新規接客は「RPG」!

今回のブログは、新規接客に携わる業務委託ウエディングプランナーに向けて書いています。
「ロープレ研修」を受けたことはありますか。先輩がお客様役をやり、自分がプランナー役をやる。あの「ロープレ」です。
ロープレとは「ロールプレイング」の略。役割を演じるという意味です。
この言葉、ゲームの世界でも使われています。ドラクエやファイナルファンタジーのジャンル名「RPG(ロールプレイングゲーム)」。こちらも「役割を演じるゲーム」という意味です。
接客ロープレも、RPGも、根っこは同じ。「役割を演じる」ということ。
そしてRPGの起源をたどっていくと、接客という仕事の本質が見えてきます。
少し遠回りに感じるかもしれません。でも最後まで読んでいただければ、明日からの接客が変わるはずです。
Index
すべては一冊の小説から
RPGの歴史をたどると、一冊の小説に行き着きます。
1954年、イギリスの作家J.R.R.トールキンが『指輪物語』を発表しました。映画『ロード・オブ・ザ・リング』の原作です。
トールキンはオックスフォード大学で古英語や北欧神話を研究する言語学の教授でした。彼はまず「エルフ語」という架空の言語を作りました。文法も語彙も、言語がどう変化してきたかという歴史も、すべて本気で設計しました。
そして次に、「この言語を話す存在は、どんな世界に住んでいるのだろう」と考えました。こうして「中つ国」という架空の世界が生まれ、その世界を舞台にした物語として『指輪物語』が書かれました。
言語学者が本気で作った世界なので、設定の緻密さが桁違いです。数千年の歴史、複数の種族の文化、地理、風習。すべてが丁寧に設定されています。この緻密さが、後にゲームの世界観として「使える」レベルの土台になりました。
物語のあらすじ
中つ国には様々な種族が暮らしています。
| 種族 | 特徴 |
|---|---|
| ホビット | 身長1m程度の小柄な種族。争いを好まず、穏やかな暮らしを愛する |
| エルフ | 不老の種族。知恵と美しさに優れ、自然と調和して生きる |
| ドワーフ | 頑健な体を持つ職人の種族。鍛冶と採掘を得意とする |
| 人間 | 寿命は短いが、数が多く、可能性を秘めている |
| 魔法使い | 神々から遣わされた存在。世界を導く役目を持つ |
かつて、冥王サウロンという悪の存在が「一つの指輪」を作りました。この指輪は持つ者に強大な力を与えます。しかし同時に、持つ者の心を少しずつ蝕み、最終的には悪に染めてしまいます。
サウロンは一度滅ぼされました。しかし指輪が破壊されなかったため、完全には消えませんでした。指輪さえ残っていれば、いつか復活できるからです。
この指輪は長い年月をかけて持ち主を変え、最終的にホビットの若者フロド・バギンズの手に渡りました。
指輪を完全に破壊する方法は一つしかありません。敵の本拠地モルドールにある「滅びの山」の火口に投げ込むことです。指輪が作られた場所でなければ、破壊できないのです。
フロドはこの任務を引き受けました。そして8人の仲間と共に、計9人で旅に出ます。この9人は「旅の仲間(フェローシップ)」と呼ばれます。
9人の旅の仲間
旅の仲間には、それぞれ違う力を持ったメンバーが揃っていました。
| 名前 | 種族 | 特徴 |
|---|---|---|
| ガンダルフ | 魔法使い | 数千年を生きる賢者。知恵と魔法で旅を導く |
| アラゴルン | 人間 | 王の血筋を持つ歴戦の剣士 |
| レゴラス | エルフ | 弓の達人。優れた視力と身体能力を持つ |
| ギムリ | ドワーフ | 斧の使い手。頑強な体と深い忠義を持つ |
| ボロミア | 人間 | 大国ゴンドールの将軍の息子。武勇に優れる |
| フロド | ホビット | 指輪を持つ役目を担う。戦いの経験はない |
| サム | ホビット | フロドの庭師で親友。どこまでもフロドを支え続ける |
| メリー | ホビット | フロドの友人。機転が利く |
| ピピン | ホビット | 最年少。好奇心が強いが失敗も多い |
ここで一つ、不思議なことがあります。
ガンダルフは強力な魔法を使えます。アラゴルンは歴戦の剣士です。レゴラスは弓の達人、ギムリは斧の使い手。この4人がいれば、どんな敵が来ても対応できます。
しかしホビットが4人もいます。彼らは戦えません。体も小さく、足も遅い。戦力として考えれば、明らかに非効率です。なぜこんな構成になったのでしょうか。
