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読解・ブライダル市場④〜利益構造とプラン

この記事の概要|読了目安:約20分

本ブログは、弊社代表・高橋がかつて婚礼施設で実施したセミナーの内容を書き直したものです。婚礼施設の責任者とウエディングプランナーに向けた全7回の連載「ブライダル市場を読み解く」の第4回として、会場の売上がどのような商品で構成され、利益がどこから生まれているのか、そしてパッケージプランをどう組み立てるのかを整理します。

読み終えると、目の前の見積書のどこに利益が乗っていて、どこまで値引きができるのかを、自分で計算して判断できるようになります。

本シリーズの全7回構成

  • 第1回|ブライダル市場の現在地(マーケティングとは何か)
  • 第2回|来館前に勝負はついている(会場決定の動向と必要条件・十分条件)
  • 第3回|会場カテゴリーと挙式スタイル
  • 第4回|会場の利益構造とプラン設計
  • 第5回|ブライダルフェアの設計と新規接客の流れ
  • 第6回|主体商品と付帯商品の知識
  • 第7回|ヒューマンスキル

値引きをしてよい金額を、あなたは計算できますか

第3回では、会場カテゴリーと挙式スタイルを見てきました。今回は、その結婚式を支えている数字の側に目を向けます。

新規接客の場面で、あといくらまでなら下げられるのかという判断を迫られることがあります。その判断を勘で行っているか、計算して行っているかで、成約率も利益も変わります。

計算するために必要なものは3つです。商品が主体収入と付帯収入のどちらなのか、それぞれの原価率はいくらなのか、そして自分の部門が守るべき粗利率はいくつなのか。順に見ていきます。

販売価格と原価の関係

まず言葉の整理からです。商品の価格が販売価格、原材料費が原価にあたります。

そのうえで、婚礼施設が扱う商品は大きく2つに分かれます。自社商品とパートナー企業商品です。どちらに分類されるかは、内製化しているか外注化しているかによって会場ごとに変動します。

主体収入商品と付帯収入商品

区分内容商品の例
自社商品(主体収入)自社で提供する商品です。室料のように原価がゼロの商品もあります料理/飲料/ケーキ/室料/サービス料
パートナー企業商品(付帯収入)提携先に依頼する商品です。業務委託料が原価になります装花/衣裳/美容/演出/ギフト/写真/映像/司会など

ここで押さえておきたいのは、室料のように原価がゼロの商品が存在するという点です。これが後の利益構造の話につながります。

原価管理

利益とは何でしょうか。売上から原価を引いたものが利益です。ただし利益にも複数の種類があります。それは後述します。

では、利益を増やすにはどうすればよいでしょうか。方法は2つです。

利益を増やす2つの方法

方法具体的にすること
売上を増やす件数を増やす。あわせて人数と客単価を増やす
原価を下げる外注費を下げるのではなく、付帯収入を増やす

2つ目に注意してください。原価を下げるというと外注費の値切りを思い浮かべがちですが、そこではありません。付帯収入を増やすことが、結果として原価率を下げます。

同じ売上でも、利益はこれだけ変わります

売上が同じでも、その中身によって利益は大きく変わります。どちらも売上200万円になる2つのパターンを比べてみてください。

パターン1

商品売上原価率
料飲100万円30%
室料50万円0%
衣裳50万円65%
売上合計200万円
利益137.5万円

パターン2

商品売上原価率
料飲100万円30%
室料0万円0%
衣裳100万円65%
売上合計200万円
利益95万円

売上はどちらも200万円です。しかし利益は137.5万円と95万円で、42.5万円の差が生まれます。

差を生んでいるのは室料です。原価がゼロの商品が売上に乗っているかどうかで、手元に残る金額がこれだけ変わります。

値引きの判断をするとき、どの商品から下げるかによって利益の減り方が違うのは、このためです。

利益の種類

先ほど後述するとした、利益の種類です。売上から原価を引いたものが利益ですが、何を引くかによって呼び名が変わります。

5つの利益

計算結果
売上高 - 売上原価売上総利益(粗利)
売上総利益 - 販管費営業利益
営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用経常利益
経常利益 + 特別利益 - 特別損失税引前当期純利益
税引前当期純利益 - 法人税等当期純利益

