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ウェディングにおける市場分析の重要性と落とし穴

コラム

ブライダル業界における結婚式の実施率の分析や市場分析等は、
様々な方法がありますが、
その分析手法もそれぞれに前提が異なるため、
その調査に隠された落とし穴を理解した上で分析することが大事です。

目次

現在の結婚式の実施率

 

「リクルートブライダル総研 結婚総合意識調査2019」

 

・「結婚を機としたイベント実施;80.7%」とのデータ

→このうち、

・披露宴/披露パーティ;51.1%
・親族中心の食事会;21.6%
・その他のウェディングパーティ;0.3%
・挙式実施;2.7%
・写真のみ実施;5%
・全くの非実施;19.3%

これとは別途、経済産業省の集計による
「特定サービス産業実態調査 2018年版」というものからも、
年間の「挙式・披露宴の実施件数」を算出することができます。

これによると、
2018年調査の段階で、
年間の「挙式・披露宴の取扱件数」は、およそ13万件であることがわかります。

他方、「厚生労働省 2019年 人口動態統計」によると、
年間の婚姻組数は、約58万6000組との統計が出ています。

 

これを単純に計算すると、

◆挙式および披露宴の実施率
挙式および披露宴の実施件数およそ13万組/年間の婚姻組数およそ59万組=約22%

という結果が出てきます。

先ほどの、「リクルートブライダル総研 結婚総合意識調査2019」によると、
結婚をしたカップルのうち、実に8割近い方が、
「結婚を機としたイベント実施」を行っていることがわかります。

ですが、経済産業省と厚生労働省のデータから結婚式実施率を算出すると、
その実施率は約20%までに落ち込んでしまいます。

これはさすがに、統計上も差がありすぎますよね。

ですが実はこれにはカラクリがあるのです。

まず、経済産業省の
「特定サービス産業実態調査 2018年版」ですが、
実はこれには算出の対象となる根拠が2012年に一度算出されています。

すなわち、2012年の段階で「経済センサス 活動調査」という調査が行われているのですが、
実はこの調査においては、
「国内の結婚式を取り扱っている会社のみが対象」で且つ「売上の50%以上を結婚式が占める会社」が対象となり、
経済産業省より調査を依頼されています。

この段階で調査対象となった事業所が引き続き
その後の「特定サービス産業実態調査」においても対象となり、
その調査対象のみに的をしぼって集計した結果が「特定サービス産業実態調査 2018年版」となるわけです。

なので例えばここからは、以下のようなことが読み取れます。

・ホテルなどは、売上の大半は宿泊や飲食などであることが多いため、対象外
・レストランも、一般宴会や飲食の主業割合が多いため、対象外
・海外挙式はそもそも対象外

ということです。

ナシ婚?

よく業界では、「ナシ婚」という言葉が使われますが、
この根拠となるものがそもそも、
上にあげた「経産省 特定サービス産業実態調査」と「厚労省 人口動態統計」による数字で語られます。

そして、その調査年度がそもそも異なるあるいは古いことが多く、
例えば、「経産省 特定サービス産業実態調査」と「厚労省 人口動態統計」ともに、
2005年版で算出されることなどもわりかし普通に存在します。

一度やってみます。

・「経産省 特定サービス産業実態調査 2005年版」と「厚労省 人口動態統計 2005年版」での算出

「経産省 特定サービス産業実態調査 2005年版」

→当時、挙式および披露宴の実施件数は、約35万組であったことがわかります。

ということは、これを基に算出すると、
・挙式および披露宴の実施件数約35万組/当時の婚姻組数約72万組=約48%

このような結果が算出されます。

ここから読み取ると、
約半数弱が結婚式をしていないということにつながるのだと思います。
つまり、半分が「ナシ婚」という話につながるわけです。

ですがそもそも、
この古いデータを基に現在の市場分析を行うのは非常に危険があるように思います。
理由としては、先述した通り、
2012年の段階で調査対象となる基準が変更していること、
そしてそもそもホテルや海外挙式やレストランなどが対象外であることなどです。

つまりは、調査年度により、その対象がバラバラであるため、
実際の「挙式および披露宴の件数」を表したものではないということです。

ここが、一番初めにあげた
「リクルートブライダル総研 結婚総合意識調査2019」などの調査結果との差として現れます。

よりリアルな数値に基づく分析

もっとも、このブライダル総研の調査とて、
対象の抽出方法やサンプル数の問題で、もっと多くのサンプルをとれば大幅に異なる結果が出ることもあります。

というのも、上に挙げたように、この調査におけるサンプルの抽出方法も、
「ゼクシィ読者」に限定しています。
ゼクシィを購読するということはすなわち、結婚式をそもそも検討していた層ととなります。

その対象範囲への調査のため、もっと対象を拡大すれば結果が大幅に異なる可能性も考えられます。

また、そもそもの調査票回収数自体が、5,305件です。
婚姻組数の59万組で割れば、わずかに0.8%に過ぎません。

ここでの適正サンプル数がいくらであれば信頼に足りるのか、
これはまた別途その分析をしたいとは思いますが、
ここで言えることは、このブライダル総研の調査結果として、
100%それだけで市場動向の判断の是非に使うべき類のものではないということです。

とはいっても、「ゼクシィ購読者のなかのおよそ5,000人への調査」なので、
ある一定の調査信頼性は担保されているとも言えます。

また少なくとも、先ほどの経産省のデータを基にした分析よりかは
幾分現実的な判断ができそうな数字かとは思います。

なので、この調査結果を基に、簡単に業界の現状分析を考察してみることにします。

現状分析

・披露宴/披露パーティ;51.1%
・親族中心の食事会;21.6%
・その他のウェディングパーティ;0.3%
・挙式実施(挙式のみまたは挙式+写真撮影);2.7%
・写真のみ実施;5%
・全くの非実施;19.3%

数字から平淡に読み取れること)

・全体の約80%は何らかの形で「結婚関連イベント」を実施している
・いわゆる「挙式+披露宴」は、全体の約50%と約半数
・続いて、「親族中心の食事会」は、全体の約20%
・規模の大小を問わず、
    食事を伴うイベントは、全体の約70%が行っており、挙式のみの割合より圧倒的に多い

・挙式実施(挙式のみまたは挙式+写真撮影)よりも、写真のみ実施の割合の方が高い

この数字から分析すべきこと)

この数字はあくまでもこの数字でしかなく、
より重要なことはこれらの数字の年度比較になると思います。
年度による誤差を前提とした上で、
3〜10年スパンぐらいで分析したときにどのような変化や傾向が読み取れるか、
それを分析し、今後の推察に活かすことが大事かと思います。

そしてこれらの数字はあくまでも一つの調査における限定的な結果に過ぎないということを認識した上で、
いくつかの調査結果を複合的に考察し、市場分析に活かすことが大事かと思われます。

ただ個人的な見解ではありますが、
上にも挙げたようにこれらの数字はあくまでもひとつの指標に過ぎないことと、
また調査には、調査主体による恣意性が発生すること
(調査対象の絞り込みや調査方法などもそれに該当します)が往々にしてありますので、
弊社では実はあまりこうした分析は重要視しておらず、
「参考程度」に閲覧しているということも付記しておきたいと思います。

より大事なのは、
「今起きていることとその理由を実社会の生きた人脈や嗅覚のなかから読み解いていき、
その先にあるものを洞察していくこと」だと思います。

長くなりましたが、本日は結論として、最後にそれが言いたいだけのコラムでありました。

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