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ブライダル業界の人材採用戦略の現状と今後

2024年4月現在、ブライダル大手各社を中心に、
新卒採用数が軒並み過去最高に達したとのニュースがありますね!
大手を中心にコロナ禍前よりも結婚式需要が回復している結婚式場も多く、
一方で業界の再編や倒産する企業なども増えており現状においては明暗が分かれています。
人材の採用という面一つとっても、大手中心に確かに新卒採用は増加していますが、
ブライダル業界を取り巻く環境や今後といった面からはどうでしょうか?

業界を取り巻く環境は経済状況や人口動態などの外的要因が非常に大きく、
今後はますますそうした要因に左右されることが多くなってくるでしょう。
あくまでも「大手の新卒採用数の増加」という面だけでみれば、
「コロナ禍の完全復活」や「明るい業界の未来」などの錯覚に陥りがちですが、
ブライダル業界を取り巻く全体像をみたときはどうなのか?
そうした面から今回は、ブライダル業界における人材採用の現状と今後を考察していきたいと思います!

ブライダル産業を取り巻く環境

・出生数および婚姻件数と少子高齢化率

下記の調査によれば(https://x.gd/FK4GQ)
日本における年間の出生数と婚姻件数は年々減少していることがわかります。
出生数が低下すれば婚姻件数が減少するのは当然のことで、
婚姻件数が減少すれば結婚式を行う人も当然少なくなってきます。
この傾向が年々強まっているということをまずは全体としてとらえる必要があります。


・少子高齢化の推移

一方、労働人口という面ではどうでしょうか?

出典:総務省平成出典:
総務省平成2828年度版情報通信白書年度版情報通信白書
「図表図表11–11–11–11我が国の人口の推移」我が国の人口の推移」

上記の表から分かる通り、出生数の低下を受け2060年にかけて
日本の人口は現在の1億2,000万人台から8,600万人にまで減少する見込みで、
そのうちの高齢化率は実に40%にまで達する見込みとなります。
ブライダル業界全体の見通しとしては、決して明るいものではないことは
上記表からも一目瞭然かとは思います。

・ブライダル大手各社の新卒者採用数

一方で冒頭にも触れましたが、2024年現在の大手各社の新卒採用数は、
過去最高に達した会社も多いとの報道もあります。

この数字だけみると、
2024年現在においては、それだけ結婚式需要が増えている・復活していることが読みとれます。

・結婚式需要が復活している
→売上利益も増えている
→人手が必要なので新卒採用数も過去最高に達している

ブライダルを取り巻く環境が明るいとはいえない一方で、
足元ではこのような状況があるのも事実なんですね。

・新卒者の3年以内離職率 

ではもう一方で、新卒者の離職率という面ではどうでしょうか?

上記の表を見ていただくとわかるとおり、
意気揚々と入社した会社で新卒者が離職する率も
決して低いとは言えない事実も読み取れるかと思います。
新卒者全体の平均で見ると、32.3%が実に3年以内に離職しているということです。

・産業別の新卒者離職率

また産業別にその内訳を見てみると、
ブライダル業界の属する生活関連サービス業、
娯楽業の離職率は実に上位2位と著しく高いこともわかります。

(*ウエディングプランナーは生活関連サービス・娯楽業に属します「統計局」)

以下表のように別のデータからも同じ結果が得られることから、
ブライダルにおける離職率の高さというのは大きな課題の一つであることは間違いないといえます。

 (厚労省2023年10月報道発表資料より)

ここからわかることは、
いくら過去最高の新卒採用数があったとしても
この離職率の改善がされない限りは採用数を増やしても
常に採用に課題が残るということでもあります。

・男女別の離職理由 

では新卒者が3年以内に離職する理由はいったい何なのでしょうか?
同じく厚労省の調査によると、男女別で以下のような理由があることがわかります。

男女別で違いはありますが、

  • ・職場の人間関係が好ましくなかった
  • ・給料等収入が少なかった
  • ・労働時間・休日等の労働条件が悪かった

上記がおおかた共通している離職率の理由ということがわかります。
また女性は25歳以上になると結婚や出産を気に離職する割合が増えていることと、
男性ではこの傾向は少ないことから、
たとえ3年以上勤務した新卒者においても
結婚や出産が退職の理由として避けられない課題として挙がっていることも読みとれます。

・欠員率

また欠員率という面ではどうでしょうか?