強い者ほど誘惑される
理由は、指輪の性質にあります。
指輪は持つ者に力を与えます。しかしその力は、持つ者の心を蝕みます。そして重要なのは、「強い者ほど強く誘惑される」という性質です。
力がある者は、「この力を使えばもっと良いことができる」と考えてしまいます。ガンダルフほどの賢者でも、「私が持てば、善のために使えるかもしれない。しかしそう思った瞬間に、私は堕落への道を歩み始める」と言って、指輪を持つことを拒否しました。
アラゴルンも同じです。王の血筋を持つ彼が指輪を使えば、国を救えるかもしれない。しかしその「救いたい」という思いこそが、堕落の入り口になります。
旅の途中、ボロミアは誘惑に負けました。「指輪を使えば祖国を守れる」と考え、フロドから奪おうとしました。彼は悪人ではありません。むしろ祖国を愛する心優しい人でした。しかし「大切なものを守りたい」という思いが強すぎて、彼を誤った方向に導いてしまったのです。
ではなぜホビットのフロドが選ばれたのか。
ホビットは権力に興味がありません。野心もない。穏やかな田舎で、美味しいものを食べて、大切な人と静かに暮らせればそれでいい。だからこそ、「この力を使いたい」という誘惑に最も耐えられる。
戦いでは役に立たないフロドが、指輪を運ぶという任務では最適だったのです。もしアラゴルンが指輪を持っていたら、世界は滅んでいました。
「弱さ」が最大の「強み」になる状況がある。これが指輪物語の核心です。
サムという存在
フロドが最後まで歩き続けられたのは、サムがいたからです。
サムはフロドの庭師でした。特別な力は何もありません。魔法も使えない、剣も弓も得意ではない。ただフロドのそばにいて、支え続けただけです。
旅の終盤、フロドは心身ともに限界を迎えていました。指輪の重さに耐えられず、一歩も動けなくなった。
そのときサムは言いました。
「指輪を持つことは僕にはできません。でも、あなたを持ち上げることはできます」
そしてサムはフロドを背負い、滅びの山を登りました。
最後の最後、フロドは指輪の誘惑に負けました。火口の前で「指輪を捨てられない」と言った。完璧な意志を持った英雄ではなかったのです。
しかし結果的に指輪は火口に落ち、破壊されました。フロドが一人だったら、そこにたどり着くことすらできなかった。サムがいたから、最後まで歩き続けることができた。
「そばにいて、支え続ける」ということの力。これが指輪物語のもう一つの核心です。
弱さを許容するチーム
もう一つ、大切なエピソードがあります。
ピピンは旅の中で何度も失敗しました。好奇心から井戸に石を落とし、敵に存在を気づかれました。禁じられた道具を覗き込み、敵に情報を与えてしまいました。
普通のチームなら「足手まとい」として外されます。しかしフェローシップは彼を見捨てませんでした。失敗しても、責めるのではなく、一緒に対処しました。
その結果、物語の終盤でピピンは決定的な役割を果たします。彼がある行動を取らなければ、援軍は間に合わず、最終決戦で負けていました。
失敗を許容し、見捨てなかったからこそ、その人が後で力を発揮できた。これがフェローシップの本質です。
レゴラス(エルフ)とギムリ(ドワーフ)の関係も印象的です。エルフとドワーフは歴史的に対立していました。かつての争い、文化の違い、相互不信。二人も最初は互いを避けていました。
しかし共に旅をする中で、少しずつ互いを理解するようになります。物語の終盤、二人は「最も信頼する友」になりました。
多様性とは、最初から仲良くすることではありません。違いを認め、時にぶつかり、それでも共に歩むことを選ぶ。そのプロセスそのものが多様性の本質です。
指輪物語が残したもの
この物語は、後の創作に計り知れない影響を与えました。
エルフ、ドワーフ、魔法使い、ドラゴン。今では当たり前のように使われるファンタジーの要素は、その多くがトールキンの創造か、トールキンによって広められたものです。
そして1974年、この世界観を「遊べる」形にした人たちが現れます。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の誕生
アメリカでゲイリー・ガイギャックスとデイヴ・アーンソンという二人が『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』というゲームを作りました。
