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「流通」と「手数料」

はじめに

ビジネスにおいて、「流通戦略」は、商品やサービスをどのように届けるかを決める重要な要素です。特にブライダル業界のように複数のプレイヤーが関与するビジネスでは、流通チャネルの設計がビジネスモデルに直結します。

しかし、持ち込みの是非自体が、「手数料=中抜き」、「中抜き=悪」といった単純化された議論として、SNSなどで見られることが多くあります。

これらは商取引や流通の本質を理解しないまま語られることが多く、非常に一面的な議論ともいえます。商取引における流通の重要性とその構造をまずは正しく理解し、それらが何のために存在しているのかを考えることが大切です。

そこで本ブログでは、流通チャネルの基本構造を説明しながら、JA(農業協同組合)の事例を参考に、ブライダル業界の手数料の本質を考察したいと思います。

流通チャネルの基本構造

流通チャネルは、商品やサービスが生産者から消費者へ届く過程での「仲介者の数」によって分類されます。これは専門用語で、「チャネルの長さ」と呼びます。

  1. 0段階チャネル(直販チャネル)
    生産者(または提供者)から直接消費者へ商品やサービスを届ける形態です。ブライダル業界での例としては、新郎新婦が衣裳会社や写真会社と直接契約を結び、衣裳やカメラマンを手配するケースが挙げられます。
  2. 1段階チャネル
    仲介者が1つ入る形態です。ブライダル業界では、式場を通じて提携パートナーのアイテム(衣裳、写真、装花など)を新郎新婦が利用する仕組みが一般的です。この場合、式場が重要な仲介者として機能します。
  3. 多段階チャネル
    仲介者が2つ以上入る形態で、一般的には二次卸、三次卸が含まれます。例えば、農業においては、農家からJA(一次卸)を経由し、スーパー(二次卸)を通じて消費者に届く仕組みがこれに該当します。

JAが果たす役割とその重要性

わかりやすく、JA(農業協同組合)を例に出し説明したいと思います。JAは、農家が生産した農産物を効率的に流通させるため、次のような役割を果たしています。

集荷・加工・選別・パッケージング

  • 農産物を一括して扱い、スーパーなどへ供給する準備を整えます

②安定収入のサポート

JAは農家が市場の変動に左右されず、安定した収入を得られるよう以下の方法で支援します。

(1)一括集荷(買い取り方式)

  • 農産物を適正価格で買い取り、農家に収入の安定を提供します

(2)委託販売方式

  • 農産物を市場で販売し、その収益に基づいて農家へ支払いを行います。JAが販売計画を立て、価格変動リスクを軽減します

これらを通じて、JAは農家の収益を安定させると同時に、市場環境の変化にも柔軟に対応しています。

販路の開拓

農家の方が自力では開拓が難しい販売先や販売チャネルを構築し、小規模農家でも大規模な市場(大型スーパーなど)に、生産物を販売できるようにします。

これらのサポートにより、農家は取引先探しや交渉、配送などの手間や負担を省き、農業に専念できるというメリットを享受できます。これが、JAによる「手数料」の根拠となります。

JAがない場合の農家のデメリット

  • 自力での市場開拓が必要
    • 取引先を探し、交渉し、配送するなどの業務が増加します
  • スケールメリットを活かせない
    • 小規模農家では販路が限定されるため、収益性が低下します
  • 品質管理の負担増
    • 加工や選別などを自力で行う必要があり、効率が悪化します

流通手数料の重要性

これらの事例から、「流通」は商取引において不可欠であり、「手数料」はその維持のためのコストであることが分かります。さらに掘り下げて、以下の具体例を挙げてみます。

  • 自動販売機のジュース
    • 流通業者が関わることで、商品の配送などがスムーズに行われ、私たち消費者は手軽にどこでも商品を購入できる利便性を享受できます。
    • また、自販機やネットで買う場合でもそこまで大きく価格が異なることもない理由が、間に流通業者が入っているからです
    • その「流通チャネルの数=チャネルの長さ」によって、多少の価格差は出ますが、例えば、スーパーだと缶コーヒー1本500円で、ネットだと100円ということはありえません
  • ブライダル業界の式場提携パートナー
    • 式場と提携することでスケールメリットを活かし、クオリティを確保しつつ、適正価格で新郎新婦に安定的に商品を提供することが可能になります

ブライダル業界におけるチャネル構造

以上見てきたことを、新郎新婦が結婚式で利用するアイテム(衣裳、写真、装飾など)の流通に置き換えて再度まとめてみます。以下の、チャネル構造の違いがあることがわかります。

1段階チャネル

  • 式場が仲介者となり、新郎新婦は提携パートナーのサービスを利用します
  • 提携パートナーがスケールメリットを活かし、クオリティを確保しつつ適正価格での提供が可能となります

0段階チャネル(持ち込み)

  • 新郎新婦が独自に衣裳会社などと契約し、式場を介さず直接サービスを受ける形態です
  • 自由度が高い一方で、スケールメリットが働きにくく、価格が式場経由と大差ない場合があります

このように、チャネル構造の違いにより、どのように商品やサービスが提供されるかが変わってきます。人の手が多く介される=チャネルの数が増えることにより、それに伴う経費も当然必要になってきます。

まとめ

以上見てきたように、流通における「手数料」は中抜きではなく、商取引を実現するための必要なコストと利益です。「手数料=中抜き=悪」というのは、物事を非常に単純化した危険な議論だともいえます。

さらに、式場経由の場合、提携パートナーは「規模の論理」で原価を抑えることが可能であり、そこに手数料を加えた上で適正な販売価格が設定されています。一方、ダイレクト持ち込みの場合、手数料がかからない代わりに、式場ほどの取引量が見込めないため、結果的に販売価格が式場経由の価格と大きく変わらないこともあります。まずは消費者はこの点を理解することが大切です。

また、問題の本質は手数料そのものではなく、「価格に見合った価値があるのか?提供できているのか?」という点にあります。さらに、「1段階チャネル」が「新郎新婦の自由な選択や結婚式の自由度を阻害しているのかどうか」という点にあります。

このように、流通や手数料の背景を正しく理解することが、「持ち込み」問題などを議論していくうえでも非常に大切なスタート地点になると思います。ぜひご参考になさってください。

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