進化するブライダルビジネス〜「箱貸し」モデルの可能性!

はじめに
結婚式は、人生におけるとても大切な通過儀礼の一つです。しかし、近年、ブライダル業界は、少子化や晩婚化による市場縮小、人材不足、そしてコロナ禍の影響など、様々な課題に直面しています。
そんな中、注目を集めているのが「箱貸し」という運営形態です。これは、結婚式場などの施設がスペースを貸し出し、プランニングやサービスを外部の事業者に委託するビジネスモデルです。
Index
1. 箱貸しって何?
ここで重要なのは、「箱貸し」には2つの種類があるということです。
- 完全箱貸し: 施設は文字通り「箱」だけを提供し、その他一切のサービスは外部に委託する形態。
- 一部サービス提供型箱貸し: 施設側が一部サービス(例えば、会場運営や料飲、オペレーションなど)を提供し、プランニングやコーディネートなどは外部と連携する形態。
従来の結婚式場は、施設側がプランナーやスタッフを抱え、一貫したサービスを提供するのが一般的でした。
一方、「箱貸し」では、施設側はスペースの提供に特化し、プランニングやサービスは外部のフリーランスプランナーやプロデュース会社に委託したり、あるいは一部を協働して行う形態をとります。
今回は、この「箱貸し」という新しい波が、ブライダル業界にどのような変化をもたらすのか、詳しく解説していきます。
2. 箱貸しのメリット・デメリット
箱貸しには、大きく分けて2つの種類があることを踏まえ、それぞれにおけるメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
2-1. 完全箱貸しのメリット・デメリット
メリット
- 施設側
- 低コスト運営: 人件費や固定費を大幅に削減できるため、収益性を高めやすい。
- 多目的利用: ブライダル以外のイベントやパーティー、会議など、様々な用途に施設を活用できる。
- リスク軽減: プランニングやサービス提供に伴うリスクを外部に委託することで、経営の安定化や効率化を図れる。
- 施設管理に集中: 本来業務である施設管理に集中できる。
- プランナー側
- 自由度の高いプロデュース: 施設の制約を受けずに、独自のアイデアやノウハウを活かした結婚式をプロデュースできる。また全ての工程を自分で管理できるため、自分の裁量で自由にプランニングや運営を行うことができます。
- 達成感: 結婚式を成功させたときの達成感は大きく、プランナーとしてのやりがいを感じることができます。
- スキルアップ: 集客からプロデュースまで幅広い業務に携わることで、様々なスキルを習得し、フリープランナーとして成長することができます。
- 収益源の多様化: 顧客との直接契約により、従来のプランニング料だけでなく、装花や写真、映像などの提携パートナーからの紹介料など、様々な収益源を確保できる可能性があります。
- 「自分らしい結婚式」を追求できる: 型にはまったサービスではなく、自分の得意分野や個性を活かした、オリジナリティ溢れる結婚式をプロデュースできます。
- 指名されるプランナーを目指せる: 顧客に直接選ばれることで、フリープランナーとしての知名度や評価を高め、競争力を強化できます。
- リピーターを獲得しやすくなる: 顧客と直接的な信頼関係を築くことで、リピーターを獲得し、安定した収益基盤を築けます。
- 口コミで広がりやすくなる: 顧客満足度を高めることで、口コミによる評判が広がり、新規顧客獲得に繋がります。
- SNSで発信しやすい: 自分がプロデュースした結婚式をSNSで発信することで、効果的に自己PRを行い、顧客獲得に繋げられます。
- 顧客側
- プランナーの選択肢: 多様な外部プランナーから、自分の希望やスタイルに合ったプランナーを選べる。
- 個性的な結婚式: 既成概念にとらわれず、オリジナリティ溢れる結婚式を実現できる。
- 明瞭な料金体系: 外部プランナーとの直接契約により、料金体系が明確になり、予算管理がしやすくなる。
- 無駄なコスト削減: 必要なサービスだけを選択できるため、無駄なコストを削減できる可能性がある。
- 予算に合わせたプランニング: 外部プランナーに予算を伝え、その範囲内で最適なプランを提案してもらうことができる。
デメリット
- 施設側
- 集客の難しさ: 外部プランナーの集客力に依存するため、安定的な集客が難しい。
- プロデュース品質の維持: 外部のプランナーにプロデュース品質を委ねるため、一貫した品質を維持することが難しい。
- ブランドイメージの低下: 質の低い外部プランナーのプロデュースによって、施設のブランドイメージが損なわれる可能性がある。
- プランナー側
- 集客努力: 自力で集客を行う必要があるため、マーケティングや営業活動に時間と費用を費やす必要がある。
