ウエディングを「一生の仕事」に!

ブライダル業界では、ウェディングプランナーという職種の離職率の高さが長年の課題です。長時間労働・土日祝出勤の常態化、そして出産を機にしたキャリアの断絶などなど、これらは個人の問題ではなく、業界の構造そのものに起因しています。
弊社は2018年より、フリーランスプランナーを婚礼施設へ業務委託で出向する事業に取り組んできました。雇用契約から業務委託へ転換することで、労働時間の短縮や収入の適正化については一定の手応えを感じています。ただし、出産後に婚礼のお仕事へ戻りにくい問題をはじめ、業界全体として解決が必要な課題は依然として多く残っています。
このブログでは、「プランナーを一生の仕事にできる働きがいの実現」というテーマのもと、弊社がすでに実践していることと、業界全体として取り組むべき構造的な課題の両面をお伝えします。婚礼施設の経営者・人事ご担当の方に、業界を考えるきっかけとして読んでいただければ幸いです。
Index
1. 課題の全体像と優先順位
プランナーが働き続けられない背景にある課題は、大きく4つあると考えています。弊社では、実現しやすいものから順に取り組んできました。
① 報酬の適正化 → ② 長時間労働の抑制 → ③ ステークホルダーへの働きかけ → ④ 出産後も働ける環境づくり
①②については、事業設計や施設との契約の工夫で動かせる余地が大きく、弊社ではすでに実施しています。③④は施設側・新郎新婦・社会全体への働きかけが必要なものや、制度・資金の壁がある問題が混在しており、一社の努力では限界があります。以下、「弊社の取り組み」と「業界の構造的課題」に分けて説明します。
2. 弊社の取り組み
業務委託というモデルの特性を活かし、報酬・労働時間・育児との両立・復帰支援という複数の面で取り組んできた内容をまとめます。
報酬の適正化
業界課題
担当件数・成約率に関わらず報酬が固定され、努力が収入に反映されない
ブライダル業界では、月給制で雇用されているプランナーの場合、担当件数が多くても成約率が高くても報酬は変わらないというケースが多いです。努力が収入に直結しないこの構造が、モチベーションの低下や離職につながっていると感じています。
そこで弊社では、結婚式1組単位で報酬を設定する体系を導入しています。たとえば1組あたり10万円とした場合、月に4組担当すれば40万円になります。月6組を担当しても25万円にしかならない固定給と比べると、担当件数が適正であれば十分な収入になります。婚礼施設と弊社との報酬設計を工夫することで、こうした体系を実現しています。
弊社の取り組み
結婚式1組単位の報酬体系を導入・運用中。1組=10万円の設定により、月4組で40万円となり、固定給では得られない成果連動型の収入が実現できます。
長時間労働の抑制
業界課題
稼働件数に上限がなく、過剰労働が常態化している
業界における長時間労働の根本には、一人のプランナーが抱える担当件数が多いという問題があります。雇用契約下では施設の判断に従うほかなく、プランナー自身が調整できる余地はほとんどありません。
弊社の業務委託モデルでは、プランナー自身が担当件数を調整できます。稼働を増やしたい時期もあれば、育児や体調に合わせてペースを落としたい時期もある。そうした個々の事情に柔軟に対応できることが、雇用契約との大きな違いです。また、1組からの受託を可能にしているため、育児中や復帰直後のプランナーも無理なく婚礼のお仕事を続けられます。
弊社の実績
担当件数をプランナー自身が調整できる仕組みを構築。月1組からの受託を可能にすることで、ライフステージに応じた働き方ができます。
長時間労働の抑制
業界課題
アナログ業務が事務負担を増やし、拘束時間を長くしている
FAXや紙書類によるやりとりなど、アナログな業務フローは業界全体に根強く残っています。これがプランナーの事務負担を押し上げ、実質的な拘束時間を長くする一因となっています。
ただし、近年は顧客管理システムの導入や打ち合わせのオンライン化を進める婚礼施設も増えてきました。こうした施設では、プランナーが在宅のまま対応できる業務が増えており、オンライン対応も進んでいます。弊社では、こうした取り組みを進めている施設との連携を積極的に進めています。
弊社の実績
システム導入・オンライン化に取り組む施設との連携を推進。在宅での業務対応が可能な施設では、プランナーの移動・出社の負担が減らせます。
