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新規接客に活かす5つのコーチングスキル

はじめに

ウエディングの新規接客では、コーチングの考え方がとても役に立ちます。コーチングとは、相手の中にある気持ちや考えを、相手自身が見つけていけるように支える関わり方のことです。

新郎新婦のおふたりが相談に来られるとき、何を大事にしたいかがまだ自分でもよくわかっていない、ということは少なくありません。それでも、人は誰しも、ちゃんと「そこに来た理由」をもっています。ただ、それがまだ言葉になっていないだけ、ということも多くあります。

だからこそ、まずはその「理由」に耳を傾けることが大事になります。なぜなら、そこに「本音」が隠されているからです。そのために役立つ対話技法が、今回ご紹介するコーチングとなります。問いかけ方や聞き方に意識的に工夫を加えることで、接客の質が大きく向上します。

このブログでは、そうした対話の力を高めるための六つの工夫をご紹介します。どれも難しい技術ではありません!なので意識するだけで、おふたりとの会話がずいぶん変わってくるはずです!

1. 主なコミュニケーションスキル

まずはじめに、コーチングの基本からご紹介します。コーチングの基本には、以下のような5つのスキルがあります。

  • 傾聴
  • ペーシング
  • 承認
  • フィードバック
  • 質問

これらは個別に習得するものというよりも、相互に補い合いながら、相手との関係を築いていくものです。たとえば「質問」も、前提として「傾聴」ができていなければ効果を発揮しません。それぞれを意識しながら、つなげて使うことが重要です。詳しくみてまいりましょう。

2. 傾聴スキルとは

ウエディングの新規接客において、まず土台となるのが「傾聴」の力です。
ここでは、傾聴スキルの基本構造から具体的な聴き方まで、順を追って見ていきます。

傾聴スキルの構造

最初にご紹介するのは「傾聴」です。傾聴とは、相手の存在そのものを受け止めたうえで、その言葉にきちんと耳を傾けることです。単に音として聞き取るのではなく、相手の背景や感情を含めて受けとめる姿勢が求められます。

そうすることで、新郎新婦はプランナーに対して、安心感と信頼感を感じることとなります。

図で表すと上記のようなイメージです。

プランナーが丁寧に傾聴することで、新郎新婦は自分自身の言葉を通じて、自分の内面に少しずつ気づいていくことができます。こうした過程を「オートクライン」と呼びます。

傾聴とは、相手がこの内的対話を深めていけるように、安心して話し続けられる状態をつくることでもあります。

聞く・聴く・訊く

傾聴を考えるうえでは、「聞く」「聴く」「訊く」の違いも意識してみると、接し方がさらに繊細になります。

  • 「聞く」…言葉や音を受動的に受けとめる
  • 「聴く」…見えないもの・言葉になっていないものに、五感を使って耳を傾ける
  • 「訊く」…相手に興味や関心を持ち、知りたいことを尋ねる

これらを意識的に使い分けられるようになると、相手とのやりとりにも幅と深みが生まれてきます。

具体的な聴き方

傾聴のスキルは、単なる姿勢や気持ちだけでなく、具体的な行動として現れるものです。
相手が話しやすくなるような聞き方を意識することが、やりとりの質を大きく左右します。

よい聴き手の条件

傾聴の姿勢を体現している人には、いくつか共通した特徴があります。以下に挙げる内容は、そのまま良い聴き手の条件として参考になります。

  • 話しやすい環境をつくっている
  • 話すよりも聴くことに時間を割いている
  • 相手の話の結論を先取りしていない
  • 先入観に気づくことができる
  • 相手が話をしている時、別のことを考えていない
  • 最後まで聴いている
  • タイミングよく、相槌を打っている
  • 相手のノンバーバル(非言語)の情報をキャッチしている
  • 公平な立場で聴いている
  • 沈黙を受け入れている

こうした一つひとつの振る舞いが、相手の言葉を引き出す力になります。表面的な技術よりも、このような基本的なことを丁寧に積み重ねていくことが、接客の信頼につながっていきます。

3. ペーシングスキル

次に取り上げるのはペーシングです。 これは、相手に安心してもらうために、自分の声の調子や話す速さ、姿勢や表情などを相手に合わせていく技術です。

① 第一印象を決定する3つの要素

アメリカの心理学者アルバート・メラビアンは、人が受け取る印象について興味深い実験を行いました。 感情や態度について矛盾したメッセージが発せられたとき、人がどの情報に影響されやすいかを調べたものです。

その結果、印象を決める情報の割合は次のとおりでした。

  • 話の内容などの言語情報:7%
  • 口調や話の速さなどの聴覚情報:38%
  • 見た目や表情などの視覚情報:55%

つまり、言葉そのものよりも、表情や声の調子、態度などの非言語の要素のほうが、相手に与える印象は大きいということです。 ウエディングの接客においても、これは非常に重要な視点です。