D&Dはテレビゲームではありません。テーブルを囲んで、紙とペンとサイコロを使って遊びます。「テーブルトークRPG」と呼ばれるジャンルです。
遊び方を説明します。
4〜5人で遊びます。一人が「ゲームマスター」という役割を担います。ゲームマスターは物語の進行役です。世界を描写し、登場人物を動かし、プレイヤーに問いかけます。
残りの人は「プレイヤー」です。それぞれが一人のキャラクターを作り、そのキャラクターとして行動します。
ゲームマスターが言います。
「あなたたちは暗い森の中にいる。遠くで誰かの泣き声が聞こえる。どうする?」
プレイヤーが答えます。
「声のする方に向かう」 「まず周囲を確認してから進む」 「仲間と相談する」
正解はありません。プレイヤーが自分で考え、自分で決めます。その選択によって物語が変わっていきます。
これが「ロールプレイ」の原点です。自分ではなく、キャラクターとして考え、判断し、行動する。
指輪物語からの発展
D&Dは指輪物語から多くの要素を受け継ぎました。
| 指輪物語の要素 | D&Dでの採用 |
|---|---|
| エルフ、ドワーフ、ホビットなどの種族 | プレイヤーが選べる種族として採用(ホビットは著作権の関係で「ハーフリング」に改名) |
| ガンダルフ=知恵、アラゴルン=剣という役割分担 | 「クラス(職業)」として体系化 |
| 9人がそれぞれの強みを活かして旅をする | パーティ(仲間)を組むという考え方 |
| 指輪を滅びの山へ運ぶという明確な目標 | クエスト(任務)という構造 |
D&Dはこれらを受け継いだ上で、指輪物語にはなかった要素を創り出しました。
一つ目は「プレイヤー自身が主人公になる」という仕組みです。
小説は読むものです。読者がフロドの行動を決めることはできません。しかしD&Dでは、プレイヤーが自分でキャラクターを作り、自分で判断し、自分で行動します。物語を「読む」から「参加する」に変えたのです。
二つ目は「経験値とレベルアップ」という仕組みです。
困難を乗り越えると経験値が貯まります。経験値が一定量に達するとレベルが上がり、できることが増え、新しい技を覚えます。この仕組みによって、キャラクターが成長していく実感が生まれました。
三つ目は「サイコロによる不確実性」です。
行動が成功するか失敗するかを、サイコロの目で決めます。どんなに強いキャラクターでも、運が悪ければ失敗する。この不確実性が、ゲームにドキドキ感を与えました。
ドラクエ、FF、ポケモンへ
D&Dは1980年代にコンピュータゲーム化されました。アメリカで『ウルティマ』『ウィザードリィ』といったRPGが登場します。
そして1986年、日本で『ドラゴンクエスト』が発売されました。翌1987年には『ファイナルファンタジー』が続きます。
ドラクエはD&Dのシステムを、日本の家庭用ゲーム機向けに翻訳したものです。
| D&Dの要素 | ドラクエでの表現 |
|---|---|
| クラス(職業) | 戦士、僧侶、魔法使い、武闘家など |
| パーティ編成 | 最大4人の仲間で冒険 |
| 経験値とレベルアップ | 敵を倒して経験値を貯め、レベルが上がる |
| クエスト | 王様から依頼を受け、世界を救う |
D&Dは複数人で遊ぶゲームでした。ゲームマスターがいて、プレイヤー同士で相談しながら進めます。
ドラクエはこれを一人で遊べるように変えました。ゲームマスターの役割はコンピュータが担い、物語は開発者が事前に用意しました。「一人で」「手軽に」RPGを体験できるようになりました。
1996年には『ポケモン』が発売されました。ポケモンを仲間にし、育て、一緒に成長していく。「仲間との絆」というRPGの本質が、より親しみやすい形で表現されています。
あなたがポケモンで「このポケモンと一緒に旅をしたい」と思ったり、ドラクエで「仲間を増やそう」と考えた経験があるなら、すでにRPGの思考法を体験しています。
ここからが本題です
RPGの歴史を辿ってきました。指輪物語が世界観を創り、D&Dがゲームシステムを創り、ドラクエやポケモンが日本に広めた。
この流れの中で、一つの本質が受け継がれてきました。
「役割を担い、仲間と共に、困難を乗り越える」
これはゲームの中だけの話ではありません。あなたが毎日やっている「接客」そのものが、同じ構造を持っています。
そう、新規接客は、RPGそのものなのです。
接客はRPGと同じ構造を持っている
