結婚式の実施率の正確性と今後のブライダル

結婚式の実施率に関するデータには、政府統計(経済産業省)と民間調査(リクルートブライダル総研)によるものなどがあります。これらのデータは一見同様の情報を提供しているように見えますが、調査の目的や対象範囲、方法に違いがあるため、単純な比較は適切ではありません。
データを正しく解釈するためには、各調査の背景や目的を理解することが重要です。そこから結婚式の実施率の変動を把握し、ブライダル業界の産業構造の変革や新しいマーケティング戦略の導入について検討する視点が必要です。
Index
1. 調査ごとの目的と対象範囲の違い
調査による「母数」の違い
例えば、経産省においても2つの調査があります。リクルートブライダル総研の調査とも比較してみましょう。

上でわかるように、各調査は「対象範囲」が異なります。すなわち、「母数」が異なるということです。なので、どのような目的と文脈で用いるかによって、「結婚式の実施件数は増えたりも減ったりもする」ということになります。
その点をもう少し詳しくみてまいりましょう。
a.特定サービス産業動態統計調査(経済産業省)
まず上記の調査ですが、母数の対象が「大企業」に限定されるため、結婚式の取扱件数は多い年度でも9万組以下であることがわかります。

b.特定サービス産業実態調査(経済産業省)

次に、上記の調査ですが、母数の対象が「結婚式を主業としている事業所」に限定されるため、約13万組弱と、a.の調査よりは件数は多いですが、レストランやホテルなどが含まれていない可能性があるため、全国的な結婚式の件数を正確に表しているとは言い難いです。
c.結婚総合意識調査(リクルートブライダル総研)
続いて、リクルートブライダル総研の調査をみてみましょう。


「ウエディングイベントの実施状況や実施率」の傾向は正確に把握ができることがわかります。しかしながら、結婚式の実施組数が把握できる資料ではありません。また、以下で分かる通り、集計サンプル数が1,500のため、集計のなかでの傾向を示す「相対データ」であり、「絶対データ」ではないことには留意が必要です。

このように、各調査は異なる目的と対象範囲を持っているため、結果を直接比較することは意味がないということと、各データの特性を理解し、適切に組み合わせて傾向と全体像を推論もまじえ活用することが求められます。
2. 産業構造の変革:フリープランナーの活用と箱貸しモデル
上記の統計等から全体的にわかる傾向としては、「結婚式の実施率も実施件数も低下してきている」ということです。近年の物価上昇などのインフレや、「失われた40年」に向かおうとしている日本経済の現状からして、この傾向はますます加速化していくものと思われます。
また一方で、コロナ禍を経て、結婚式の形態はより多様化してきており、従来の「挙式+披露宴」モデルから、フォトウェディングや家族のみの小規模な結婚式、非結婚式場以外での結婚式など、さまざまなスタイルが増加しています。
ゼクシィ結婚トレンド調査2024においても、その傾向を示す結果が出ています。

このような変化に対応するため、婚礼施設においては今後、「箱貸し」モデルや、フリープランナーとの連携を強化する動きがますます加速化していくものとも思われます。詳しくは、以下の過去記事もご参照ください。
また、バリューマネジメント株式会社の店舗統括部マネジャーである辻陽介さんは、業務委託プランナーとしての経験を経て、同社に入社されました。辻さんのインタビューでは、業務委託としての柔軟な働き方や、婚礼施設からみたフリープランナーとの連携に関しても語られています。
「業務委託の人に対しても、人となりを尊重しているので、その人たちがちゃんと働きやすい環境や場・輝けるステージを私たちは提供できると思っています。それを真剣に考えている企業なので、どんな立場の人であっても楽しんでもらえる要素がたくさんある会社だと思います。」
(出典:プラスワンプランナー 辻陽介さんインタビュー)
結婚式のニーズが多様化する中、婚礼施設も箱と人の面で多様な運営形態をハイブリッドしていくことで、顧客へ提供できる選択肢が広がっていくものと考えられます。
3. コーズリレイテッドマーケティング(CRM)の活用
また、結婚式のニーズがますます多様化していくなか、ブライダル業界においても、社会的価値を創出するマーケティング戦略が求められています。弊社の過去記事「CRMの進化とウエディング業界の展望」でも、結婚式を通じた社会貢献の重要性についても述べています。
「ウエディング業界においても、環境負荷の低減や文化継承、地域経済の活性化といった社会的課題とビジネスの両立が求められています。」
(出典:プラスワンプランナー 「 CRMの進化とウエディング業界の展望」)
ここまで見てきたなかでわかることは、結婚式の形態が変化していくなかで重要なことは、単に実施率を議論するのではなく、「結婚式を通じてどのような社会貢献ができるか」という視点であることがお分かりいただけるかと思います。
- バリューマネジメント社に代表される歴史的建造物の利活用
- ファッション業界のリユースを応用した取り組み
- デジタル技術を活用したパーソナライズドな提案
このように、「結婚式を行うことで、新郎新婦もゲストもともに社会貢献できる」といった要素が、今後の式場運営には欠かせない視点になると思います。そのなかで、多様化するニーズや実施率の低下に対応する現実的な施策として、先にも述べた「箱貸し」や「フリープランナー活用」も、今後より必須になってくるものと思われます。
4. 結論
以上見てきたように、結婚式の実施率を語る際にはまず、調査の違いを正しく理解し、それぞれの対象となる母数や調査の目的を把握することが重要です。そして、市場の変化に適応するための新たな取り組み(フリープランナーの活用・箱貸しモデル・CRM)を積極的に推進することが、持続可能なブライダル業界を築く今後の鍵となります。
今後は、「結婚式を通じた社会的貢献」といった取り組みが、業界全体のテーマとして求められる時代になってくると思います。ぜひご参考になさってください。
- 出典
- 経済産業省:「特定サービス動態統計調査」「特定サービス実態調査」
- リクルートブライダル総研:「結婚意識総合調査2024」「ゼクシィトレンド調査2024」
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