身近な集いと祝いを結婚式に昇華する

ここ数年、「結婚式を挙げない」という選択をするカップルが増えてきました。結婚情報誌や婚礼サービス企業の調査でも、入籍だけで済ませる“ナシ婚”層の割合は増加傾向にあり、今後もその傾向は続くと考えられます。
その理由としてよく挙げられるのは、「費用面の負担が大きい」「準備が面倒」といった主に経済的な要因です。もちろん、こうした要因は一定の説得力を持っています。
しかし本当にそれだけでしょうか?
「結婚式を挙げたくない」のではなく、「今ある選択肢の中に、しっくりくる形が見つからない」という声が、実は多いのではないかと感じる場面があります。
今回のブログでは、従来の結婚式の形式が、一部の層には合わなくなっているという視点から、現在の「ナシ婚」増加の背景を考えます。そして、すでに多くの人が選んでいる「集まり」や「食事会」といった営みを、結婚式として昇華する新しい選択肢として提案したいと思います。
音楽と結婚式――「カタチ」の変化
このことを考える点で、比較対象として音楽のリスニング体験の変化がわかりやすいかなと思います。たとえば、かつてCDが売れなくなったとき、「音楽離れが進んでいる」「音楽好きが減った」と言われたことがありました。しかし実際には、サブスクリプションサービスやYouTubeなど、音楽を楽しむ手段が多様化し、むしろ音楽は私たちの生活により身近な存在になっているともいえます。
つまりここで大切な気づきや変化は、“モノ”ではなく“体験”が重視されてきているということではないでしょうか。CDを買わなくなったからといって、音楽の価値が失われたわけではないということです。すなわち、音楽を「聴く」ということに関してのお金のかけ方や関わり方=体験の仕方が変わっただけとも言えると思います。ですがこれは、とても重要な変化とも言えます。
そしてこの構図は、結婚式にもよく似ているようにも思います。
変化する「祝い」のカタチ
結婚式に置き換えて考えてみましょう。あなたの身の回りの人を思い返してください。いわゆる「結婚式」を挙げていない人でも、家族や親しい人と集まり、食事をともにするなどは行っている方が多いのではないでしょうか?
つまりは、「節目を祝うこと」自体に拒否感を持っている人はそれほど多くないのではないかという仮説も成り立つということです。コロナ禍を経てむしろ、大切な人と時間を過ごすことの価値は、より見直されているようにも思います。
それでも「いわゆる従来の結婚式はしない」と判断する人が増えているのは、費用や手間の問題は重要な事実としてある一方、それだけでなないということです。音楽の聴き方がCDからサブスクや配信などに変化したように、「お金のかけ方」や「何に価値を感じるか」が変化し、従来の“結婚式”と呼ばれる形式に違和感を持つ人が増えているということが、お金以外の本質的な理由ではないかとも言えるのではないでしょうか。
さらに、既存の家族婚や少人数婚も、そうしたスタイルの“ミニマル版”にとどまっていることが多く、結局のところ規模の大小に関係なく「既存の結婚式のカタチ」そのものが合わないという声があるのではないかと思います。
節目に何かをするということ
一方で、結婚という人生の節目を「何もせずに済ませたい」と本心から願っている人も、それほど多くないはずです。
たとえば――
- 入籍を機に両家の家族だけで食事会を開いた(≠家族婚)
- 親しい友人と結婚報告を兼ねて飲み会をした
- 二人だけで旅行に出かけて写真を残した
こうした「ささやかな祝いの場」は、実際に多くのカップルが自然に選んでいます。
つまり、「節目なので何かはする」という行為はしているものの、従来の“結婚式”といカタチに違和感がある。それが現代の「ナシ婚」層の本音に近いのではないでしょうか。
「結婚式はやるべき」という前提を見直す
ブライダル業界の多くは、長年にわたり「結婚式は素晴らしいものである」という前提に立ってサービスを展開してきました。それ自体はとても正しいことでもあるし、実際に多くの感動的な瞬間を生んできたのも事実です。
ただ一方で、すべてのカップルにその価値観がフィットするとは限らないという現実も、無視できなくなってきています。
そもそも、「結婚」と「結婚式」は別のものでもあります。これらはセットではないということです。
なので、本当に求められているのは、「やる・やらない」という選択ではなく、「その人たちごとの祝福の形とは何か?」を一緒に考えることです。そうした柔軟な姿勢こそが、これからのブライダルに必要な視点だと感じます。
その意味でも、ささやかな「集い」や「食事会」に、ほんの少しだけ“らしさ”を加えることで、結婚式として昇華させていくという発想も、業界的には必要になっていくと思われます。ここを突き詰めていくマーケティングが、今後のブライダル業界の鍵を握りそうな予感がしています。
結婚式を挙げない人が増えている背景には、費用や手間だけでは語りきれない「文化的なミスマッチ」や「違和感」があります。
でもその一方で、人と集まり、節目を祝うことの価値は、今も確かに残っています。
だからこそ、今ある小さな集まりや祝いの時間を、ほんの少しだけ昇華するという発想が、これからの結婚式のあり方にとって、とても重要なヒントになると感じています。
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