育児しながら働ける仕事の設計
業界課題
育児中でも式場への出勤が前提となっており、業務を続けにくい
育児中のプランナーがキャリアを続けられない背景には、「式場に出勤することが前提」という業務の組み方の問題があります。担当件数も一律になりがちで、育児の状況に合わせて動きにくい構造です。
弊社では、新規見学前の初期対応(電話・メールなど)を在宅で行える仕事も受託しています。また、育児の状況に合わせて担当件数を変えられることも、業務委託ならではの強みです。報酬が担当数に連動するため、件数を絞っても収入として成り立ちます。
弊社の実績
在宅での初期対応の切り出しと担当件数の柔軟な調整を実施。育児と仕事を両立できる働き方を実現しています。
産後復帰を阻む分業体制の問題
業界課題
一人担当制が前提のため、復帰してもすぐに担当を持てない
育休自体は取れても、その後に婚礼のお仕事へ戻れるかどうかは別の問題です。ブライダル業界では、一人のプランナーが案件を最初から最後まで担当するという働き方が一般的であるため、産後復帰しても「一人でフルに動ける状態」になるまで担当を持たせにくいという構造的な問題があります。分業体制が整っていれば、できる部分から少しずつ担当するという復帰の仕方ができますが、そうした体制を持つ施設はまだ多くありません。
弊社では、業務を切り出して分担しやすくするためのシンプルな作業標準の整備に取り組んでいます。また、業務委託であれば担当件数を育児の状況に合わせて絞ることができるため、段階的に復帰していくことができます。実際に育休後に少ない件数から再スタートし、徐々にペースを上げていったプランナーの事例も多数あり、「分業制と件数の段階的な調整を組み合わせれば続けられる」というロールモデルとして、今後の発信を強化していきたいと考えています。
弊社の取り組み
作業標準の整備による分業体制の構築と、担当件数の段階的な調整を組み合わせた復帰モデルを実践中。復帰事例の働き方の発信を通じて、業界にロールモデルを広げていきます。
休業中のスキル維持と復帰への備え
業界課題
休業中にスキルを維持する手段がなく、復帰への不安が高まりやすい
育休中のプランナーにとって大きな不安のひとつが、「復帰してもやっていけるか」という見通しの見えなさです。業界にロールモデルが少なく、休業中にスキルを維持する手段もほとんどないため、復帰をあきらめてしまうケースがあります。弊社では、休業中に学べるよう、オンライン研修の動画教材を自社で制作しています。これにより、スキルを保ちながら、復帰への心理的なハードルを下げることが可能となっています。
弊社の取り組み
休業中のオンライン研修用動画教材を自社制作中。スキル維持と復帰への心理的ハードルの低減を図っています。
社会的な理解を広げる
業界課題
育児しながら働き続けられるという事例が、業界の外に伝わっていない
育児中のプランナーが仕事を続けられている事例や、そのための仕組みは、業界の外には、あまり知られていません。業界団体や各社が積極的に発信しなければ、「ブライダルは続けられない仕事」というイメージは変わりません。
3. 業界が取り組むべき構造的課題
ただし、弊社のような一事業者の取り組みでは動かせない課題が、業界にはまだたくさん残っています。施設側の協力、社会制度の整備、保育環境の問題など、業界全体・社会全体で議論していく必要がある領域です。
施設側のデジタル化と協力体制
特に、アナログ手段の廃止は、施設側が動かなければ進みません。育児中のプランナーが完全オンラインで担当を続けられる体制をつくるにも、施設・顧客双方の理解とシステムへの投資が前提です。弊社から働きかけはできますが、業界全体がデジタル化を当たり前にしていく方向に変わらなければ、個別の対応には限界があります。
▌ 現状の課題
まだ一部でアナログ手段が残存している。完全DX化やオンライン体制への移行は施設側の合意とシステム投資が前提で、一事業者だけでは動かせない。
▶ 解決の方向性
施設側へのコスト・効率面での働きかけを続けながら、段階的な移行を前提に個別施設ごとの合意を積み重ねていく。
新郎新婦への理解促進
育児中のプランナーが担当することへの顧客理解は、業界全体として取り組むべき課題です。担当が決まる際に育児中である旨と対応方針を丁寧に伝える仕組みが必要ですが、不安を感じるお客様もいらっしゃいます。