このうち、日々の運営で動かせるのは売上総利益と営業利益までです。

経常利益から下は、財務や税務の領域になります。プランナーが数字を見るときは、売上総利益と営業利益の2つを押さえておけば十分です。

サンプルで実際に計算してみます

ここまでの内容を、ひとつの見積で確認します。60名の披露宴を想定したサンプルです。

見積の内訳

主体収入単価数量総額原価原価率
料理15,000円60900,000円270,000円30%
飲み物5,000円60300,000円90,000円30%
室料300,000円1300,000円0円0%
サービス料20,000円601,200,000円0円0%
付帯収入単価数量総額原価原価率
装花150,000円1150,000円97,500円65%
衣裳500,000円1500,000円325,000円65%
写真200,000円1200,000円130,000円65%
映像150,000円1150,000円97,500円65%
美容着付150,000円1150,000円97,500円65%
印刷物50,000円150,000円32,500円65%
ギフト5,000円15,000円3,250円65%
挙式200,000円1200,000円130,000円65%
演出200,000円1200,000円130,000円65%
合計金額
売上4,305,000円
原価1,403,250円

利益の計算

項目金額比率
売上総利益2,901,750円67%
その他経費(販管費)1,500,000円
営業利益1,401,750円33%

どこまで値引きしてよいのか

ここが今回の記事の核心です。

このサンプルの粗利率は67%です。仮に、粗利率を50%まで落としてよいという判断があるとします。そのとき粗利益は2,152,500円になります。

もともとの粗利益2,901,750円から、この2,152,500円を引いてください。

749,250円。これが、値引きをしてよい金額です。

どこまで割り引いてよいかは、この粗利率が基準になります。勘ではなく、粗利率から逆算して出す数字です。

では、その基準となる粗利率はどこから来るのでしょうか。部門目標から算出します。次にその話に移ります。

目標とブレイクダウン

会社から年間売上目標が下りてきます。マネージャーはそれに基づいて部門目標を立てます。そして部門目標を達成するために、部下である各プランナーごとの個人目標に落とし込みます。

この落とし込みを、ブレイクダウンといいます。

ここも、日々の運営で動かせる部分です。

よいブレイクダウンとは

4人のプランナーに目標を割り振った例です。単位は万円です。

区分4月5月6月7月8月9月合計
A 前年実績5004506006004505003,100
A 今期目標6007006007005006003,700
B 前年実績6005007006506506003,700
B 今期目標7007007008007007004,300
C 前年実績2002005004005005002,300
C 今期目標3004005005006007003,000
D 前年実績6005008007007006003,900
D 今期目標7007009008008007004,600
合計 前年実績1,9001,6502,6002,3502,3002,20013,000
合計 今期目標2,3002,5002,7002,8002,6002,70015,600

この4人は、それぞれ経験も持ち味も異なります。Aは入社4年目の中堅で成績は普通、Bは同じく入社4年目の中堅で成績が高い、Cは2年目で好感度が高い、Dはベテランという設定です。

目標の数字を見比べてください。全員に一律の伸び率をかけているわけではありません。Cは2年目なので前年実績が低く、そのぶん伸びしろがある。だから月を追うごとに目標が上がっています。Dはベテランなので絶対値が高い。ブレイクダウンとは、部門目標を人数で割ることではなく、一人ひとりの状態に合わせて配分することです。

パッケージプランの理解

ここからはプラン設計の話に移ります。

パッケージプランとは、いくつかの婚礼商品を組み合わせてパック料金化したものです。反対にあたるのがオーダーメイドプランになります。

パッケージプランの3種類

  • 基本パッケージ
  • フルパッケージ
  • 部分パッケージ

固定項目と変動項目

プランを組むうえで、項目は2つに分かれます。

区分内容
固定項目列席人数に関係なく必要なものです挙式価格/衣裳価格など
変動項目(正比例)人数に正比例するものです料飲/席札など
変動項目(相関)人数と相関があるものです卓上装花の数(6名で1卓など)

この区別が、次に説明する1名追加料金の計算根拠になります。

基本パッケージの内容

基本パッケージは、基本プランと1名追加料金から構成されます。

基本プランと基本人数

項目内容
基本プラン50名100万円といった料金プランのことです
基本人数そのパッケージに含まれる人数です。その会場でニーズのある人数でないと、プランとして意味をなしません

基本人数の設定は重要です。自社の平均的な招待人数とかけ離れた設定にすると、誰にも当てはまらないプランになります。

基本料金の中身

基本料金は、主体収入商品と付帯収入商品で構成されます。

区分含まれるもの
主体収入商品基本人数分の料飲/ケーキ/室料/サービス料
付帯収入商品必要最低限が含まれます。音響照明/美容/装花/ペーパーなど

付帯収入商品について、ひとつ実務上の判断があります。見た目単価を引き上げる商品は入れないことが多いという点です。プランの表示価格が上がってしまうと、比較検討の段階で候補から外れやすくなるためです。