- コミュニケーション不足: 施設の担当者とのコミュニケーション不足や認識のずれが生じると、当日の運営がスムーズに進まない可能性があります。例えば、設営の時間や搬入出のルート、設備の使用方法など、事前にしっかりと確認しておく必要があります。
- ルールへの対応: 自由度が高いプロデュースが可能とはいえ、各施設には、独自のルールや制約がある場合があります。例えば、使用できる装飾や音響、火気の使用に関する制限などです。これらのルールを会場ごとにすべて事前に理解し、プランニングに反映させる負担が生じます。
- 負担の大きさ: プランニングから当日の運営まで、全ての責任を負うことは、大きな負担となる可能性があります。特に、複数の案件を同時進行している場合、時間管理や体力面、精神面での負担が大きくなり、ワークライフバランスを維持することが難しくなる可能性があります。
- トラブル対応: 結婚式当日は、予期せぬトラブルが発生する可能性もあります。箱貸し会場でプロデュースを行うフリープランナーは、そのようなトラブルにも迅速かつ適切に原則全て自分で対応する必要があり、大きなプレッシャーを感じることがあります。
- 幅広い知識・スキル: プランニングから当日の運営まで、全ての工程を担うには、幅広い知識やスキルが求められます。常に最新のトレンドや知識を習得し、スキルアップを図る必要があります。
- 顧客側
- 外部プランナーの質の担保: 外部プランナーの質や経験、実績などを事前にしっかりと見極める必要があります。質の低いプランナーを選んでしまうと、結婚式全体の満足度が低下する可能性があります。
- プロデュース力のばらつき: 外部プランナーによってプロデュースの質に差が生じる可能性がある。
- トラブル対応: 外部プランナーと施設との連携不足によるトラブル発生のリスクがある。
- 外部プランナーの病気や事故: 外部プランナーが病気や事故で結婚式当日まで業務を遂行できなくなった場合、代わりのプランナーを手配できるのか、また、その場合の費用負担はどうなるのか、事前に確認しておく必要があります。
- 外部プランナーとのトラブル: 依頼している外部プランナーとの間で意見の相違やトラブルが発生した場合、解決が難航する可能性があります。施設側が仲介に入らないため、顧客自身で解決する必要が生じるケースもあります。
2-2. 一部サービス提供型箱貸しのメリット・デメリット
メリット
- 施設側
- 厳選されたフリープランナーとの提携:実績のあるフリープランナーと提携し、顧客に紹介することで、顧客のニーズに合ったプランナー選びがサポートできる。
- 柔軟な持ち込み対応:持ち込み料を無料にするなど、顧客の自由度を高めることで、魅力を高めることができる。
- 収益源の多様化: 原則は自前で運営しつつも、一部サービス提供も行うことで、収益の柱が増え、売上利益構造を強化できる。
- 人気フリープランナーの誘致: 柔軟且つ自由な姿勢を宣伝且つ提供することで、優秀なフリープランナーを誘致できる。
- プランナー側
- 業務負担軽減: 施設側が一部サービスを提供してくれるため、プランニングに集中できる。
- サービス品質向上: 完全箱貸しの場合に課題となりやすいサービスやオペレーションに関して、施設側がそのサービスを提供してくれるため、顧客に質の高いサービスを提供できる。
- 顧客満足度向上: 料飲も会場に依頼できるため、顧客満足度を高められる。
- 施設のブランド力: 提携している施設のブランド力や知名度を活用することで、プランナー自身の集客力向上に繋がる可能性があります。
- 会場設営の効率化: 施設側が会場設営の一部を担ってくれることで、ウエディングプランナーは安心感をもって当日の運営に取り組めます。
- 備品利用: 施設が保有する備品(テーブル、椅子、音響設備など)をすべて利用できる。
- 人材確保: 施設側がサービススタッフを提供してくれるため、プランナーは人材確保の手間を省くことができます。
- トラブル対応: 施設側がトラブル対応の一部を担ってくれるため、プランナーはトラブル発生時の負担を軽減できます。
- 責任分担: サービス提供における責任を施設側と分担することで、プランナーのリスクを軽減できます。
- 施設の提携パートナーの活用: 施設がフリーリストやカメラマンなどのパートナーと連携することもできるため、効率のよいプランニングが可能。
- 顧客側
- 施設と外部プランナーの協力: 施設と外部プランナーが相互が協力的に、理想の結婚式実現のために動いてくれる。
- 質の高い料理やサービス: 会場自前のシェフやキッチンスタッフの料飲を提供してもらえるため、ケータリング会社などを探す必要や不安がない。
