成約率アップ!「顧客理解」と「好意」

はじめに
唐突ですが極端な話、その会場の知識がまったくなくても、新規接客での成約は可能なのでしょうか?
結論、会場のことをまったく知らなくても、成約につながることはあります。なぜならば、新規で本当に大切なのは、「お二人を知ること」、つまり顧客理解だからです。
とはいえ、「なぜ顧客理解が成約につながるのか」と問われると、明確に説明できる人は少ないかもしれません。よく、新規接客とは、「問題を解決すること」と定義されます。とても正しいです。でも、なぜ「問題を解決すること」が成約につながるのか?というと、その因果関係がぼんやりしていることが多いのではないでしょうか。
そこで今回は、顧客理解が成約とどう関係しているのかを、感覚論に頼らず、もう少し行動科学の視点から整理してみたいと思います。
顧客理解が成約に結びつく理由
顧客理解が成約に直結するのは、以下のような理由があるからと考えられます。
- ①心理的安全性が高まり、本音が引き出せる
「この人は私たちのことをよくわかっている」と感じると、人は安心して話せるようになります。その結果、自分たちが本当に求めていることを言葉にしやすくなります。 - ②好意の原則が働き、「この人にお願いしたい」と思ってもらえる
話しやすさや親しみやすさが伝わることで、自然と信頼が生まれます。 - ③返報性の原理が働き、「ここまでしてくれたから応えたい」という気持ちが芽生える
丁寧に話を聞いてくれたり、想いを汲み取ってくれる姿勢に触れると、
「この人のためにお返ししてあげたい」という感情が生まれます。 - ④希望との“マッチング”が可能になる
顧客理解とは、目の前のお二人の価値観や背景まで把握することなので、
本当にその人に合った提案が可能になります。
このような構造を踏まえると、会場知識があるということと、成約との間に強い相関があるとは言えません。もちろん、会場知識が必要なことは言うまでもありませんが、それよりも大事なことはむしろ、顧客理解がなぜ成約につながるのかというメカニズムを理解することです。成約率の低いプランナーの場合、この構造を理解するだけで、成約率が向上します。
チャルディーニの「説得と影響力の6原則」
では、顧客理解とはそもそも何なのでしょうか?前の節で、「この人にお願いしたい」と思ってもらえる関係性が成約につながると述べました。これこそがまさに、顧客理解ができている状態を指します。そしてその背景には、「好意の原則」というものが存在します。
少し詳しく見ていきましょう。
米国の社会心理学者でロバート・チャルディーニという人がいます。彼は、「説得と影響力の6原則」というものを著したことで有名です。具体的には次の6つとなります。
1. 返報性(Reciprocity)
「何かをしてもらったら、お返しをしたくなる」という心理です。
- 例:手書きのメッセージを添えたり、二人の喜ぶサプライズをしてあげたりと、「ここまでしてくれたなら、こちらも応えたい」という気持ちが働くことをいいます
2. 一貫性(Commitment and Consistency)
人は、自分が一度口にした意見や、取った行動と矛盾しない選択をしたくなるものです。
- 例:「気に入った会場が見つかれば決めたいです」と新郎新婦から引き出せた場合、実際に気に入ったと感じてもらえた場面で「さきほど気に入ったら決めたいとおっしゃっていただきましたが、いかがですか?」と自然に確認を入れることで、「なら決めるべきかもしれない」と考えてもらいやすくなります
3. 社会的証明(Social Proof)
「他の人も選んでいるなら安心」という心理です。
- 例:「ちょうど昨日こちらで結婚式を挙げていただいたお二人も、同じ部分を気に入ってくださり、こちらの会場で挙げていただきました!」と伝えたり、過去の実例写真や口コミを紹介することで、不安を和らげる効果があります
4. 好意(Liking)
「好きな人・好感を持てる人の言うことには耳を傾けやすい」という心理です。
- 例:どのようなテイストや雰囲気が好みかなどだけではなく、なぜそれが好きなのか、どういった想いがあるのかなど人生観や価値観まで踏み込んで理解しようと努めることで、「この人は私たちを本当にわかろうとしている」と感じてもらえます。これにより、好意が生まれ、「この人にお願いしたい」という気持ちにつながります。
5. 権威(Authority)
「信頼できる専門家や実績ある人の言うことを信じやすい」という心理です。
- 例:「グッドウェディングアワード2024年のトップ50に選ばれました!」など、経験や数字をさりげなく伝えることで、信頼感を高めることができます。
6. 希少性(Scarcity)
「手に入りにくいものに価値を感じやすい」という心理です。
- 例:「この日程は非常に人気で、あちらのお客様も検討されています!」といった情報は、焦らせる意図ではなく、“今決める意味”を自然に伝える材料となります。
このように、「説得と影響力の6原則」は新規接客の営業のなかで意識的に採り入れることで、成約の確度を高めていくことができるとても強力なテクニックともなります。