お客様が来館されます。会場を見学し、説明を聞き、見積もりを見て、ここで結婚式を挙げるかどうかを判断します。
この流れは、RPGの「クエスト」と同じ構造を持っています。
| RPGの構造 | 新規接客 |
|---|---|
| クエストを受ける | 来館予約が入る |
| 冒険に出発する | 接客を開始する |
| 困難に出会う | お客様の不安や迷いに向き合う |
| 大切なものを見つける | お客様の本音や願いを発見する |
| 最後の壁を乗り越える | 成約を阻む最大の障壁を突破する |
| クエストクリア | 成約する |
あなたは「プレイヤー」です。このクエストに挑み、クリア(成約)を目指します。
会社で「ロープレ研修」を受けたことがあるかもしれません。先輩がお客様役をやり、あなたがプランナー役をやる。
これはD&Dと同じ構造です。先輩がゲームマスターとしてシナリオを作り、あなたがプレイヤーとしてキャラクターを演じる。接客ロープレは「RPGの練習」であり、本番の接客は「RPGの本番」です。
自分の「クラス」を知る
D&Dでは、キャラクターを作るときに「クラス(職業)」を選びます。
| クラス | 役割 | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|
| ファイター(戦士) | 前線で仲間を守る | 頑丈で力強い | 魔法が使えない |
| ウィザード(魔法使い) | 知恵と魔法で道を切り開く | 広い範囲に影響を与えられる | 体力が低い |
| クレリック(僧侶) | 仲間を癒し支える | 味方を回復できる | 一人では戦いにくい |
| ローグ(盗賊) | 機転を利かせて活路を見出す | 素早く柔軟に動ける | 正面からの勝負に弱い |
どのクラスが一番優れているか。その問いは意味がありません。それぞれに違う良さがあり、役割が違うから比較できないのです。
大事なのは、自分がどのクラスかを理解し、そのクラスの良さを活かすことです。
プランナーにも「クラス」があります。
| クラス | 特徴 | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|
| 提案型 | 自分から積極的にプランを出す | 迷っているお客様を導ける | 押しが強すぎると引かれる |
| 傾聴型 | お客様の話をじっくり聞く | 本音を引き出せる、信頼を得やすい | 時間がかかる、決断を促すのが苦手 |
| 論理型 | 数字や比較で納得感を作る | 比較検討しているお客様に強い | 感情で動くお客様に響かない |
| 感情型 | 共感と熱意で心を動かす | 一気に心を掴める | 冷静なお客様には逆効果になる |
| クロージング型 | 最後の決断を後押しする | 迷いを断ち切れる | 序盤の関係構築が弱いと機能しない |
フィギュアスケートで考えてみてください。
技術点で勝負する選手と、表現力で魅せる選手がいます。ジャンプが得意な選手に「もっとステップを増やして」と言っても、持ち味が薄れます。表現力が武器の選手に「もっと高難度のジャンプを」と言っても、無理が生じます。
一流のスケーターは、自分の持ち味を理解し、それを最大限に活かす構成を組んでいます。
プランナーも同じです。自分の特性を理解し、その特性を活かした接客スタイルを確立することが、成約への近道です。
会場という「ダンジョン」を知る
特に、業務委託で新規接客をするあなたは、すでにプランナーとしての経験があります。接客の基本は身についている。しかし新しい会場は初めてです。
RPGで言えば、別の地方で経験を積んだプレイヤーが、新しい土地にやってきた状態です。旅の仕方は知っている。でもこの土地の気候や風土、どんな困難が待っているかは、まだわからない。
RPGのプレイヤーは、新しい土地に入る前に情報を集めます。町の人に話を聞き、旅人から噂を聞き、「この先には気をつけた方がいいことがある」と助言をもらいます。
新しい会場でも同じことをする必要があります。
会場には「トラップ(注意点)」と「宝箱(魅力)」があります。
トラップとは、お客様がネガティブに感じやすいポイントです。
| トラップの例 | お客様の反応 |
|---|---|
| 駅から遠い | 「アクセスが不安ですね」と気持ちが下がる |
| 収容人数が少ない | 「入りきらないかも」と選択肢から外れる |
