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現状のブライダルビジネスの限界と構造転換

はじめに:ブライダル業界の限界が露呈している

弊社の予見通り、2025年において結婚式場の倒産が相次いでいます。東京や九州の事例だけでなく、全国的に同様の動きが広がっています。これは単なる経営不振ではなく、ブライダル業界のビジネスモデルそのものが限界を迎えていることの表れではないでしょうか。

しかし、この現象はブライダル業界に限った話ではありません。他業界でも「旧来型のビジネス」が淘汰され、「新しい価値観」に沿った事業が成長しているケースが増えています。その好例が「農業」です。

日本の農業では、高齢化による離農が進み、2005年には約224万人いた基幹的農業従事者が、2020年には約136万人に減少しました(約39%減)。さらに、農業従事者のうち65歳以上の割合は2020年時点で約70%に達しています(出典:農林水産省)。

一方で、有機農業は成長しています。2009年に約1,300億円だった日本の有機食品市場は、2017年には約1,850億円、2022年には約2,240億円と約72%増加しています(出典:農林水産省)。

この対照的な動きを見れば、ブライダル業界も単に「厳しい時代」だから倒産が増えているのではなく、時代に適応できないビジネスモデルが淘汰されてきているとも言えます。ブライダル業界にも、農業と同じような構造変化が求められているのではないでしょうか。

1. 相次ぐ結婚式場の倒産とその背景

ここ数年、ブライダル業界では破産・民事再生のニュースが続いています

債務超過が続いているなかでも、現在も平然としてブライダルフェアを実施しているなど、経営実態との乖離が見られる企業も存在します。これは、業界の問題を象徴していると言えるでしょう。

倒産の背景には、集客の低迷・固定費の重さ・運営コストの増大など、さまざまな要因があります。しかし、単なる一時的な経営不振ではなく、業界全体のビジネスモデルそのものが崩壊しつつあると考えるべきではないでしょうか。

2. ブライダル業界の旧態依然としたビジネスモデル

いまだに「最初の見積もりは安く見せて、後から金額を上げる」という不透明な手法を続ける企業も多く見られます。この手法が成立していたのは、かつては「結婚式をするのが当たり前」だったからです。しかし、今の若い世代は「合理性」や「透明性」を重視する傾向が強くなっています。

また、式場が自社施設で完結するフルパッケージ型のビジネスモデルも、消費者ニーズとのズレが生じています。それにもかかわらず、多くの式場は「従来型のビジネス」を変えようとせず、結果的に破綻する企業が増えているのが現状です。

3. 有機農業の成長に学ぶ、消費者価値の変化

一方で、農業業界では「有機農業」が成長し続けています。

昔は「手間がかかる」「コストが高い」などの理由で、有機農業は一般的ではありませんでした。しかし、消費者の価値観が変わるにつれ、市場が拡大しています。

「安全」「健康」「環境への配慮」といった新しい価値観に沿ったビジネスが成長している点は、ブライダル業界にも当てはまるのではないでしょうか。

この点は、弊社の過去ブログにも詳しく、今後求められるブライダル業界のビジネスモデルの論考を載せていますので、ぜひご一読ください。

4. ブライダル業界に必要な「構造転換」

今後のブライダル業界は、従来型の「装置産業」型の式場経営から脱却し、新しい価値観に適応したビジネスモデルへの転換が必要です。

筆者注;
装置産業とは、「結婚式の準備・提供のための人的リソースを結婚式場が抱える固定費の重い構造」(株式会社リクルート「ブライダル産業の構造転換に向けた調査・分析 報告書」2022.3.31 )を指します。

例えば、以下のような方向性が考えられます。

  1. 透明性の高い価格設定 → 初期見積もりと最終見積もりの乖離をなくすor透明性を担保する
  2. フレキシブルなサービス提供 → プランナーやベンダーを顧客が自由に選択できる構造にする
  3. 環境や社会貢献に配慮 → CRM型ウエディングの推進
  4. 新しいマーケティング手法 → 旧来の広告型ではなく、共感ベースの発信を強化

5. 「有機農業」的なブライダルの未来

有機農業が市場を拡大してきているように、ブライダル業界も「箱型ビジネス」から「箱貸しビジネス」へと移行していける企業だけが生き残る時代になっていくでしょう。

消費者は「箱の都合」ではなく、「自分たちの価値観」に基づいて選ぶ時代です。その変化に対応できない企業は淘汰されるでしょう。

おわりに:ブライダル業界は「有機農業」になれるか

ここ数年の倒産ラッシュは、「旧来型のビジネスモデル」が限界に来ていることを示しています。

しかし、それは「結婚式自体の需要がなくなる」ということを指すではありません。むしろ、新しい価値観に対応できる企業は、これから成長できる可能性があります。

有機農業が「手間がかかるけど価値のあるもの」として市場を拡大したように、ブライダル業界も「装置産業」から脱却することが求められています。

極端にいえば、「日本の農業をすべて有機農業にする」ぐらいの抜本的な構造転換がいま、ブライダル業界のビジネスモデルの変化としても必要とされているのではないでしょうか。

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