② ペーシングとは何か

ペーシングとは、自分の言葉や振る舞いを相手に合わせていくことで、安心感をつくり出す働きかけです。 たとえば、相手がゆっくり話す人なら、こちらもスピードを落として話す。 声が小さめなら、それに合わせて少しトーンを抑える。 このように、相手の呼吸やテンポ、姿勢、言葉遣いなどに注意を向けて合わせていくことで、相手は「自分に合っている」と感じやすくなります。

ペーシングには大きく分けて二つの種類があります。

  • 言語的ペーシング:言葉の使い方、話し方のトーンやスピードを合わせる
  • 非言語的ペーシング:うなずき、表情、姿勢、視線、呼吸などを合わせる

このような調整によって、おふたりが安心して話せる空気をつくることができるようになります。

4. 承認スキル

新規接客では、プランナーが「話を聞く人」になるだけでなく、相手の存在や感情をしっかり受けとめ、それを言葉で返すことも重要になります。その役割を果たすのが承認のスキルです。

① 承認とは

承認とは、おふたりの言葉や表情に表れている思いや変化に気づき、それをタイミングよく伝えることです。結婚式のことを話すのが初めてで、どう話していいか迷っている新郎新婦も少なくありません。

そんなとき、「その想いを大事にされているんですね!」「すごく伝わってきます!」などと返すことで、自然と安心し、少しずつ安心して話していただけるようになっていきます。

承認にはいくつかの種類があります。

  • 存在に対する承認:「おふたりとも今日はありがとうございます」「〇〇さんと〇〇さんでいらっしゃいますね」
  • 気持ちを伝える承認:「それを話してくださって、嬉しいです」「そう思ってくださるの、私もありがたいです」
  • プロセス承認:「さっきよりも、少しずつイメージが見えてきましたね」
  • 結果承認:「今日はたくさん考えが整理できましたね」「ここまで話してくださって、本当にありがとうございました」

こうしたやりとりの一つひとつが、「この人と話してよかった」と感じてもらえる土台となり、おふたりにとって安心できる対話につながっていきます。

② YOU・I・WEメッセージ

承認の言葉は、誰の視点で伝えるかによってニュアンスが変わります。表現を意識することで、より丁寧なやりとりにつながります。

  • YOUメッセージ:おふたりのことをそのまま伝える
     例)「本当にしっかりとした想いをおもちでいらっしゃいますね!」
  • Iメッセージ:おふたりの思いに自分がどう感じたかを伝える
     例)「私は、今のお話を聴いて、とてもあたたかい気持ちになりました!」
  • WEメッセージ:おふたりの思いがこの場全体に与えている影響を伝える
     例)「今のお話、きっと皆さんにも伝わると思います。私もすごくいいお話を聴かせていただいたなと思っています!」

このように言い方を少し変えるだけで、おふたりに「ちゃんと受けとめてもらえた」と伝わりやすくなります。自然に話しながら、その視点を使い分けていけるようになると、対話の深まり方も変わっていくということですね。

5 フィードバックスキル

承認が「相手の存在や努力を肯定する言葉」であるのに対して、フィードバックは「感じたことを返す言葉」です。

プランナーが感じたことを素直に返すことで、おふたり自身が気づいていなかった思いや言葉に目が向くこともあります。

① フィードバックスキルとはなにか

フィードバックとは、相手から感じたことを、その場で丁寧に伝えることです。とくに新郎新婦が不安や迷いを抱えながら話しているとき、言葉の奥にある気持ちや背景をくみ取って返すことで、自分では気づいていなかった思いに目が向くことがあります。

たとえば、新郎がこんなふうに話されたとします。

「親には感謝してるんですけど、あんまりちゃんと伝えたことがなくて……」

ここでのフィードバックは、ただ「そうなんですね」と返すだけでは足りません。たとえば、こんなふうに返すことで、相手の中にある未整理の気持ちを言語化する手助けになります。

「それって、本当は感謝を伝えたいけれど、面と向かうのは少し照れくさい、というお気持ちもあるのかもしれませんね。だからこそ、結婚式がそのタイミングになるかもしれないと、どこかで感じていらっしゃるのかなと思いました」

このような返し方によって、相手の中にあったけれどまだ形になっていなかった気持ちに光が当たり、「たしかに、そういうことかもしれません」といった気づきが生まれることがあります。

フィードバックの基本は以下のとおりです。

  1. 話の内容から感じたことを、そのまま具体的に返す
  2. 相手が言っていない気持ちや背景を丁寧に言葉にする
  3. 上から目線や評価にならないよう、「Iメッセージ」で伝える
    (例)「私は、今のお話を聞いて、おふたりの考えは実は〇〇なのかな?と感じました!」