| 建物が古い | 「思っていたのと違う」と興味を失う |
| 他の組と鉢合わせする | 「貸切じゃないんですね」と特別感が薄れる |
トラップを知らずに踏むとダメージを受けます。しかし事前に把握していれば、先回りして対応できます。
「アクセスの面では、駅から少し距離があります。ただ、送迎バスが出ますし、遠方のゲストにはタクシーチケットもお渡しできます。実際、アクセスでお困りになった方はほとんどいらっしゃいません」
弱点を先にお伝えすることで、むしろ信頼を得られます。お客様は「正直に教えてくれた」と感じるからです。
宝箱とは、お客様の心に響くポイント、他会場にない魅力です。
| 宝箱の例 | 効果 |
|---|---|
| 料理が圧倒的に美味しい | 試食で一気に心を掴める |
| ロケーションが唯一無二 | 写真を見せるだけで惹きつけられる |
| 演出の自由度が高い | 「こんなこともできます」と提案の幅が広がる |
| コストパフォーマンスが良い | 予算で迷っているお客様の背中を押せる |
宝箱は見つけただけでは意味がありません。正しいタイミングで開ける必要があります。
たとえば、お客様が照明演出を重視していないのに、延々とその素晴らしさの話をしても響きません。お客様が予算を気にしているのに、高額オプションの話をしても逆効果です。
お客様が何を大切にしているかを見極めて、最適な宝箱を最適なタイミングで開ける。これが攻略の鍵です。
接客の「4つのフェーズ」
RPGの冒険には流れがあります。準備をして、旅を進め、困難を乗り越え、最後の目的地を目指す。いきなりラスボスに挑むプレイヤーはいません。
新規接客も同じ流れを持っています。
| フェーズ | RPGでの対応 | 接客での内容 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 第1フェーズ | 旅の準備 | ヒアリング | お客様を知る |
| 第2フェーズ | 旅を進める | 会場案内 | 会場を体感させる |
| 第3フェーズ | 中盤の山場 | 見積提示 | 条件を整理する |
| 第4フェーズ | クライマックス | クロージング | 成約を決める |
第1フェーズ:ヒアリング
冒険に出る前に、まず情報を集めます。どこへ向かうのか、何が必要か、どんな困難が待っているか。
ヒアリングはこれと同じです。このフェーズの目的は「お客様を理解すること」であり、成約させることではありません。
希望の日程、人数、予算感、こだわりたいポイント、気になっていること、他に見学した会場。これらを聞きながら、お客様がどんな結婚式を望んでいるかを理解していきます。
クラスによってヒアリングの仕方は変わります。提案型は聞きながら頭の中でプランを組み立てます。傾聴型はとにかく深く聞いて、本音を引き出します。論理型は質問を整理して条件を明確にします。感情型はお客様の「想い」に焦点を当てて、ストーリーを引き出します。
第2フェーズ:会場案内
いよいよ旅に出ます。道中で様々なものを見て、体験して、発見していきます。
会場案内はこれと同じです。このフェーズの目的は「体感させること」です。
パンフレットや写真ではわからない、リアルな空間を体験していただきます。五感に訴え、「ここで結婚式をしている自分たち」をイメージしていただきます。
案内の順序は重要です。最初に見せた場所が、全体の印象を決めます。心理学で「初頭効果」と呼ばれる現象です。また最後に見せた場所も記憶に残りやすい。これを「終末効果」と言います。
つまり、最初と最後に「宝箱(会場の魅力)」を配置するのが基本です。注意点(トラップ)は中盤で見せて、その場で解消します。
案内中にお客様から「ちょっと狭いですね」「駅から遠いですよね」といった反応が出ることがあります。これを放置すると不安が積み重なっていくので、その場で丁寧に対応します。
第3フェーズ:見積提示
旅の中盤には、大きな山場があります。これを越えないと先に進めません。
見積提示はこの山場にあたります。お客様はここで初めて「現実」と向き合います。「素敵な会場だな」という気持ちが、「で、いくらなの?」という現実に引き戻されます。
同じ金額でも、伝え方で印象が変わります。総額だけをお伝えすると「高い」という印象しか残りません。内訳をお見せして、どこにいくらかかっているかをご説明すると、納得感が生まれます。「ここは調整できます」とお伝えすれば、金額が「確定」ではなく「ご相談の土台」になります。