1名追加料金の計算

1名追加料金は、人数に正比例する項目と、人数と相関がある項目で構成します。つまり料飲、席札、ケーキ、室料、サービス料、卓上装花です。

項目金額
料飲15,000円
ケーキ1,000円
サービス料1,500円
室料500円
卓上装花833円
合計18,333円

この金額をそのまま提示するかどうかは、粗利率を見て判断します。どこまで下げてよいかを計算したうえで調整することになります。

近年の傾向

この設計は、近年より柔軟になっています。まず集客のために見かけの価格を安くすることが多く、当然ながら他社も同じことをしているため、特典で付加価値をつけていく流れになっています。

自由度も高くなりました。必要ないものを差し引ける会場が多く、人数が減った場合も料金を減らして対応します。また基本価格だからこそ、追加料金をいただいてグレードアップに対応できるようにしている会場も多くあります。

パッケージ作成の注意点

実際にプランをつくるときに気をつけることを挙げます。

  • 同業他社の動向をみる
  • 婚礼施設の評価に見合っているかを認識する
  • 繁忙期、閑散期、六輝などごとに作成する
  • 見た目の値付けに注意する。100万円よりも98万円のほうがお得感があります
  • キリのよい数字にする

そしてもうひとつ、売上と原価の内訳を意識することです。売上をグロス、原価をネットと呼びます。

粗利率の目標を割らないこと。ここが最後の防波堤になります。

迷ったら、記事の前半で見たサンプルに戻ってください。粗利率から逆算すれば、値引きしてよい金額が出ます。

よいプランをつくっても、認知されなければ意味がありません

最後に、プラン設計の外側にある話をします。

他社のプランを実際に見比べてみてください。そのうえで気づくことがあります。いいプランをつくっても、認知されないと意味がないということです。

もっとも大事なのは、マーケティングにもとづく宣伝広告になります。競合は宣伝広告に多大な力を入れ、割引も大きく行っています。呼ばないと来ない、という前提です。

まずこの前提を認識したうえで、同じ土俵に立つのか、それとも別の集客経路を構築するのか。その判断が問われます。

前提としては、現在はメディアミックスこそが基本であり、もっとも大事です。

第1回でお伝えしたマーケティング、すなわちお客様が求めているものを知ることは、プラン設計にもそのままつながっています。売れているプランはお客様が求めているものであり、そこから設計を組み直すこともできます。

次回予告

本ブログでは、会場の利益構造とパッケージプランの組み立てを見てきました。次回は、そのプランをお客様に届ける入口の話に移ります。

ブライダルフェアはどう設計すればよいのでしょうか。あわせて新規接客と打合せの流れをお届けします。

用語解説

  • 主体収入商品 自社で提供する商品のことです。料理、飲料、ケーキ、室料、サービス料などが該当します。内製化の状況によって、どの商品が主体収入になるかは会場ごとに変わります。
  • 付帯収入商品 提携先に依頼する商品のことです。装花、衣裳、美容、演出、ギフト、写真、映像、司会などが該当します。業務委託料が原価になります。
  • 原価率 売上に対する原価の割合のことです。原価率が低いほど手元に残る利益が大きくなります。室料のように原価率がゼロの商品もあります。
  • 売上総利益(粗利) 売上高から売上原価を引いたものです。粗利率は、この売上総利益が売上高に占める割合を指します。
  • 販管費 販売費および一般管理費のことです。人件費、広告宣伝費、家賃などが含まれます。売上総利益からこれを引くと営業利益になります。
  • グロスとネット グロスは売上、ネットは原価を指す言い方です。プランの内訳を確認するときに用いられます。
  • ブレイクダウン 部門目標を、各プランナーの個人目標へ落とし込むことです。一律に割るのではなく、経験や持ち味に応じて配分します。
  • 六輝 大安や仏滅などの暦の吉凶のことです。六曜ともいいます。日取りの人気に影響するため、プランを作成する際の区分に用いられます。
  • メディアミックス 複数の媒体を組み合わせて宣伝広告を行うことです。ひとつの媒体に依存せず、それぞれの特性を活かして集客する考え方を指します。

出典一覧

  • IWPA「ウエディングプランナー資格2級公式テキスト」第6版(2018年4月1日発行)
  • IWPA「ウエディングプランナー資格1級テキスト」第4版(2017年10月1日発行)
  • IWPA「THE BIBLE OF WEDDING」第14版(2017年8月1日発行)
  • 公益社団法人日本ブライダル文化振興協会「ブライダルコーディネーターテキスト スタンダード」第6版(ISBN 978-4-9910055-1-0)
  • 公益社団法人日本ブライダル文化振興協会「ブライダルコーディネーターテキスト エキスパート」第4版(ISBN 978-4-9910055-3-4)

※本記事に掲載した見積のサンプル、パターン1とパターン2の比較、1名追加料金の内訳、ブレイクダウンの表は、いずれも計算の考え方を示すために作成した例示です。特定の会場の実績値ではありません。

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