こうした返し方があると、「ちゃんと聴いてくれている」「自分でも整理できなかったことが見えてきた」と感じてもらいやすくなります。

② ジョハリの窓

人は、自分のことをすべて自分で理解しているわけではありません。人間の自己認識には、「自分が知っている自分」と「他人が見ている自分」との間にズレがあるからです。それを整理したのが「ジョハリの窓」という考え方です。

フィードバックや質問を通じて、おふたりの内面を言葉にするお手伝いをするときに有効となる考え方です。

本来この概念は、マネジメントや組織ビルディングの文脈でよく使われるもので、「自己開示」や「他者からのフィードバック」によって、相互理解と信頼関係を高めることが目的です。

ジョハリの窓は、以下の4つに分かれます。

  1. 自分も他人も知っている自分(開放の窓)
  2. 他人は気づいているが、自分では気づいていない自分(盲点の窓)
  3. 自分だけが知っている自分(秘密の窓)
  4. 誰からもまだ気づかれていない自分(未知の窓)

マネジメントにおいては、部下への適切なフィードバックや相互開示を通じて、開放の窓を広げることが主眼になります。つまり、相対的に盲点の窓を小さくする(=自分の無自覚な行動を認識してもらう)ということでもあります。

③「開放の窓」を広げる

ジョハリの窓の考え方は、結婚式の接客にも応用できます。

たとえば、ヒアリングの中で「親に喜んでほしいとは思ってるんです」と新婦がつぶやいたとします。ここが、プランナーにとって最も重要な分岐点です。

すぐに「やっぱり親には感謝を伝えたいですよね!」
と共感で返すのではなく、「どんなお気持ちからそう思われたのですか?」、「ご家族との関係で、気になることはありますか?」といった問いかけを通じて、内面に丁寧にを迫る姿勢が求められます。

これはフィードバックの一種であり、新郎新婦自身が気づいていなかった想いを引き出す大事なプロセスだからです。

  • 「ちゃんと受け入れてほしい」
  • 「わかってもらいたい」
  • 「この結婚式を通して、わだかまりを解きたい」

といった深い感情が浮かび上がってくるかもしれません。

それらは「盲点の窓」にあたる部分であり、丁寧な傾聴によって「開放の窓」へと変わっていきます。それにより、自分たちが本当に大切にしたい想いや、結婚式の意味そのものが、少しずつ明確になっていくのです。

本来のヒアリングとは、この「内面への問いかけ」に迫ることで、決して「会場選び」だけが主眼ではないということです。

6 質問スキル

またコーチングでは、「質問の仕方」自体が、非常に重要なスキルとなります。ウエディングの新規接客でも、効果的な質問によって、おふたりの気持ちや考えが少しずつ整理されていきます。

① クローズド&オープン・クエスチョン

質問には、主に次の2種類があります。

  • クローズド・クエスチョン(はい・いいえで答えられる質問)
     例)「挙式はあげたいですか?」「披露宴はしたいですか?」
  • オープン・クエスチョン(自由に答えられる質問)
     例)「どんな結婚式がしたいですか?」

ヒアリングの初期の段階では、イエスどりといって、「はい」と答えられる簡単な質問を繰り返すことで、「心の開示」へとつなげていくことが大事です。

その次に、オープンな質問で自由に話してもらい、要所でクローズドな質問に切り替えることで、話の整理が進んでいきます。

② 質問スキルの目的と特徴

質問には、単に情報を集める以上の意味があります。質問されることで、相手は自分の考えを改めて見つめ直すことになります。質問の目的は、相手の中にあるものを引き出すことにあります。

効果的な質問には、以下のような特徴があります。

  • 相手の立場や状況をふまえた問いになっている
  • 答えやすく、答えたくなるような聞き方になっている
  • 話の流れを止めずに、次の深まりを促している

ただし、詰問のように感じないように、オープンとクローズドのバランスをとることが大切です。

おわりに〜コーチングを活かした5つの対話スキル

今回のブログでは、結婚式の新規接客において役立つ6つの対話スキルをご紹介しました。どれも、コーチングの基本にある「相手の中にある想いや考えを、相手自身が見つけていく」ことを支える姿勢に基づいています。

その結婚式場にはじめて来られるおふたりは、自分でも気づいていない想いや、まだ整理されていない気持ちを抱えていることが多くあります。だからこそ、すぐに結論を求めるのではなく、安心して言葉を重ねてもらえるような関わりが大切です。

問いかけ方、聴き方、言葉の返し方を少し工夫するだけでも、対話は大きく変わります。その積み重ねが、おふたり自身が本当に大切にしたい想いに気づくきっかけとなり、またそこで結婚式を挙げたい理由にもつながっていきます。

今回の5つのスキルが、その対話の質を高める一助となれば幸いです。ぜひご参考になさってください!

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