ブライダル文化振興協会「ブライダルコーディネーターテキスト スタンダード」第6版(ISBN 978-4-9910055-1-0)
  • 公益社団法人日本ブライダル文化振興協会「ブライダルコーディネーターテキスト エキスパート」第4版(ISBN 978-4-9910055-3-4)

※本記事に掲載した打合せの段階と決定の順序、および違いのビジュアル化の比較表は、進め方の考え方を示すために整理したものです。実際の回数や項目、会場形態による違いの表れ方は会場ごとに異なります。

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