第4フェーズ:クロージング
いよいよクライマックスです。ここまでの全フェーズは、この瞬間のためにあります。
お客様を理解し、会場を体感していただき、条件を整理した。準備は整いました。あとは最後の決断を後押しするだけです。
クロージングのタイミングを見極めることが大切です。早すぎるとお客様の準備ができておらず「急かされた」と感じます。遅すぎるとお客様の気持ちが冷めて「また考えます」と言われます。
お客様が「決めてもいい」と思ったサインを見逃さないでください。具体的な質問が増える、お二人で相談し始める、日程の話をし始める。これらのサインが出たらクロージングのタイミングです。
「ラスボス」の正体を見極める
RPGの物語には、最後に立ちはだかる存在=「ラスボス」がいます。これを乗り越えないとクエストはクリアできません。
新規接客における「ラスボス」とは、成約を阻む最大の壁のことを指します。
| ラスボスの種類 | お客様の言葉の例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 競合会場 | 「他にも何件か見て回る予定です」 | 比較検討中 |
| 予算 | 「ちょっと高いですね」 | 金額への不安 |
| 親の意向 | 「親に相談しないと決められなくて」 | 決定権が本人にない |
| パートナーの温度差 | 「彼があまり乗り気じゃなくて」 | 二人の間に差がある |
| 本人の迷い | 「まだピンと来ないんです」 | 漠然とした不安 |
ラスボスはお客様によって異なります。あるお客様にとっては「競合会場」がラスボス、別のお客様にとっては「親の意向」がラスボスです。
ラスボスを見誤ると、乗り越えられません。
競合会場がラスボスなのに価格を下げても解決しません。お客様は「安いから」ではなく「ここがいいから」決めたいのです。
親の意向がラスボスなのにご本人を説得しても決まりません。決定権を持っているのは親御様だからです。この場合は、お客様が親御様にお話しできるように「材料をお渡しする」必要があります。親御様が気にされそうなポイントを聞き、それに対する回答を準備してお渡しするのです。
さらに難しいのは、お客様が本当のラスボスを教えてくださらないことがあることです。
「他も見てから決めます」とおっしゃっていても、本当の理由は「予算が厳しい」かもしれません。「もう少し考えます」とおっしゃっていても、本当は「彼が乗り気じゃない」のかもしれません。
言葉の表面だけを受け取るのではなく、その奥にある本当の壁を見つける。これがプランナーの腕の見せどころです。
経験を「経験値」に変える
RPGでは、冒険を重ねると経験値が貯まり、レベルが上がります。
しかしただ冒険しているだけでは効率が上がりません。同じことを繰り返しても、成長には限界があります。
プランナーも同じです。接客の数をこなせばある程度は上手くなります。しかし、ただ数をこなすだけでは成長に限界があります。
経験を「経験値」に変えるには、振り返りが必要です。
成約よりも、成約に至らなかった接客から学ぶことの方が多いです。成約は「たまたま」の要素があります。お客様との相性が良かった、競合がいなかった、予算がたまたま合った。再現性がありません。
成約に至らなかった接客には原因があります。なぜ決まらなかったかを振り返れば、次に活かせます。
| 問い | 意図 |
|---|---|
| どのフェーズでつまずいたか | ボトルネックを見つける |
| お客様のボスは何だったか | 本当の壁を特定する |
| そのボスに対して自分は何をしたか | 自分の行動を確認する |
| 他に何ができたか | 改善策を考える |
| 次に同じボスが出たらどうするか | 対策を言葉にしておく |
この5つの問いに答えるだけで、1件の案件から得られる経験値が大きく変わります。
もちろん、成約した接客も振り返る価値があります。「なんとなく決まった」では再現できません。「なぜ決まったのか」を言葉にすることで、うまくいくパターンが見えてきます。
「私はこのタイプのお客様と相性がいい」「この会場のこのポイントを推すと響く」「第2フェーズでこの話をすると決まりやすい」。こうしたパターンを積み重ねていくことが、成長につながります。
他のクラスの良さを取り入れる