- 臨機応変な対応: 結婚式当日は、予期せぬ事態が起こることもあります。施設とプランナーが連携し、臨機応変に対応することで、顧客の不安を解消します。
- きめ細やかなサービス: 施設のスタッフが、ゲスト一人ひとりに気を配り、きめ細やかなサービスを提供することで、安心して快適な時間を過ごせる。
- 選択肢の幅: 外部プランナーの選択肢に加え、施設の提携サービスも選べるため、より自分に合った結婚式を実現できる。
デメリット
- 施設側
- コミュニケーションの難しさ: フリープランナーとのコミュニケーション不足や認識のずれが生じ、トラブルに発展する可能性があります。
- フリープランナーの質の担保: すべてのプランナーが質の高いプロデュースを提供できるとは限らないため、顧客満足度を維持するために、フリープランナーの質を管理する必要があります。
- フリープランナーとのトラブル: フリープランナーとの間で、施設の使い方や人間関係に起因するトラブルが発生する可能性があります。
- 責任の所在: サービス提供に伴い、顧客対応の責任範囲が拡大し、トラブル発生時の対応が複雑化する可能性があります。
- 顧客満足度の維持: フリープランナーの質だけでなく、施設側のサービス品質も顧客満足度に影響を与えるため、サービスレベルの維持・向上が求められます。
- 収益管理: サービス提供による収益と、それに伴うコスト増加を適切に管理する必要があります。
- プランナー側
- プロデュースやサービス内容の調整: 施設側が提供するサービスと、プランナーが提供するプロデュースやマンパワーの領域を密に調整する必要がある。
- 連携の必要性: 施設側との連携が完全箱貸し以上に不可欠となり、コミュニケーションや情報共有を密に行う必要がある。
- 施設のルール: 完全箱貸しに比べて、施設が定めるルールや制約を守る度合いが強まる。
- 顧客側
- 施設が提携している業者しか利用できない場合があり、選択肢が制限される可能性があります。
- 施設側が提供するサービスやプランに合わせる必要があり、完全箱貸しに比べて、自由度が低いと感じる場合があります。
- プランニングの自由度が制限され、自分たちの理想通りの結婚式を実現するのが難しい場合があります。
- 施設側のサービス品質が低い場合、いくら外部プランナーの質が高くても、結婚式全体の満足度が低下する可能性があります。
- 施設と外部プランナーとの連携が不足していると、意思疎通がうまくいかず、トラブルが発生する可能性があります。
このように、完全箱貸しと一部サービス提供型箱貸しは、それぞれにメリット・デメリットがあります。施設の規模や立地、経営戦略などを考慮し、最適な形態を選択することが重要です。
3. 箱貸しでブライダル業界はどう変わる?
箱貸しの普及により、ブライダル業界は以下のように変化していくと考えられます。
従来の結婚式場でも、多様なサービスやプランが提供されていますが、「箱貸し」の普及により、その多様性はさらに加速していくでしょう。
- 選べるプランナーの多様化:
- 多様な個性や得意分野を持つ外部プランナーから、自分にぴったりの外部プランナーを選べるようになります。
- 多様な個性や得意分野を持つプランナーが増えることで、これまで以上に きめ細やかなニーズ に対応できるようになります。
- たとえば特定の文化や宗教に精通したプランナー、特定の趣味や嗜好に特化したプランナーなど、 より専門性の高いプランナー から選ぶことも可能になります。
- これにより、従来の結婚式場では対応が難しかった、 よりパーソナルで、唯一無二の結婚式 を実現できるようになります。
- 個性化: 結婚式場が箱貸しニーズに門戸を開くことで、外部プランナーの個性や得意分野を活かした、オリジナリティ溢れる結婚式が増えていくでしょう。
- 地域への貢献: 地域の既存の婚礼施設を「箱貸し」で活用することで、地域活性化含め地域への貢献につながる可能性があります。
4. 結婚式場の三極化
また、箱貸しの普及に伴い、結婚式場は今後、以下のように三極化していく可能性があります。
- 完全箱貸し型: 地方の小規模施設や独立型ゲストハウスなど
- メリット:低コスト運営、多目的利用
- 課題:集客力の確保、地域需要への対応
- ハイブリッド型: 中規模以上の施設や、一定のブランド力を持つ会場など
- メリット:柔軟性と安定性の両立、プロデュースやサービス品質の維持
- 課題:外部プランナーとの連携、オペレーションの統一
- 完全内製型: 高価格帯のラグジュアリー施設や大手の結婚式場など
- メリット:高品質且つ独自のプロデュースやサービス提供、ブランド価値の維持
- 課題:高コスト構造、市場変化への対応
5. 箱貸しと運営委託:競合?共存?
