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「二番目の悪者」とブライダル業界

はじめに

絵本『二番目の悪者』(林木林・著、 庄野ナホコ・絵/小さい書房, 2014年)は、本当に問題のある仕組みが変わらない中で、矛盾を指摘する人が悪者にされる構造を描いた作品です。本来、正されるべきは制度や環境のはずなのに、それを指摘したり、新しい流れを作ろうとする人たちが「業界の秩序を乱す存在」として扱われる。

この構造は、ブライダル業界においても見られます。たとえば、「持ち込み」や「箱貸し」という選択肢が、業界の都合によって否定的に扱われ、時にはそれを希望する新郎新婦が「わがままな客」のように見なされることがあります。しかし、本当に問題なのは持ち込みや箱貸しそのものではなく、それらを受け入れない業界のビジネスモデルと、顧客の選択の自由とのバランスではないでしょうか。

持ち込みはなぜ悪者にされるのか?

結婚式において、新郎新婦が自分たちの好きな衣装やカメラマン、装花などを自由に持ち込みたいと考えるのは自然なことです。しかし、多くの式場では「持ち込み禁止」「持ち込み料が発生する」というルールが設けられています。

式場側が持ち込みを制限する理由としては、

  • 品質管理の問題(提携業者で統一することでクオリティを担保)
  • オペレーションの安定性(式場側のルールに則らない業者が入ることで進行が乱れるリスク)
  • チームウェディングの確保(式場のスタッフと外部業者の連携がうまく取れない可能性)

といった、合理的な側面があります。確かに、ウェディングは多くのプロフェッショナルが連携して作るものですから、式場側が持ち込みを敬遠する理由は理解できます。

しかし、一方で考えなければならないのは、

  • その運営のしやすさや品質担保は、新郎新婦の希望や選択の自由よりも優先されるべきなのか?
  • 「持ち込みを前提としない利益構造」は今後も成立するのか?

という視点です。

そもそも、ブライダル業界のビジネスモデルは、会場費だけで利益を上げるのではなく、提携業者とのセット販売によって成り立っています。提携業者を使ってもらうことで式場が収益を確保する構造だからこそ、持ち込みが制限される。しかし、それが新郎新婦の選択肢を狭め、結婚式の実施率の低下につながっている可能性はないでしょうか?

つまり、「持ち込みを制限するのは式場の正当な理由がある」という論点と、「しかし、それを一律に禁止し続けることが業界全体にとって本当に良いのか?」という論点は分けて考える必要があります。

業界の利益を守ることは悪ではない。しかし、その利益構造が顧客の希望を抑圧し、結婚式の実施率低下の一因となっているならば、それは本当に持続可能なのかという問いは、避けて通れないはずです。

箱貸しが忌避される理由

海外では一般的な「箱貸し」 というスタイルが、日本ではまだまだ一般的ではありません。会場だけを貸し、新郎新婦が自由にフリープランナーやケータリングを手配する方式です。しかし、日本の多くの式場は、箱貸しを希望するカップルに対し、

  • 「うちはそういう形では貸し出しません。」
  • 「箱貸しはトラブルの元になる。」

と、受け入れを拒否することが一般的です。

これには、単なる業界の慣習ではなく、

  • オペレーションの担保が難しい(式場としても運営のクオリティを維持する責任がある)
  • ハイクオリティなウェディングを提供するための連携が難しくなる(チームウェディングの意義が崩れる)

といった正当な理由もあります。

しかし、ここでもやはり、

  • その論理は、新郎新婦の希望よりも優先されるべきなのか?
  • 「箱貸しを前提としない業界の利益構造」は、今後も維持できるのか?

という問いが必要です。

現在、業界全体として結婚式の実施率は低下傾向にあり、大手の式場ですら閉館を余儀なくされる時代に入っています。にもかかわらず、これまでのビジネスモデルに固執し、「箱貸しを受け入れることで運営が難しくなる」という理由だけで選択肢を封じてしまうのは、まさに「二番目の悪者」の構造です。

本当に問われるべきなのは、箱貸しを求める人たちではなく、業界の側が「どこまで適応できるのか?」という問題ではないでしょうか。

おわりに

『二番目の悪者』は、本来、正されるべき仕組みを指摘し、新しい価値観を求める人たちが「ルールを乱す存在」として扱われる構造を描いた物語です。

ブライダル業界においても、持ち込みや箱貸しを「一律禁止」とする流れは、業界の側にとっては合理的な選択かもしれません。しかし、それによって顧客の選択肢が奪われ、結果として結婚式を挙げるカップル自体が減っているのだとすれば、それは本当に持続可能な仕組みなのでしょうか。

本当に議論すべきことは、次の2つ
  1. オペレーションや品質を担保することは大事だが、それは顧客の希望よりも優先されるべきものなのか?
  2. 従来の利益構造は、結婚式実施率の低下を招く要因になっていないのか?

ブライダル業界が変化を受け入れるかどうかは、単なる「業界の論理」の問題ではありません。大手式場すら閉館する時代に突入した今、結婚式をどのように持続可能なものにしていくのか。この問題は、もっと真剣に論じられてもいいのではないでしょうか。

「二番目の悪者」を生まないために、本当の問題はどこにあるのか。今こそ、業界全体で考えるべき時ではないでしょうか。

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