RPGでは、経験を積むと「マルチクラス」という選択肢が出てきます。戦士でありながら回復もできる。魔法使いでありながら剣も使える。複数の役割をこなせるようになります。
プランナーも同じです。
自分は傾聴型だけれど、クロージングが苦手。クロージング型の先輩を観察して、良いところを取り入れる。自分は論理型だけれど、感情を動かすのが苦手。感情型のプランナーの話し方を学んで、使ってみる。
ただし注意点があります。他のクラスのやり方をそのまま「真似る」と、自分らしさがなくなってしまいます。
感情型のプランナーが無理に論理で詰めても不自然です。論理型のプランナーが無理に熱意を語っても、ぎこちなくなります。
技を「真似る」のではなく「自分なりに消化する」という感覚が大切です。
論理型が感情に訴えるなら、「予算に気持ちを乗せる」方法があります。「ゲストの満足度を考えると、料理は最も大切な項目です。ここに予算をかけると、感謝の気持ちが一番伝わります」。予算とう数値的な項目を使いながら、気持ちに訴えています。
また感情型が論理を使うなら、「気持ちを数字で表現する」方法があります。ここで有効なのが、第三者の声を活用することです。結婚式を挙げた新郎新婦の声、ゲストからの肯定的なフィードバック。これらを数字と共に伝えることで、感情と論理の両方に訴えられます。
たとえば、「この会場で結婚式を挙げられた新郎新婦にアンケートをお願いしているのですが、昨年は98%の新郎新婦が『この会場を選んでよかった』とお答えくださっています。『プランナーさんが最後まで寄り添ってくれた』『ゲストから料理を褒められた』というお声をいただいています」といたような感じをイメージしていただければわかりやすいでしょう。
このように、自分のクラスを土台にしながら、他のクラスの良さを自分なりに取り入れる。これが成長への道です。
「不安」の招待を知る
ここまでは「個人」の話をしてきました。最後に「チーム」の話をします。
新規接客に来るお客様は不安を抱えています。
- 「この会場で大丈夫だろうか」
- 「もっといい会場があるんじゃないか」
- 「失敗したらどうしよう」
結婚式は一生に一度です。やり直しがきかない。だから慎重になる。だから比較する。
そしてお客様は、会場を比較するときに「ハード(設備・条件)」を見ます。
これらは数字や見た目で比較できます。だから比較しやすい。だからお客様はここに目がいきます。
しかしハードで選ばれようとすると消耗戦になります。
たとえば、「駅から近い」で選ばれても、もっと近い会場が出てきたら選ばれなくなります。「安い」で選ばれても、もっと安い会場が出てきたら選ばれなくなります。「広い」で選ばれても、もっと広い会場が出てきたら選ばれなくなります。
ハードで選ばれても、ハードで選ばれなくなるのです。
お客様が本当に願っていること
お客様は「駅から近い会場」が欲しいのではありません。「ガーデンがある会場」が欲しいのでもありません。
「素晴らしい結婚式を挙げたい」
これが本当に願っていることです。
では、素晴らしい結婚式を実現するのは何でしょうか。
設備でしょうか。違います。設備は「箱」に過ぎません。箱がどれだけ立派でも、中身がなければ意味がありません。
素晴らしい結婚式を実現するのは「人」です。
指輪物語に戻ります。フロドが指輪を運べたのはなぜか。
「滅びの山」という目的地があったからではありません。「エルフの短剣」という武器があったからでもありません。「ミスリルの鎧」という防具があったからでもありません。
サムがいたからです。ガンダルフがいたからです。仲間がいたから、フロドは最後まで歩き続けることができました。
結婚式も同じです。
結婚式を支えるフェローシップ
一つの結婚式に、何人のスタッフが関わるか。新規接客の段階では、お客様はあまり意識していません。
ですが、一つの結婚式には実際、数十人の「人」が関わります。
| 役割 | 担うこと |
|---|---|
| プランナー | 全体の設計、お客様との窓口 |
| キャプテン | 当日の進行を統括する |
| サービススタッフ | 配膳、ゲストへのおもてなし |
| シェフ・キッチン | 料理を作り、最高のタイミングで届ける |
| フローリスト | 装花で空間を彩る |
| ヘアメイク | 花嫁の美しさを引き出す |
| 司会 | 進行をアナウンスし、場の空気を作る |
| 音響・照明 | 演出で感動の瞬間を作る |
| 介添え | 新郎新婦のそばでケアする |