なお箱貸しとは対照的に、ホテルなどがブライダル大手の会社に運営を委託するケースもあります。
運営委託は、施設側がブライダル事業のノウハウや人材を持たない場合に有効な手段ですが、箱貸しのように柔軟性や多様性に欠けるという側面もあります。
箱貸しと運営委託というのは一見、競合関係にあるようにも見えますが、実際には、ターゲット層や提供するサービス内容が異なるため、共存していく可能性が高いとも考えられます。
- 運営委託:
- 効率性と利便性、そしてブランドを重視する顧客に最適です。
- 標準化されたサービスを提供することで、安定した品質と効率的な運営を実現しています。
- 近年では、顧客のニーズに合わせて、柔軟にカスタマイズできるプランやオプションも充実してきています。
- 箱貸し:
- 独自性や多様性を重視する顧客に最適です。
- 施設の制約が少なく、外部プランナーの自由度が高いため、顧客の要望を最大限に反映した、オリジナル性の高い結婚式を創り上げることができます。
- 顧客のメリットとして多様な外部プランナーから、自分のスタイルに合ったプランナーを選ぶことができます。
このようにブライダル業界では、運営委託と箱貸し、それぞれのメリットを活かしながら、競合しつつも共存していくものと考えられます。
6. 箱貸しを成功させるには?
箱貸しという新たなビジネスモデルで成功を収めるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 集客力の強化: 積極的に情報発信を行い、魅力的なプランを打ち出す
- サービス品質の管理: 外部プランナーとの連携を強化し、顧客満足度を高める
- 地域との連携: 地域の観光資源や特産品などを活用し、地域活性化に貢献する
- 「一部サービス提供型箱貸し」への移行: 施設側が一部サービスを提供することで、顧客満足度を高め、差別化を図る
これらのポイントを踏まえ、顧客や外部プランナーにとって魅力的な箱貸し会場を創り上げることが、成功への鍵となるでしょう。
7. 「箱貸し」で変わる 資源配分:人材への投資から「場」への投資へ
従来のブライダル業界は、結婚式の準備・提供のために、多くのプランナーやスタッフを自社で抱える必要がありました。人件費などの固定費が重くのしかかる構造は、いわば「装置産業」的な側面が強いと言えます。しかし、「箱貸し」、特に「一部サービス提供型箱貸し」は、この状況を大きく変え、資源配分の最適化を促す可能性を秘めています。
施設側が、プランニングやコーディネートを外部に委託することで、人材への投資を抑制し、その分のリソースを「場」の価値を高めるための投資に振り分けることができるようになります。具体的には、施設の美観維持や最新設備の導入、顧客満足度向上のためのサービス開発などに投資することで、より魅力的な「箱」を創り上げることが可能になります。
また、「箱貸し」は、人材の流動化を促進し、ブライダル業界全体の活性化にも貢献する可能性があります。
8. まとめ
「箱貸し」は、ブライダル業界の抱える課題を解決する糸口となりうる、革新的なビジネスモデルです。人材不足や固定費の増加といった課題を抱える施設側、自由な発想で結婚式をプロデュースしたいウエディングプランナー(内部・外部問わず)、そして、より個性的な結婚式を求める新郎新婦。
それぞれのニーズを満たす「箱貸し」は、結婚式をさらに多様で豊かなものへと進化させていく可能性を秘めています。
しかし、「箱貸し」が成功するためには、施設側、プランナー側、そして顧客側、それぞれの努力と工夫が欠かせません。施設側は、魅力的な「箱」を創り上げ、効果的に集客し、質の高いサービスを提供することで、顧客満足度を高める必要があります。外部のフリープランナーは、施設との連携を密にし、顧客の要望を的確に捉え、創造性とプロフェッショナルなスキルを駆使して、最高の結婚式をプロデュースする必要があります。
そして顧客は、外部のプランナーとの信頼関係を築き、積極的にコミュニケーションをとることで、自分たちの理想の結婚式を実現する必要があります。
「箱貸し」モデルが今後どのように発展していくのか、それは、ブライダル業界全体の動向と密接に関係しています。少子化や晩婚化、価値観の多様化など、ブライダル業界を取り巻く環境は、常に変化しています。「箱貸し」モデルは、これらの変化に対応し、新たなニーズを捉えることで、ブライダル業界の未来を創造していくことができるでしょう。
テクノロジーの進化、社会構造の変化、そして顧客のニーズの多様化。これらの変化を柔軟に取り込みながら、箱貸しモデルは、ブライダル業界に新たな風を吹き込み、結婚式をより自由で、より個性的な、そして、より感動的なものへと進化させていくと期待されます。
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