「あなたの色に染まります?」

はじめに
結婚式は、多くの慣習や文化、伝統的な要素が複合的に絡み合ってできています。その中には、長く受け継がれてきた美しい言葉や考え方もあれば、無意識のうちに偏った価値観を含んでいるものもあります。例えば、ウエディングドレスや白無垢にまつわる「あなたの色に染まります」という言葉ですが、皆さんはこの言葉をどのように感じますか?
このフレーズには、一見素敵な響きがありますが、フェミニズム(男女同権主義)やアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)の観点から見ると、今の時代にそぐわないのでは?という見方もあります。今回のブログでは、そのあたりを少し考えてみたいと思います。
「あなたの色に染まる」の背景にあるもの
「あなたの色に染まる」という表現には、暗に「女性が男性に従う」というニュアンスが含まれているとの見方もあります。これは、「結婚=女性が夫の家に入るもの」「結婚後は女性が相手の価値観に合わせるべき」という旧来の価値観を無意識に前提としたものともいえるからです。
同じように、「嫁ぐ」という言葉も、結婚に関するジェンダーバイアスを色濃く反映しています。「嫁」という漢字は「女が家に入る」と書くように、伝統的に「女性が男性の家に入る」ことを前提にしていました。しかし、現代では共働き世帯も増え、結婚後の住まいや役割の在り方も多様化しています。それにもかかわらず、未だに「女性が男性の家に入るのが当たり前」という価値観が根強く残っていることには疑問を持つべきともいえるでしょう。
世界における夫婦の姓の取り扱い
日本では、民法第750条により夫婦同姓が義務付けられており、2023年の統計では約94.5%の夫婦が夫の姓を選択しています。しかし、これは世界的に見ると特異な状況です。多くの国では、夫婦別姓が一般的であり、結婚後も各自が自分の姓を保持することが法律で認められています。
例えば、韓国では法的に別姓が基本とされ、ジェンダー平等の観点から進んだ制度設計がなされています。
欧米諸国では、アメリカ、カナダ、イギリス、フランスなどが柔軟な選択肢を提供しています。女性が旧姓を保持することも一般的です。
アンコンシャスバイアスが結婚式に与える影響
結婚式におけるジェンダーに関するアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)は、他にもさまざまな場面で見られます。例えば、
- バージンロードの解釈 「父親が娘をエスコートし、夫に引き渡す」演出は、欧米の伝統に由来していますが、これは「女性は男性の所有物であり、父親から夫へと受け渡される存在」とする考えが根底にありました。もちろん、現代においてはそのような意味合いも薄れ、「お父さんと一緒に歩きたい」との純粋な想いから、それを選択するひとの方が多いことも事実です。ただ、逆にいうとだからこそ、新郎新婦のすべてがこの「入場方法」を選ぶ必要もなく、二人で一緒に入場したり、母親や友人と歩く選択をすることも、完全に自由であるともいえます。
- 誓いのキスの意味 また誓いのキスも、諸説ある部分ではありますが。かつては「新婦が新郎のものになる」ことを示す儀式的な意味合いから由来していると考える人もいます。もちろん、今ではそうした意味合いも薄れ、純粋に二人の愛を誓うシンボルとして捉えられていますが、逆にいうとそれを誓う方法は無限にあるため、この演出にこだわらなくてもいいという見方もできます。
伝統を尊重しつつ、新しい価値観を採り入れる
繰り返しになりますが、もともとの由来や意味合いが薄れ、「定番」となった演出は多くの新郎新婦に受け入れられ、違和感や疑問なくそれらを選択する人が多いのも事実です。ただ一方で、これらの表現や演出に違和感を持つこと自体は、決して「伝統や文化を否定する」ことではないという観点も重要です。むしろ、結婚式が本当に二人らしさが満載のものとなるように、選択肢を増やし、事業者側も価値観を常にアップデートしていくことが大切ともいえます。
例えば、
- 「白」は「相手に染まる」象徴ではなく、二人で新しい未来を描くための色
- 「バージンロード」は親子の絆を表すものとして、父母どちらとも歩く選択肢を増やす
結婚式に関わる業界人として、こうした視点を持つことは重要です。何気ない言葉や慣習が、無意識のうちにジェンダーバイアスを助長していないか。その問いを持つことが、より多くの人にとって心地よいウエディングを創る第一歩になるからです。
また「当たり前」や「常識」に違和感や疑問を持つことが、ビジネスとしての新たな切り口や出発点にもなります。その意味でも、伝統や文化を踏まえつつ、結婚式の演出や言葉をアップデートし見直すことで、国籍や性別多様性に対応した、多くの人々が共感できる新しい価値を生み出すことにつながると思います。
おわりに
結婚式は、これまでの伝統を引き継ぎつつも、時代に合わせて進化するものといえます。
結婚式にまつわる「当たり前」を見つめ直すことは、私たち業界の責任でもあり、新たなビジネスの切り口にもなります。「あなたの色に染まる」のではなく、「二人で一緒に色を描いていく」──そんな価値観を事業者側がもっと発信していくことで、結婚式が、もっと多くの層に広がる未来を目指していきたいと思います。
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