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フリーランスは増加しているの?

今回は「フリーランスは増加しているのか」を探っていきたいと思います。

フリーランスは増えている!のデータ

上記はランサーズ「フリーランス実態調査2021」からの引用ですが、
これによるとフリーランス人口は2018年から2021年の3年間において
コロナ禍をはさんで実に520万も増加していることがわかります。
フリーランス人口の総数は1,670万というデータとなります。

経済規模も大きいことがデータには示されており、
2015年から2021年にかけて9.2兆円の経済効果を生んでいることがわかります。

フリーランスは減っている!のデータ

一方、内閣府調査委の「政策課題分析シリ-ズ 17 日本のフリーランスについて」によると、
「自営業主(雇人なし)は、長期的に減少傾向にある」とのデータも出ており、
ランサーズの分析とは真逆なことも読み取れます。
同様の分析はworkshipの以下の記事でも行われています。

https://goworkship.com/magazine/freelance-factcheck-1/

また総務省統計局の「労働力調査」においても同様の結果が示されており、
「自営業者」の数は2021年の740万人から
2022年の648万人と確実に減少傾向にあることがわかります。

この差はなんで生まれるの?

ではこの統計差はなぜ生まれるのでしょうか?この原因分析として、
[内閣府経済社会総合研究所「季刊国民経済計算」第 166 号 2020 年]において、
跡見学園女子大学マネジメント学部教授の山澤成康氏は以下の考察をしています。

上記の表はそれぞれの調査手法におけるフリーランスの数の差を表しています。
このバラツキの原因として山脇教授は以下のように述べています。

フリーランスの定義や対象業種を揃えることで、専業のフリーランスの相違は小さくなり、
2017 年時点で 250 万人程度となる(図表 17)。
一方、副業のフリーランス については幅があり、低く見積もれば 50 万人、
多い調 査では 500 万人である。

つまりはまず、フリーランスの定義が調査手法によりバラバラのため差分が出るということです。
なので、これを平準化して調整した場合、以下のようなデータに変化します。

本業としてのフリーランスの数は250万人程度

これを見ると、フリーランスの定義をそろえて各種の調査を調整した場合、
「本業としてのフリーランスの数」はおおよそ一致し、
大体250万人程度になるということです。

副業フリーランスの数がバラバラ

一方で、上記の表にもある通り調整後においても「副業」の数に大きな差分があり、
これが各種調査による差の原因ではないかと解説しています。さらにその根拠として、

シェアリングエコノミーのサービス提供者の多くはフ リーランスであり、
その数を把握することが重要だ。現 状では、さまざまな試算があり
正確な人数を把握するこ とが急務である。
本業としてのフリーランスの人数については、業種を調整すればおおむね推計値は変わらない。

ただ、シェア リングエコノミーのサービス提供者は、
自らを自営業者 として自覚していない可能性がある。
この層を把握する とフリーランスの数が増える可能性がある。
また、実店舗を持つ業者かそうでないのかの区別が公的統計では把 握できない。
副業としてのフリーランスの場合は、調査によってかなり幅がある。
また、「労働力調査」では副業者を把握 していない。
最も詳しい調査である総務省「就業構造基 本調査」でも、業種の区分は粗く、
実店舗の有無など、シェアリングエコノミーに対応した調査をしていく必要 がある。

と述べられており、要約すると、

  • 自らをフリーランスと認識していない可能性がある層がいる=シェアリングエコノミー
  • 副業型フリーランスが公的調査では把握されていないケースがある
  • 実店舗をもっていないフリーランスが数に入れられていない調査がある

との分析がされています。

税務区分(所得)から見るフリーランスの増加

また分析ではほかに重要な視点として、
税務統計からフリーランスが増加しているのかも分析しています。

山脇教授によると、

税務統計からは、申告所得税の納税者として把握する ことができる。
事業所得のうち営業所得に専業のフリー ランスの所得は含まれる。
副業の場合は、雑所得に含ま れる。これらの所得の動きを統計でみると、
2018 年度 までは顕著な増加は示しておらず、
現状ではシェアリン グエコノミー関連のフリーランスの動きは捉えられてい ない。
今後の統計調査の動きに注目する必要がある。

とのことでこれを要約すると、

フリーランスが本業の場合は税務上の区分は「事業所得」となり、
副業の場合は「雑所得」となるが
(厳密には少し異なりますが、ここでは便宜上そのように区分けします)、
2018年までの動きをみるとこのいずれも増加傾向が見られないため、
今後の統計調査をつぶさに見ていく必要があるとのことです。

つまりは税務上分析からは、
少なくとも2018年まではフリーランスの顕著な増加は見られないということです。

結局フリーランスは増えているの?

いままでの分析をまとめると、

  • ランサーズ2021年調査によると、フリーランスは1,670万人いる
  • 2018年は1,151万人なので520万人増加している
  • 一方、公的調査の結果は逆でフリーランスは減少している
  • 原因は、調査手法により「フリーランスの定義」が異なるから
  • なので、「フリーランスの数」がにバラツキがある
  • 調査を平準化して調整すると、本業フリーランスは250万人程度
  • 副業フリーランスを統計に入れるかで差が出ることがわかった
  • 税務区分の分析からは2018年まではフリーランスの増加は把握できない

こんな感じの分析結果が出ます。
では一体、現状分析としては何が正しいのでしょうか?

この答えとしては、調査の時系列の差というのが正確なところかなと思います。
先に挙げた山脇教授の分析
「内閣府調査委の「政策課題分析シリ-ズ 17 日本のフリーランスについて」は
2018年までの調査結果であり、対してランサーズの調査は2021年のものです。

ランサーズによれば、その3年間で520万人のフリーランスの増加があるという結果が出ています。
またランサーズの調査結果には、「副業フリーランス」も入っています。

対して山脇教授の分析でも、
税務分析からも2018年以降の調査統計の分析が必要との見解がありました。
また山脇教授も、
「公的調査では副業フリーランスが統計把握されていない」ことの指摘もしており、
この両方をランサーズ調査は満たすと思います。

なのでこれらを時系列的に客観的に分析していくと、
2018年以降においては「フリーランスが増加傾向にある」というのが、
現状における正確な読み取りかな思います。
また副業フリーランスを加味すると、その主張により説得力が増すのも事実です。

以上の分析をもとに次回は、
フリーランスがなぜ増加しているのか?
増えているのはフリーランスだけなのか?を考察していきたいと思います!

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