「顧客理解=好きになり好きになってもらうこと」
そのなかでも特に「好意」の原則は、その出発点として非常に重要であり、その他の原則を成立させる土台にもなっています。
実際に顧客から深く信頼され、成果を上げているプランナーには、共通して「好かれている」という特徴があります。これは単なる愛想の良さなどの表面的なものではなく、「この人と話していると安心できる」「ちゃんとわかってくれている」と感じてもらえるような対応力のことです。
この「好意」を引き出すうえで、とくに大切なのは、ペーシング(同調)です。
- 話すスピードや言葉の選び方、テンションの合わせ方などを、自然に寄せていく
- 「自分のことをわかってくれている」と感じてもらうことができる
- 結果として、「心理的安全性」が生まれる
特に大事なことがこの、「心理的安全性」です。心理的安全性が生まれることで、ラポール(信頼関係)形成につながり、「好意」が生まれ、成約へとつながっていくからです。
「心理的安全性(Psychological Safety)」
ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念で、
「対人関係において、自分の考えや気持ちを率直に表現しても、罰せられたり、馬鹿にされたりしないと感じられる状態」を指します。
もともとはチームの学習やパフォーマンス向上の研究から生まれた概念ですが、顧客との関係構築にも深く関わっています。安心して話せる空気があることで、本音や価値観を引き出す土壌が生まれます。
補足ですが、口コミサイト「みんなのウェディング」の分析でも、「スタッフ対応」は満足度に最も大きな影響を与える要素として挙げられており、なかでも好意的な評価を得ているスタッフ、たとえばヘアメイクスタッフが高評価の場合は、その他の部分への不満さえも打ち消すことが多いという統計がでています。
このぐらい、「好かれる」というのは、つまり「好意」の原則は、成約のおいても顧客満足度においても大事になってくるということです。「好意」があるから、その他の5つの原則も活きるし、「好意」があるから成約につながるということです。
「人」が選ばれる状態とは
ここまで、顧客理解や好意の原則が成約にどう関係するかを見てきました。営業においてはよく、「人売り」という言葉を耳にすることがあると思いますが、それはまさに、今まで説明したことが成立している状態のことを指します。
ハードや価格でもなく、「この人にお願いしたい」と思ってもらえる状況というのは、今まで説明したような前提が整っているときに自然と生まれるのではないでしょうか。
- 安心して話ができる空気がある→心理的安全性
- その人自身に魅力や信頼感がある→好意の原則
- 丁寧に向き合ってくれているという感覚がある→好意の原則
- 自分たちに合った提案をしてくれていると感じられる→マッチング
こうした前提が揃っていてはじめて、新規接客は成約につながるということです。
この意味でも、「会場の知識があるかどうか」は、成約においてもっとも重要な要素ではないということです。
まとめると大事なことは、次のポイントです!
新規接客の成約に必要な要素
- 必要条件で、成約において会場知識はとても重要な要素の一つ
- ただし、仮に会場知識が「ゼロ」の場合でも、深い顧客理解があると成約できる
- その理由は、「好意の原則」と「心理的安全性」が働くから
- なので、顧客理解と成約には、強い正の相関関係がある
おわりに
新規接客において、会場知識はとても大事です。自分が売るものはなんなのか?それに対する商品知識が必要なことは言うまでもありません。でも、それを話す、伝えるだけだと、AIのほうがはるかに精度は高いともいえるでしょう。
より重要なことは、目の前のお二人を知るということ、つまり「顧客理解」となります。これが十分にできると、「好意の原則」と「心理的安全性」が生まれ、成約へとつながるということです。会場知識はそれらを生じさせる一つのツールとして位置づけることが大事です。成約に伸び悩むプランナーの方は、このことを意識するだけでも5〜10%は簡単に成約率が上がることと思います。
「人売り」が大事!などとよく言われますが、それはとても曖昧で抽象的な概念です。今回のブログでは、それは何なのか?ということもしっかりとロジカルに定義づけしていますので、ぜひご参考になさってください!
- 参考文献
- ロバート・B・チャルディーニ 著, 社会行動研究会 翻訳(2023)『影響力の武器:人を動かす七つの原理』誠信書房
- エイミー・C・エドモンドソン 著, 野津智子 翻訳(2021)『恐れのない組織:「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』英治出版
- 【みんなのウェディングの口コミデータが語る!結婚式のリアル vol.2】 結婚式場の顧客満足度向上のポイントはスタッフ評価にあり!https://wedding.kufu.co.jp/news/7QIOJ31L
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