| カメラマン | 記録し、思い出を形に残す |
これだけの「仲間」が、お客様の結婚式を成功させるために動きます。
フロドにサムがいたように、お客様にはフェローシップがついています。
フェローシップをお伝えする
このチームの存在を、新規接客の中でお客様にお伝えすることが、成約につながります。
「この会場には、お二人の結婚式を成功させるチームがいます」
具体的にどうお伝えするか。
方法①:ご紹介する
会場案内の中で、スタッフをご紹介します。
「こちらが当日お料理を担当するシェフの○○です。ホテル△△で10年経験を積んでいます」
「今日サービスを担当した○○は、当日も担当させていただく予定です」
名前と顔と経験をお見せします。「この人が私たちの結婚式を担当してくれる」と具体的にイメージしていただけます。
方法②:エピソードをお話しする
過去の結婚式での出来事をお伝えします。
「以前、突発的なアクシデントにより、結婚式の最中に花嫁様のドレスのボタンが取れてしまったことがありました。ですが、介添えの○○がその場で瞬時に縫い直して、誰にも気づかれることなく大満足の結婚式を挙げていただくことができたんです!」
「アレルギー対応が必要なゲストが複数名いらっしゃった結婚式がありました。ですがシェフの〇〇が個別にメニューを組んで、そのすべての方々に『私たちに個別の配慮をしていただいて最高のお料理だった』とご満足いただくことができました!」
などの困難を乗り越えた話、細やかな対応をした話。これが「この会場なら大丈夫」という信頼を生みます。
方法③:連携をお見せする
チームワークが見えるようにお伝えします。
- 「私が打ち合わせで伺ったお二人のご希望は、すべてスタッフ全員で共有しています。当日、どのスタッフに話しかけても、お二人のことを理解しています」
- 「料理を出すタイミング、BGMを切り替えるタイミング、照明を変えるタイミング。すべてキャプテンが統括して、息を合わせて動いています」
一人ひとりではなく「チーム」で動いていることをお伝えします。
お客様の視点を変える
お客様は最初、ハードで比較しようとします。
ハード比較の土俵に乗り、そこで選ばれようとしても消耗戦です。
プランナーの仕事は、お客様の視点を変えることです。
- 「駅から近いか遠いか」ではなく「あなたの結婚式を創るのフェローシップはどんな人たちか」
- 「ガーデンがあるかないか」ではなく「どんな想いで、結婚式を創っているか」
- 「安いか高いか」ではなく「あなたに、何を届けられるのか」
視点が変われば、選び方が変わります。
たとえハードで負けていても、フェローシップで選んでいただけます。ハードで同じでも、フェローシップで差をつけられます。
「箱」を売るのではなく、最高の旅をお供する「仲間」の想いや存在を届ける・伝えること。
「この会場は駅から近いです」ではなく、「この会場には、お二人の結婚式を成功させるチームがいます」とお伝えする。
お客様に「会場選びで大切なのは設備だけじゃないんだ」と気づいていただくこと。
これが、このクエストの本当のミッションです。
おわりに
1954年に指輪物語が生まれました。トールキンが創った緻密な世界観は、後のファンタジー作品すべての土台になりました。
1974年にD&Dが生まれました。指輪物語の世界観を受け継ぎ、「プレイヤーが主人公になる」というゲームシステムを創りました。
1986年にドラクエ、1987年にファイナルファンタジーが生まれ、1996年にポケモンが生まれました。RPGの「仲間と共に成長していく」という本質が、日本中に広まりました。
この流れの中で、一つの本質が受け継がれてきました。
「役割を担い、仲間と共に、困難を乗り越える」
これはゲームの中だけの話ではありません。あなたが毎日やっている「接客」そのものが、この構造を持っています。
プランナーという役割を担う。チームという仲間と共に動く。お客様の結婚式という願いを叶える。
自分の持ち味を知り、会場を理解し、お客様の本当の壁を見つけ、フェローシップの力を届ける。
フロドにはサムがいました。お客様には、あなたがいます。
あなたは、すでにこの物語のプレイヤーです。
お客様に素晴らしい旅をお届けするフェローシップの中心として、ぜひ明日からの接客の参考にしていただければ幸いです。
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