この点、代替要員がいること、オンライン対応の満足度がどの程度かを具体的に示せるかどうかが、理解を得られるかどうかの分かれ目になります。この点、オンライン打ち合わせ時にお子様が同席できる可能性を事前に案内するという対応も選択肢のひとつです。ただし、お客様によって受け取り方は異なるため、仕組みとして標準化するには、さらなる工夫が必要です。
▌ 現状の課題
育児中プランナーへの理解度は顧客によって異なる。不安を感じるお客様もいるため、納得を前提とした対応の仕組みをどう標準化するかが課題。
▶ 解決の方向性
担当決定時の説明・同意の流れを整備し、代替要員の確保やオンライン対応の質を可視化することで、顧客の不安を減らしていく。
男性育休の取得促進と制度整備
また男性の育休については、2025年4月に給付の拡充が実施されており、くるみん認定(厚生労働省による子育てサポート企業の認定制度)に基づく税制優遇もあります。認定企業数は増加傾向にあり、制度の基盤は少しずつ整ってきています。
ただし、取得率に応じた助成制度はまだなく、制度としての実効性はまだ十分ではありません。取得率に応じた補助金や、男性育休に積極的な企業への優遇が広がることが、次のステップとして求められます。
▌ 現状の課題
くるみん認定・育休給付拡充など制度の基盤はできつつあるが、取得率に応じた助成がなく、実効性が伴っていない。
▶ 解決の方向性
取得率に応じた補助金や、男性育休取得企業への優遇拡充など、既存の制度をさらに深化させる政策が必要。
フリーランスの産育休保障
フリーランスのプランナーには、産育休中の所得補償がありません。2026年10月に年金保険料免除が1歳まで延長される予定ですが、収入が途絶えるという根本的な問題は解決されていません。フリーランスという働き方を選んだプランナーが出産後も安心して働き続けられるかどうかは、社会がどう制度を整えるかにかかっています。ブライダル業界はフリーランス人口が増えている分野であり、この問題を業界として声に出していく必要があります。
▌ 現状の課題
フリーランスには産育休中の所得補償がなく、出産を機に収入が途絶える。2026年10月に年金保険料免除の延長が予定されているが、根本的な解決ではない。
▶ 解決の方向性
フリーランスを対象とした産育休手当の創設が必要。雇用形態を問わず働き続けられる社会制度の整備が、業界・社会全体の課題となっている。
保育環境の整備と育児給付の拡充
またサービス業で働くプランナーにとって、日・祝に子どもを預けられる場所がないことは切実な問題です。サービス業の企業が複数社で共同設置するのが現実的な方向性ですが、設置費用は約8,000万円にのぼり、国の助成(75%)を活用しても自己負担は約2,000万円です。一社では到底対応できず、業界横断での取り組みと、国による支援の拡充が必要です。
さらに大きな視点から、弊社として提言したいのが育児国債の発行という考え方です。3歳まで子ども一人あたり月10万円を給付するという構想で、対象約200万人で換算すると年間約2.4兆円の規模になります。財政規律との整合性という問題はありますが、少子化対策と働く親への経済的支援を同時に実現できる方向性として、議論のテーブルに乗せていくべきだと考えています。
▌ 現状の課題
日・祝対応の保育施設が不足。複数社での共同設置が現実的だが、自己負担約2,000万円が壁となり、一社での対応は困難。
▶ 解決の方向性
業界横断での保育施設整備と、育児国債等の政策的な給付拡充を通じた、サービス業で働く親への支援の仕組みづくり。
おわりに
上記で見てきたように、プランナーを一生の仕事として働き続けられる環境をつくるには、個社の努力だけでは届かない部分が多くあります。施設側の協力、社会制度の変化、そして顧客意識の変化、これら複数の層が変わっていかなければ、構造的な解決にはなりません。弊社は2018年の創業以来、業務委託というモデルを通じてその一角を担ってきましたが、業界全体が変わらなければまだまだ限界があることも感じています。
同じ課題感をお持ちの婚礼施設の経営者・人事ご担当の方に、それぞれの取り組みを考えるうえでの参考になれば幸いです!一緒に業界をより良い方向に変えていきましょう。
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