欠員率というのは、「未充足求人÷常用労働者数*100%」から求められます。

未充足求人とうのは、
「仕事があるにもかかわらず、その仕事に従事する人がいないため、その補充のために行っている求人」のことを指し、この数値が高いほど人が足りていないということがわかります。

(厚労省資料より抜粋)

上記表からもわかるとおり、
ブライダル業界の属する生活関連サービスの欠員率は全産業と比較しても高いことがわかります。

・充足率

実際、日本の労働環境は全産業的に人手が足りていない状況が下記表からもわかります。

充足率というのは、求人に対してどれだけ採用を達成できたのかを示す指標ですが、
この数値が2024年現在は低下していることから、
ブライダル業界に限らず日本全国において
採用のマッチングが上手くいっていない=人手が足りていない状態が続いていることが読みとれます。

今後のブライダル業界の人材戦略

ここまでみてまとめを行います。

・新卒者の大量採用と離職率

冒頭でも触れた通り、2024年現在においては、
ブライダル大手中心に新卒者の大量採用を達成できている現状があります。
一方でブライダル業界においては離職率の高さが課題となっており、
大量採用しても大量に離職していくという現実が存在します。

また中途採用という面でも、
欠員率が高く、片や充足率が低いという状況が続いていることも考察してきました。
ここからわかることは、中途採用での人手不足は深刻化しているということです。

・ブライダルマーケットの縮小

また人口動態という面でも労働人口が減少し少子高齢化社会が年々進んでいます。
それに伴い婚姻件数も減少し、ブライダルマーケットが縮小傾向にあることもみえてきました。

・需要減少の先にあるもの

そのなかで一方、ブライダル大手は新卒を大量に確保できていることも紹介しました。
しかし3年以内離職率が高いことから中途採用にてその分を補充したいところですが、
先にも述べたように欠員率が高いことと充足率が低いことから
中途採用は非常に難航している現状があります。
そのなかで、フリーランスの業務委託需要をその代替として採用する企業も
増えてきているという現状があります。

・今後どうなるのか?

ただ一方で上にも述べたようにブライダルマーケット全体は今後、
ますます縮小していくことは人口動態上からも明らかな傾向でもあります。
ここから見えることは、
ブライダル需要の低下→採用を増やしても供給過多になる可能性も生じてくるということです。

これは業務委託とてまったく同じことがいえます。

しかしながら万一、婚礼需要がこの先増えれば、
ブライダル企業は人手を補充していく必要があるため
新卒採用を中心とした戦略をとっていくことは続くでしょう。

とはいえブライダルマーケットが縮小していくことは曲げられない事実なので、
それに伴い婚礼需要が減っていくことも論を待たない事実ともいえます。

そうなれば結婚式場の運営は現状のままでは維持できないともいえます。
なぜならば結婚式場は、
「結婚式の準備・提供のための人的リソースを結婚式場が抱える固定費の重い構造」
(「ブライダル産業の構造転換に向けた調査・分析 報告書」
令和4年3月31日 株式会社リクルート Division統括本部
マリッジ&ファミリーメディア・ソリューションDivision ) だからです。
こうした構造のことを「装置産業」などと呼ぶこともあります。
装置産業が成り立つためには、ブライダル需要が減らないことが重要なんですが、
現実の数値予測はそうはならないことを指し示しているんですね。

・ではどうすればいいのか?

そのようななか、今までと同じような装置産業を前提としたビジネスモデルは
事実上成り立たなくなると思います。
片や一方で現状においては人手不足が慢性化している事実もあり、
現状を考えれば人手を大量に確保する必要があり、
将来においては逆にいまのままの人手数では事業を存続していけないという矛盾が
生じているのが2024年現在のブライダルビジネスの現状といえます。

こうしたなか求められる人材戦略としては、結婚式場を運営する企業の戦略展開として、
装置産業を中心としつつ、「箱貸し」ビジネスに緩やかに移行していく
あるいはその両方行っていくという方針転換が求められていくと思います。

ただ箱を持っていることはブライダル企業にとっては強みでもあるため、
箱所有者であるブライダル企業は、新卒含むプランナーの採用戦略として
マルチプランナー化を求めていくことにもなると思います。
一方で業務委託委託プランナーには専門性を求めることで、
所有と運営の分離もスムーズに行いやすくなるのではとも思います。

今後の方針としては、時代の需要に応じた人材ポートフォリオのリバランスが必要で、
もし婚礼需要と労働人口が万一増加すれば
逆のリバランスが求められることになるのだろうと推測します。

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